WALK プロローグ
フィクションのようなノンフィクションのような。
そんなお話を書けたらと思っています。
よろしくお願いします。
夏が訪れる少し前の夕暮れ。
ジメジメと湿気が残る帰り道で、ふと昔のことを思い出した。
別に年老いて意気消沈しているわけでもないし、
生きることに疲れているわけでもない。
でも時々、やる気に満ちた自分より若い世代の強い輝きに目をそらしたくなることがある。
「こんなはずじゃなかったんだけどな」
思わず漏れた言葉。
そんなことを口にするつもりじゃなかったと気づき、口を閉ざした。
大きな幹線道路に架かる歩道橋の上で、ふと足を止めた。
今まで自分に関わり、時に寄り添い、励まし合った人たち。
もし、もう一度会えるとしたら――
俺はどんな顔をして、どんな言葉をかけるだろう?
当たり前の日常…
変わらない日常…
別にスリルを求めているわけではない。
でも時々、これまで歩んできた道をなんとなく振り返ると、そこに浮かぶ無数の分岐点がある。
その一つひとつが、今でも俺には眩しく光って見える。
他の人にはどう映っているのかわからないけれど、俺にとっては確かな目印だ。
歩道橋の下を通る幹線道路に、赤い光が増えていく。
この道は、君のもとへ続いてるのかな?
そんなことを思いながら、止まっていた足をまた一歩進めた。
いつの間にか、俺の後をついてきていたはずの影は、どこにもいなくなっていた。
遅筆ですが、コツコツと更新できたらと思います。