最終話 戦闘のあとに
「なんとか倒せたよ、今日だけは機械オンチで良かった。」
道路に転がっていたソーマに手を貸して起き上がらせた。
「スゴイね。それ、絶対機械オンチじゃないよ。チート能力だよ。」
ソーマがアハハと笑って、私もつられて笑った。
「戻りたいけど、さっきので腕折れちゃった。もうバイク盗んでも運転できないや。司令が迎えに来るまでジュースでも飲んで待ってよう。」
そう言って道の向いのコンビニに入ると、折れてない方の手に飲み物を二本持って出てきた。店員さんは避難して居ないし、スマホも壊れてるから、どうやって代金を払ったのか分からなかったが、深く考えない方が良い気がした。
「「カンパーイ」」
「ねぇ、ミンクさん。このまま軍に入ってよ。」
「私の能力を認めてくれるのは嬉しいし、ソーマの助けにもなりたいけど、ずっと機械に囲まれてるのは落ち着かないわ。ソーマが困ったことがあったら、また訪ねてきてよ。私で出来ることなら力になるわ。」
ソーマは少し残念そうだったが、優しく微笑んだ。
「そっか、仕方ないね。軍は機械だらけだし。」
そんな話をしていると黒い車が近くに停まって、司令とスナオさんが降りてきた。
「ミンクさんスゴイです!おばあ様のお家を護れたんですね!」
私はジュースを飲みながら、スナオさんに向かって親指をグッと立てた。
「おいソーマ、お前が飲んでるのは酒だろ。未成年が酒を飲んでるのを見つかったら軍のイメージが悪い。すぐやめろ。金は払ったんだろうな。」
「半分残ってるから、水で薄めて返しておくよ。わりと気づかれないもんだし。」
「む?俺の飲み物がたまに薄いのはお前の仕業だったのか!」
「あれ、気付いてたの?」
「気のせいかと思ってたが、これからはソーマの犯罪手帳に記録していく。」
「何その手帳、僕の犯罪をいちいち記録してるの?」
「平和になった時にソーマを牢屋にぶち込むための準備だ。俺の計算では、すでに懲役40年分ぐらいたまっている。」
「僕の人生で平和と懲役がイコールになりかけてるよ!ミンクさん、早速だけど助けて!」
目を瞑って可能性を探った。
「ん~、牢屋に会いに行くよ。差し入れは何がいい?」
「え、詰んでるの?嘘でしょ?」
「冗談だよ。平和になるまでじゃ先が長すぎて、私も全部の可能性を考えれないよ。」
ソーマの慌てた顔を見たら笑えてきた。10対1で戦闘してるときも、桜海が壊されても平気な顔してたのに。堪えられなくなって大笑いしだした私につられて、みんな笑いだし、なんだかちょっと平和な気分を味わった。ずっとこんなだといーな。
「ミンク、お婆さんに連絡して差し上げろ。もう心配ないってな。」
司令がスマホを投げてよこす。
「いいんですか?」
「いや、良くないよ。司令、ミンクさんに機械触らせたらダメだって。番号教えてよ、僕が掛けてあげる。」
ソーマに電話を繋いでもらって、おばあちゃんに戦争が終わったこと。敵のロボットを倒したこと。司令がポンコツなこと。スナオさんがフリーズしたこと。全部を混ぜて話した。横で聞いてたソーマは、
「知ってる話のはずなのに、何話してるか分からないや。おばあちゃん良く理解できるね。」
と変なことに感心していた。
「じゃぁね、またすぐ会いに行くからね。」
そう言って私は司令のスマホの、終話ボタンを押した。
ポンッとなったその音は、ささやかな平和を勝ち取った私たちを祝福する、花火の音のように聞こえた。
終わり。
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で続きを書いてます。