【第25話:チーム『カフェ・ド・ひなた』】
神ヶ崎は、めっちゃ鋭い目つきで俺を睨んでいる。
うっわ、こっわ!
安易なお涙頂戴物語をしやがって、とか思われてるんじゃないだろうか。
もちろんそんなつもりはないんだけど、そもそも神ヶ崎は俺をあまり信用してなさそうだから、誤解されてもおかしくない。
「ねえ秋月。あなた……」
「はい?」
何を突っ込まれるのか、わからなくて身構えた。
「すごくピュアなのね」
「……は?」
神ヶ崎の言葉があまりに予想外すぎて、一瞬理解が追いつかなかった。
ピュアだって? 俺が?
「少し見直したわ」
「そりゃあどうも」
いつも俺に辛辣なクール美女からしたら、思い切り褒められたような気分。
「それが本当の話なのであれば、私も協力しなきゃいけないわね」
いや、やっぱりそんなに褒められてなかった。
この言い方からすると、俺はまだ信用されてない感じだ。
俺って自分でも、真面目で誠実だと思うんだけどな。
そんなに信用ならないヤツに見えるのかなぁ。
──いや。ふと、そういうことじゃない気がした。
俺に信頼がないと言うより、神ヶ崎自身が簡単には人を信じられないんじゃないだろうか。
反対に浜風さんや京乃さんは、すぐに人を信用するタイプだもんな。
「なに? どーしたの秋月っち。あたしの顔になにか付いてる?」
「秋月さん、そんなに見つめられたら恥ずかしいです」
「あ、ごめん」
つい二人の顔を交互に、じっと見てしまっていた。
「秋月っち、いくらあたしが可愛いからってあんまり見つめちゃダメだよ」
ブロンドのハーフ美少女がにまりと笑う。
──いや、それ自分で言うのかよっ!
って心の中でツッコんだものの、あっけらかんと言うもんだから、嫌味っぽくなくて、可愛く聞こえる。
まあこれだけ可愛いんだから、変に『可愛くなんかないよ』って言った方が嫌味っぽいかもな。
「なぁ~んてね。秋月っち。『なに言ってんだよ!』くらいツッコんでくれないと、ちょっと照れちゃうじゃん」
あれ? 顔真っ赤にして照れてる。冗談だったのか?
浜風さんでも、こういうことで照れるなんて意外だ。余計に可愛いく見える。
「照れなくていいんじゃない。浜風さんはホントに可愛いんだから」
「やった! 秋月っちの『可愛い』いただきましたぁ~!」
──あっ。つい生真面目に答えてしまった。
こんなことを女子に言うなんて恥ずかしい。
「むぅ……」
「え?」
京乃さん、どうしたんだろう。頬を膨らませて、なんだか拗ねてるように見える。
気に障るようなことしたかな。
ちょっと気になったけど、つい雑談が盛り上がってどんどん時間が過ぎていくから、父が話を切り上げた。
「みんなお疲れ様。今日はこれで終わりだ。気をつけて帰ってな」
店を閉めて片づけをして、もう7時半だ。確かに女子達を早く帰してあげなきゃ。
でもこれだけは言っておきたい。
「さっきみんなに伝えたように、俺はこのカフェを、母が理想とした『いい店』にしたい。だから来週以降は、そのつもりでがんばるから、みんなもぜひ協力をお願いします」
深々と頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いします」
京乃さんも丁寧に頭を下げた。
「よし、任せたまえっ!」
腰に手を当てて、偉そうに胸を張る浜風さん。巨乳が揺れて目の毒だ。
こうやってふざけて場を明るくしようとしてくれてる……んだよな?
神ヶ崎はどうなんだろう?
「ん……約束した通り協力するから安心して」
俺が一瞬不安に思ったことが伝わったのか。
神ヶ崎が予想外に優しい言葉をかけてくれた。
「ありがとう」
「ど、どういたしまして」
照れたように横を向いた神ヶ崎。
案外照れ屋なのかもしれないな……なんて思ってしまった。
「それとみんなにお願いがある。変に同情されたりするのが嫌だから、俺が母を亡くしたことは、学校では言わないでほしいんだ」
「わかりました」
京乃さんは素直に言ってくれた。
「だいじょーぶいだよ。そもそもガッコでは秋月っちと関わりないフリをするんだから。キミのお母さんの話をすることもないっしょ」
どの口が言ってるのかな?
「教室でうっかり俺を『秋月っち』と呼んだのは誰かな?」
「ああーっ、しまった! それ言わないでっ! あれはマジでごめんて。申し訳なかったデス」
大げさに頭を下げる浜風さん。
それを見て京乃さんも親父も大爆笑。
神ヶ崎までもがクスクスと笑ってる。
一致団結にはまだ遠いけど、なんか今日一日で、チームって感じになってきた気がする。
トップ3美女たちのバイト二日目は怒涛の一日だったが、こうしてようやく幕を閉じた。
ところでSNSに美女達の写真が残っていることに対するリスク管理として、バイトへの行き帰りに、三人とも周りに不審な者がいないか、注意を払うように親父が注意を促した。
それとしばらくの間は、三人一緒にカフェに通うことにした。
「何かちょっとでも気になることがあれば、すぐに連絡してきてよ。雄飛にでも俺にでも」
親父がそう言って俺も一緒に彼女達とLINEを交換した。
学園のみんなの憧れ、TOP3美女全員と連絡先交換をしちゃったよ……って、普通なら凄いことなのだろうけど。
彼女たちの身の安全のためなので、そういう感慨もない。
変なことが起きないに越したことはないから、連絡を取り合うことなどないことを祈るばかりだ。
◆◇◆<TOP3美女side>
「ねえちょっと寄り道していかない?」
カフェ・ド・ひなたを出て、家路に着いたトップ3美女たち。
浜風鈴々は街道沿いのファーストフード店を指差し、雅と涼香を誘った。
「いいですよ」
「いいけどどうしたの?」
「ちょっと作戦会議してから帰ろーよ」
作戦会議ってなに?
そんな表情で顔を見合わせる雅と涼香だった。
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