WALK 1話
プロローグから大分時間が空いてしまいましたが、本編第1話です。
よろしくお願いいたします。
仕事と家事の合間に書くのは大変でした…_| ̄|○
高校生活最後の年。
周りの友人は、受験の準備に勤しんでいた。
俺はと言うと、父親の工場を継ぐために、日々工場で職人の技術を学んでいた。
勿論ちゃんと学校にも通っていたが、世間体を気にする程度の成績と出席日数で、特に学力に力を入れていたわけでもなかった。
勉強が嫌いだったかと言われると、そうでもない。
小さい頃から親父の工場を継ぎたいと決めていた。
グレていたわけでもない。
きっと志が皆と一緒ならば、平々凡々と進学のために、受験の荒波に揉まれていただろう。
昔からそうだったーー
人と違うことがしたくて、たまらなかった。
平凡で突出した所がないから、せめて生き方だけでも違う
と、言うことをアピールしたかったのかもしれない。
純粋に、夢に向かって突っ走っている俺は、人と違う所を突っ走れるんだ。
と、どこかひねくれていたんだと思う。
そんなひねくれた俺にも、青い春と言うものがあり、好きになった子がいた。
隣のクラスのショートカットで、周りより少し背の高い子。
特に目立った存在でもないけれど、笑顔がすごく可愛いかった。
新学期の始まりに、体育祭委員の各クラス代表がファミレスに集まり、話し合いをする機会があった。
役員なんて全然やる気はなかったのだけど、なぜか多数決で選ばれ渋々請け負う事になった。
その話し合いの中に彼女が居た。
はっきり物は言うし、笑い話になれば笑い、違うものは違うと言える。
話し合いの途中で全員の携帯電話の番号と、メールアドレスの交換をした。
『よろしくね』と、話しかけてくれた彼女の笑顔が、たまらなく可愛くて、ニヤけそうになったのを、グッと堪えたのを覚えてる。
その中に居た、いまさらアドレス交換をするまでもない、新田と森川と言う小学校からの腐れ縁2人と帰り道が一緒になった。
『なぁ、お前あの子の事意識してただろ?』
『そんな事ないし…興味ないね』
『いや~、お前ってなんか気になる事があると鼻の穴が膨らむんだよ。こう、プクーってさ』
森川が人差し指で鼻を広げて俺を茶化す。
『でも可愛いよねー、なんで今まで彼氏居なかったんだろ?』
新田はマイペースに呟く様に言う。
『だってあの子、一年の時から好きな奴いたじゃん。告白して振られたみたいだけど、まだ好きなんだって。でも、自分からはもう告白する勇気ないんじゃないかな?結構噂になってるし』
新田を捲くし立てる様に森川が話す。
何でそこまで知ってるんだと思ったが、彼女の事を少しでも知りたくて、聞き耳を立てた。
『そうだよなー、相手に好きな人が居るの分かってて告白はしないよなー』
新田がこちらを見ながらワザとらしく言ってくる。
『なぁ、あの子は無理だからやめとけって』
薄ら笑いを浮かべた森川がこちらを見る。
僕は一言『うるせーな』と返すことしか出来なかった。
体育祭は特に何が起こることもなく終了。
皆お疲れ様と、ファミレスで役員だけが集まりドリンクバーで乾杯。
実に安上がりな、学生らしい打ち上げで幕を閉じた。
俺はと言うと、相変わらず工場の仕事をしながら学校へ行く。
時間が出来たら友人と遊び、単位を落とさない程度に学校へ行く。
そんな毎日を過ごしていた。
変化があったと言えば、話し合いの時に交換した連絡先のおかげで、スカスカだった携帯のアドレス帳に彼女の名前が登録された事ぐらいだった。
毎日『彼女から連絡があったらどうしよう』
などと彼女の連絡先を眺めては妄想に耽った