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マリアンヌの初めて


あすは屋敷にアスカさんをご招待してディナーをご一緒することになった。

アスカさんは住み慣れたニホンという国からも、ご家族からも離れて、お一人でミラタリヤでお過ごしになり、そしてスタンフィールド公爵家のご子息としての責務まで負いながら懸命に頑張ってらっしゃる。

そんなアスカさんに、少しでも私の生まれ育った屋敷でリラックスしてお過ごししてもらえればと思いご招待したものの……アスカさんはどんな食べ物がお好きなのかしら?



秒を打ったようにコツコツと廊下を歩く足音がこちらへと近づいてくる。


ーーこの足音は……


『マリアンヌお嬢様っ!! またもや厨房にいらっしゃったのですねっ!!』


あら大変、、サリーに見つかってしまったわ……叱られちゃうわね。


『…… ええ。あすのディナーにレオナルド様をご招待しているから…… どんなメニューがよいのかマシューと一緒に考えようと思ったの』


『そんなことはシェフのマシューにお任せしておけばよろしいではないですかっ!!』


眉をひそめたサリーが声高に言う。


『でも…… 私も考えたいのよ。レオナルド様に喜んでいただけるお料理を……』


アスカさんのためにしてあげられることは、こんなことくらいしかないもの。


『サリー、よいではないか。マリアンヌお嬢様が一緒に考えたいと仰ってるのだから』


おおらかなマシューは私のわがままを聞いてくれて、厨房でお料理することも心良く受け入れてくれるけど、サリーにはいつも小言を言われてしまうのよね……フフフ。


『そうは言いますけどね、マシュー。伯爵家のご令嬢が厨房でお料理したり、メニューをお考えになったりなんて普通はしないのです!! 私は侍女長としてマリアンヌお嬢様にそんなことをさせたくはありません!!』


『サリーが言うこともわからなくはないが、マリアンヌお嬢様がご婚約者のレオナルド様のためにしたいと仰ってるんだ。仲睦まじく良いことではないか!! お好きにさせて差し上げよう』


『いつもマシューはそうやって私を悪者にして!!』


……私のせいでサリーとマシューがまた口喧嘩をはじめてしまったわ……。


『悪者だなんて人聞きの悪いことを言いなさんなっ!!』


『だってそうじゃないのっ!!』



今日はどちらが折れるのかしら?

喧嘩してても二人は仲良しなのよね。

ウッフフ。


それにしても……アスカさんはやはりステーキがお好きなのかしら?

サラダもたくさん新鮮なお野菜を使ってお出しして。

スープもとうもろこしのポタージュなんかがいいかもしれないわね……

デザートはどんなものがよいかしら?


あぁ誰かのことを思いながら何かを考えたり、したりするのって、こんなにも楽しくて、そして幸せな気持ちになるものなのね。


ーー初めて知ったわ……


お父様もお母様も、レオナルド様をディナーにご招待したことをお伝えしたら驚かれていたものね……

これまで一度も私がレオナルド様をご招待したことなんてなかったから……。

なんだかとってもワクワクするわ。

アスカさん、喜んでくださるかしら?


……それに……それに……バルロッタの瀧でアスカさんが私の胸に触れた時……ものすごくドキドキしてしまった。

だって、胸に触れられることなんて女性同士でもしたことがないもの。

ドキドキして当然よ。とても恥ずかしかったんですもの。


アスカさんは心の優しい方だから、私が小さな胸を気にしていることを知って、必死に心配しなくても大丈夫だと言ってくださって……

あの時のアスカさん……本当に必死さが伝わってきたもの……。

なんてお優しい方なのかしら。


明日はしっかりおもてなしして差し上げないと!!












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