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11 五人目!?

 この世界の髪色は、焦げ茶、赤茶、薄茶がほとんどだった。

 いわゆるモブキャラは。

 ゲームより、この世界は人口が多いので黄土色や墨黒なんかもいる。


 オレリアンの金髪は明るいプラチナブロンドで『華やかな春の光』そんなふうに書かれていたはず。

 同じ金髪のアルチュールは濃い目のハニーブロンドで『温かみのある夕暮れ』

 コランタン王子は紫水晶。深い底からのバイオレットで『闇夜から朝へ向かう静けさ』

 ヴィクトーは深い緑の萌葱(もえぎ)色。『豊かな森の萠え出る木の芽』

 設定資料とは別のイラスト集にキャラクターの色指定が詳細に書かれていた。形容詞にこだわりが見られたので髪色っていうより性格設定やキャッチコピーみたいだなぁ。と思ったのを思い出す。

 そんなヒロインの恋愛と関係なさそうなところもしっかり作り込まれているあたりが、このゲームを好きな理由なんだよね。

 そして私の髪、水色も母親や先の王妃と区別するべく、微妙な色の違いが指定されていた。


 そんな中、ピンクって。

 絶対、主要キャラじゃん。

 もし、もしだよ? 私の熟読した資料の他に別の資料があったなら、ピンクなんて単純な指定じゃなくて、桜色とか珊瑚、薄紅なんて一捻りした名前の髪色なんじゃないかな。

 何者、なんだろう?

 そして、正式には何色と記載されているのだろう。

 王族と同じテーブルに席があるのは高貴な家柄。

 あ。じゃぁルソー公爵の御子息だ。


 今日までの準備と勉強で、招待客一覧を覚えさせられた。その中に家の格と、座席配置も教えられている。思い出すなあ、読みとローマ字との相性の悪さに驚いたのを。

 貴族の格、爵位は日本の漫画やアニメで知ってるものと変わらなかった。

 国や時代によって与えられ方が変わるため、ここではさしあたり上から偉い順。それだけ覚えておけばいい。

 王家が一番上なのは当たり前として。

 公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵。

「まずはコウシャクで、次は。こ……違う。ソ……そ?」

 ソウロウシャクって書いてある!!

 た、確かにね? 公爵と侯爵は同じ読みだから、区別するためにわざと『そうろうこうしゃく』って言ったりするけど?

 そっか、ローマ字だと漢字と違ってコウとコウの判別がつかないから。

 いやいや、だからってソウロウシャクはなくない?


 それはともかく、ピンク髪のイケメンがルソー公爵子息で家格から王子と同席しているのは不思議じゃないってことで、もう一人同席しているのが(そうろう)爵子息ヴィクトー。




 さて、この世界の男性は比較的短髪だと思う。

 騎士団長の父親は刈り上げかっ! ってぐらい短いし。

 大抵の人は現世の平均、学生やサラリーマンの髪と同じ。耳にかからないぐらいや、ツーブロック。長くてもメンズボブの少し耳が隠れる程度。

 けどね?

 このルソー公爵子息は、長いんだよ。

 艶々サラサラストレートが背中まであって、それをゆるく束ねてるの。

 本当に、特別な存在だと思う。


 ふぅ。

「……皆様に温かく迎え入れて頂き、嬉しく思います」

 何をしているときでも、いつでも、急な無茶振りでも言えるように暗記した、いや、させられた長い長い挨拶を終える。

 ニノン先生に叩き込まれた完璧な角度の礼とドレス裁きも付けて。

 お陰で、顔は余裕の微笑みを絶やさず、頭の中では招待客の値踏みをすることができた。

 先生に感謝。


 深いお辞儀をすると思う。貴族って頭下げなくない? と。

 ま、ここは半分日本。

 毎回思うどうでもいいことを考えながらゆっくり頭を上げた時、視線を感じた。

 みんなに見られているのはわかるけど、より強い眼差しを向けられているように思えたので、ほんの少しそちらへ目をやるとオレンジの髪の少女だった。

 私よりいくつも年上に見えるのでお姉様と言ったほうがしっくりしていいかも。

 黄色に近いオレンジの髪をポニーテールにしている。纏めても背中についているので解いたら結構長いんだろうな。

 あれが従姉妹のパトリシアだろう。

 他に気になる人物が多すぎて、見えていなかったよ。

 ……あ。

 ほぼモブキャラのパトリシアがオレンジの髪なら、ピンク髪もモブかもしれないよ?

 うん、そうだと良いな。ねえ?




 ここからは、各テーブルを回って個々に挨拶をする。

 それを待つ他のテーブルでは、招待客同士で雑談を楽しんでもいいし、温室を見て回っても構わなかった。

 軽食も準備されているので、食事を楽しんでも勿論いい。

 誰が何をして、誰とどんな会話をしたのかは気配を消しているお付きの者にチェックされているけどね。


「セレスが動かないと皆、動けないよ」

 そうだった。

「えぇ、お兄様」

 わかってたけどエスコートされるのを待ってたんです。って顔でオレリアンの手を取る。

 するとオレリアンは流れるような仕草で私の手を引き、コランタン王子たちのテーブルへ向かいやすくするように足先を変えた。

「安心して、全部僕がフォローするから」

 囁かれた言葉で、私の動揺を悟られたとわかる。

 ま、何に動揺しているかはわからないだろう。

「大丈夫、今日のセレスは一段と可愛いよ。微笑んでいればお披露目は成功する」

 相変わらずのいい声。

 そして兄バカ。

 そんな『いつも』に緊張がほぐれて、私はコランタン王子の元へ足を運んだ。


 挨拶は当然上位のコランタン王子から。

 私が近づくと、それに合わせて王子が音も立てずに椅子から立ち上がる。

 うわ、完璧な仕草。

 さすが王族。私より厳しい躾を受けているのだろう。

 王子の後ろでは、椅子を引くだけのためにここにいる使用人が緊張している。普段の食事では平然としてるのに、やっぱり王子様って特別だよね。

 自分より緊張している者を見ると、冷静になれるって聞いたことがあるけど本当だ。

 よし、大丈夫。

「本日は私のような者の会にお越しいただき、大変嬉しく思います。セレスティーヌ・ケ=カンブリーブと申します。王太子殿下にお目にかかるこの良き日が訪れた事、心より感謝申し上げます」

