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笑顔のマリアンヌ


レオナルドの中身が女の私、須藤明日翔であることをマリアンヌに告げてから、私とマリアンヌは互いの話をよくするようになった。もうすっかり仲のいい友達だ。

二人で今日は町の市場へと遊びに来ていた。


私を案内したいって張り切ってたもんなーー。



『アスカさん、こちらのお店の品物はどれも可愛いのですよ。見ていきましょう。髪飾りやブローチやハンカチなどが置いてあって、どの商品もデザインが可愛らしいんです』


『へーーそうなんだ。じゃあ見てみるよ』


マリアンヌは私が女だからこういう店に連れて来たら楽しめると思ってんだろうなーー。

ごめん……全く興味ねぇわ。

彼女の買い物付き合わされる男の気分だし。

まぁせっかく連れて来てもらってんだから楽しまないと。


誘われるままに店に並ぶ商品を流し見ると、どれもこれも可愛いモード全開のフリフリのギラギラや姫色ばっか……。

目がおかしくなりそ。

シンプルが1番だろうよ。

色も黒か紺でいいわっ。

なんで女はこんなもんが好きなんだろうなーーって私も女ですけど。


ちっとも何がいいのか分からんなぁと思いながら、ふいに視線を向けた先にマリアンヌにピッタシな物を見つけた。


おっ、これは……いいのん見っけ!!


『マリアンヌ!! ここに蝶々の髪飾りがあるよ』


私が声をかけると隣にいたマリアンヌが、ニコニコとしながら煌めく大きな瞳で蝶々の髪飾りを手にとった。


『本当ですねぇ。とっても可愛いです!!』


ドキッ、、


なんか可愛い笑顔だったな……今のマリアンヌ……


『それ買ってあげようか?』


『えっ?』


『今日ここに連れて来てくれたお礼に』


『そんなの悪いです……』


『いいよ。自分がそうしたいんだから!!』


あんな喜んだ顔をするってことは、欲しいってことだろ。


遠慮するマリアンヌに構うことなく私は蝶々の髪飾りを素早く買って手渡してやった。


『はい、マリアンヌ』


『わぁ、ありがとうございます!! とても嬉しいです。アスカさんも何か欲しい物はございますか? 私にプレゼントさせて下さい』


一切ございませんッ!!


『私はいいよ。レオナルドの姿だし。それに私は女の子らしい可愛い物が好きな方ではないんだ』


『そうなのですか。ではアスカさんはどのような物がお好きなのです?』


『そうだな…… ウマいもんが好きかなーー』


『…… ウマい?』


『あ、美味しいってこと。美味しい食べ物が好き』


『それでしたら、この近くに美味しいパン屋さんがあるのですよ!!』


そういや腹減ってたんだよな〜〜。


『いいね。それは食べてみたい』


『では早速参りましょうか?』


『うん。そうしよう!!』



パン屋か……できれば焼きそばパンかコロッケパン食いてぇな〜〜。

まっ、ぜってぇねーーだろうけど。


❤︎❤︎


マリアンヌおすすめのパン屋でパンを買い、近くの川沿いにあるベンチに座った。


分かっちゃいたが……焼きそばパンもコロッケパンもなかったな。

カチカチパンとシャレパンばっか。

しゃあないよな……ここは日本じゃなくっておとぎの国だ。

ミラタリヤは何処行っても美景だもんなーー。

川だって澄みまくっててゴミ一つないし。


『すんげーーいい景色だ〜〜』


『ウッフフ。先程から聞き慣れないお言葉ばかりで楽しいです。フフフ』


またやっちまった……二人っきりだとつい気が緩んで普段の口調が出てしまう。


『すんげーーってすごいってこと。私さ、女だけど話し方も振る舞いも女らしさとは無縁で生きてきたから。マリアンヌみたいに可愛い女の子じゃなかったんだ』


『そんな……私は全然可愛いくなんてないですよ』


『マリアンヌは可愛いよッ!!!!』


うわっ、、めちゃムキになって言ってしまった……


『そ、それより買ってきたパンを食べよ!!』


『そうですね。いただきましょう。あっ、、イタッ……』


マリアンヌが急に手で目を覆う。


『ど、どうした?』


『目、目に…… 何かが…… イタイ……』


『ちょっと手をどかしてみ、見てあげるから』


『はい……』


顔を近づけマリアンヌの目を見てみると、ゴミが入ったせいなのか涙が滲んできている。


んーーでも何も入ってなさそうだけど……


それにしてもこうやって間近で見ると、マリアンヌの目は吸い込まれそうになるくらい綺麗だよなーー。

このそばかすだって可愛いし。

自分を全然可愛いくないだなんて言ってるけどさ。


それに……このくちびるだって……くちびるだって……


ハッ、、何考えてたんだ……私?


『マリアンヌ、問題なさそうだけど。大丈夫?』


『えぇ、もう大丈夫そうです。ありがとうございます。アスカさん』


『なら良かった。じゃあ食べようか!!』


『はい、そうしましょう。ここのパン屋さんのブリオッシュはすごく美味しいのですよ。召し上がってみて下さい』


『うん。いただくよ』


大口を開けていつも以上にガツガツしながら、マリアンヌ激推しのブリオッシュに食らいついた。


『うまっ!! ブリオッシュ…… すんげぇウマいわっ!!』


『フフフ、すんげぇウマいのでしたら良かったです。アスカさん、お口に付いてますよ』


ハンカチを取り出したマリアンヌが私の口をトントンとして優しく拭く。


前にも同じようなことがあったよなーー。

母ちゃんだってこんなに優しくなかったわっ。

マリアンヌは母性の塊みたいだ。

ーーほんとっ……

まとってる空気がふかふかのあったか毛布みたいで、一緒にいるとふんわりと優しく包まれてる……みたいな?そんな感じだ。


『あ、ありがとう!!』


『いいえ。ウフフフ』


太陽のように眩しく輝いたマリアンヌの笑顔が私に降りそそぐ。


ドキッ、、


また可愛い顔で笑ってる……今の笑顔もかなり可愛いかった。


ドキッドキッ、、


んっ!?なんだ動悸か?









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