初めてのご招待
男とヤりまくっていたこの私が、女のマリアンヌをスキになるなんて……人生何が起こるか分からんもんだな……
まぁこんなおとぎの国みたいな世界にきて男になってしまっているだけでも、十分過ぎるほど何が起こるか分からんわっ。
でも今まで人をスキになったことなんてなかったから、どうすりゃいいのかが分かんないんだよなーー。
そんなもんすっ飛ばしてヤってたし。
それにマリアンヌからしたら私はただの女友達だもんなっ。
あーーどうすりゃいいんだろう?
夜はマリアンヌに誘われてソビエスキー邸で晩メシを食うことになった。
マリアンヌの両親に会うのって初めてなんだよなーー。いつもマリアンヌがスタンフィールドの屋敷に来てたし。
これはまさに……彼女の家に初お呼ばれ的なやつか?
まともに付き合ってるもん同士はそんなこともするんだよなーー。
兄貴達も家によく連れて来てたわっ。
母ちゃんは妙にそわそわして、
父ちゃんは鼻の下のばして、
家ん中がおかしな感じだったよなーー。
まぁ私は婚約者として行くんだから緊張することもないか……?
いや、やっぱ緊張する……。
❤︎❤︎
ソビエスキー邸に到着した私を、マリアンヌとマリアンヌの父ちゃん母ちゃんが出迎えた。
『今夜はよくお越し下さいましたな。お待ちしておりましたよ』
へーーこの人がマリアンヌの父ちゃんか……
『ご招待していただき、ありがとうございます』
タレ目でめちゃ穏やかそうな顔した父ちゃんじゃん!!
『お久しぶりにお食事をご一緒出来ることを楽しみにしておりましたわぁ』
へーーこの人がマリアンヌの母ちゃんか……
『こちらこそ楽しみにして参りました』
ニコッとした顔がめちゃマリアンヌに似てるよな……優しそうな母ちゃんだ!!
おんなじ貴族でも、アーノルド父ちゃんとエリザベス母ちゃんみたいに貴族オーラが炸裂しまくってないから親近感湧くわーーぁ!!
マリアンヌ見てたらこの両親の子なんだなって思うもんなっ。
『レオナルド様、今宵はシェフがとびっきり美味しいお料理をご用意しておりますので、たくさん召し上がっていって下さいね』
『あ、ありがとう』
ドキッ、、
なんか意識してしまうよな……
ダイニングに案内され席につき、マリアンヌとマリアンヌ父ちゃん母ちゃんと話してると、早速料理が運ばれてきた。
はあぁ……
そりゃあこうなるよなーー。
マリアンヌが言うようにとびっきり感ありありな料理が運ばれてきてるけど……
もう飽きてんだよ〜〜。
パンじゃなくって米食いてーー!!
スープじゃなくって味噌汁すすりてーー!!
母ちゃんが作る薄味で健康志向が過ぎる味のしない味噌汁ですら今じゃ恋しく思える!!
日本人は米と味噌汁なんだよなーー。
『我が屋敷のシェフの料理がお口に合うかはわかりませんが、どうぞ召し上がって下さい』
マリアンヌ父ちゃん……申し訳ないですけど、すでに口に合いそうにありませんが……。
『はい、いただきます』
このフォークとスプーンとナイフ見るのもイヤになってきてるしっ。
こんなもん使って食べるメシはウマくねぇんだよ!!
ステーキじゃなくて箸使って牛丼かき込みてーーぇ。
あ〜〜古野屋の牛丼食いてぇな〜〜。
しょうゆ味にすげぇ飢えてるわっ。
しぶしぶと出されたスープを音立てずに慎重にスプーンですくい上げ口に入れた。
『お、美味しいです……』
こうやって上品ぶりながら食べるメシにも疲弊しきっております。
『お口に合うのでしたら良かったですわぁ』
マリアンヌ母ちゃん……全然口に合っておりませんが……。
『今宵のためにマリアンヌが厨房に入って、シェフと一緒にどんなお料理をお出しするかを色々と考えておりましたのよ』
えっ!?
そうなんだ……私のために考えてくれたんだ……
『お母様、そんなこと言わないで。恥ずかしいわ……』
『でもあなた、とっても張り切っていたじゃない。フフフ』
しかも張り切ってくれてたんだ……
ケチつけてる場合じゃなかった!!
『娘が楽しそうにしている姿を見て、私も妻も大変嬉しく思っていたんですよ』
『お父様までそんなことを仰って……』
『ハッハハハーーすまん、すまん』
そうだよな……マリアンヌ父ちゃんも母ちゃんも、きっとレオナルドの女癖の悪さを耳にしていただろうから心配してたんだろうなーー。
マリアンヌは父ちゃん母ちゃんにいっぱい愛されてんだな。
それに家族といる時のマリアンヌは幸せそうだ。
めっちゃ居心地いいし、あったかい家庭だよなぁ。
マリアンヌとだったら……こんなあったかい家庭を築いていけるかもしれない…………って、また何を勝手に考えて浮ついた気分になってんだろう。
ーーほんとっ最近どうかしてるわっ。