 なんか、敬語これで合ってるのかな。と、散々悩んだけどこれで良いって大人たちが言うからいいんだろう。

 本来なら、客人が先に『招いてくれてありがとう』そして『名前と一言』らしいんだよね。

 けど、公式な場で王族は先に口を開かないため、今回はイレギュラーだが格下の公爵家から話しかけることになる。

 私は貴族の中で上位の公爵家なので、今後は自分から話しかける機会は減るのだろうか。


「こちらこそ、お招き感謝する」

 あ。

 コランタン王子が喋った。

「私はコランタン・ファロ=トランティニャン。私も披露目の会を迎えたばかり、足りないところがあると思うが、よろしく頼む」

 ……うわ。

 ヒロ様だ。


 子供の声を出すなんて珍しいけど、ヒロ様で間違いない。

 やば。

 にゃぁーって頬が緩んで。

 へへぇって、口が歪んで。

 もっと、もっと聞かせて。

 耳が。

 どうしよう、耳が喜んでいる。

 鼓膜からビリビリと脳へ快楽物質が流れいく。んな訳ないけど。

 なんか、鼻水垂れそう。

 ……いやいや、垂らしてる場合じゃない。ならば、何をするべきか。


 つんつん、とスカートがオレリアンによってつままれた。私、考え事をしすぎて変な間ができてる?

「妹のお披露目にようこそおいでくださいました。王太子殿下のお披露目は大変素晴らしい会で、私の記憶に今も色鮮やかに残っております」

 間を埋める為かオレリアンが挨拶をする。有り難い。

「あぁ、オレリアン。あの日の貴殿は私にも印象深かった。自慢の妹君に会えて良かったと思う」

 え。

 オレリアンたらコランタン王子にすでに私の話とかしてんの?

 自慢ってなに?

 全く、本当にオレリアンは何もしなくても好感度が高いよなぁ。

 ふぅ。

 そうだ、これはゲーム。声はヒロ様でも相手は王子。本物の古田眞広じゃない。

 今は萌えてる場合じゃない。

「まぁ、なんのお話ですの?」

 くすっと可愛く笑ってから首を傾げると、オレリアンも微笑み返す。後で教えてあげるよ? って言われた。

 いや、改めてなら別にいいです。

 本当に知りたいわけじゃないんで。


「本日の良き日にご招待恐れ入ります。ヴィクトー・ヴァノ=デュペと申します」

 お、次が始まってる。

 声、松ちゃんだよね?

「お目にかかれて光栄に思います」

 うん、松林愁一郎だ。間違いない。

「初めてお目にかかります。セレスティーヌ・ケ=カンブリーブと申します。私こそお会いできて光栄ですわ」

 会いたいと思っていたのは本当だ。

二人の声が加われば、この世界は『勿忘草の乙女と出生の秘め事』だって確定だもの。

 ふふ、ふふふ。

 黒縁メガネのインテリポジション。

 声優とか関係なく、純粋にキャラだけで好きなのは誰かと問われたら、ヴィクトーが一番の好みなんだよね。

 メガネ男子、みんなも好きだよね!

 あぁ、二人の声が確認できてよかったぁ。

 よーし! やる気でたぞ!


 これから本格的にコランタン王子とのハッピーエンド目指して頑張ろう!

 今のヒロ様はまだ若い声だけど、これから大人のいい声になっていくだろうし、その変化すら楽しみ。

 ヴィクトーは私より年上キャラなので、今の時点で子供の声ではない。かと言って大人でもない微妙な音、いいね。

 早く二人の大人声聞きたいなぁ。色っぽい声とか艶っぽい声とか。

 もう少し聞いていたいから何か会話をしたいけど、二人にだけ時間かけてちゃまずい? そう考えて、開きかかけた口を閉じる。

 すると、例のピンク髪でルソー公爵家の子息がヴィクトーと入れ替わりで立ち上がった。

 本来なら侯爵家のヴィクトーが後に回るのだが、デュペ家は宰相。王太子の補佐として参加しているので席の位置や会話の流れからルソー公爵家より先になっている。

 決してキャラ紹介ページの順ではない、はず。

 

 ルソー卿は音のない滑らかな動きで立つ。

 王家の所作とは違った気品が漂い、目が奪われた。

 瞳は紫紺、なんて綺麗な深い色。……モブ、キャラだよね?

 それならこの存在感は?

「本日の良き日にご招待恐れ入ります」

 落ち着いた声。

 あれ? 聞いたことある……

「シュバリエ・カレ=ルソーと申します」

 この、小声のような囁きでもはっきり聞こえる通る声は。

 もしかしてキヨ?

「眩い女神のごとく美しい貴方に出会えたことを感謝します」

 うわ、間違いない。


 この人、CV粕谷正清(かすやまさきよ)だ。

 もしかして、メインキャラ?

ローマ字読みの設定上、ソウロウ爵としましたが、皆さまは普通に侯爵こうしゃくとお読みください

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