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4 出撃する

ソーマに連れられてロボットの下まで走った。他のと比べて古そうな機体で、本体が傷だらけだった。肩の部分に"桜海"とペイントされている。ロボットの名前だろうか。


桜海老(サクラエビ)?でも一文字少ない気がするなぁ。サクラエかな。」


「おうみ、って読むんだよ。普通ロボットって格好良い名前つけるんじゃない?桜えびとか言われたら、造った人泣いちゃうよ。これ、2人用だから、ミンクさんは上側に乗って。僕は下に乗るよ。」


ソーマが指さした方角に走った。足場が組まれていて、上側のコックピットに繋がっていた。乗り込みながら下のソーマに尋ねる。


「これ、2人で動かすの?私が触ると壊れちゃうよ?」


「下側で大体の操作は出来るから、ミンクさんはボタンに触らないように気をつけて。モニターに周りの映像が映されるから、指示を出してよ。」


「わかった。でも私はロボットの戦闘なんて素人だよ。」


「きっと、うちの司令よりマシだよ。あの人の指示は最悪なんだ。スナオちゃんに、臨機応変にとか言うんだよ。フリーズさえしなかったら最強なのに、司令じゃ使いこなせないんだ。」





機械だらけのコックピットに恐る恐る乗り込んだ。目の前にはボタン付きのレバーがある。


「これ、なんのレバー?」


「桜海の肩から出すミサイルのレバーだよ。触ると壊れるんでしょ?気にしなくていーよ。」


ソーマはそう言いながらいくつかの計器をチェックし、ボタンを押して自分の前にあるレバーを引いた。ロボットは片膝をついた状態で待機していたが、ソーマの操作に反応して立ち上がった。


メカニック(ロボットをメンテナンスする人らしい)が慌てて近寄ってくる。

「まだシステムが復旧してませんよ!」


「うん、分かってる。僕達はマニュアルで出るよ。司令も知ってるから大丈夫。」


しれっとソーマが応えた。確かに司令は知っている、許可は出してないけど。

メカニックの男性は安心したのか、アッサリと出撃させてくれた。




「敵はシーガ町の西側から侵入予定で、全部で10機、最終目標はロボ工場だよ。どこで迎え撃つ?」


「おばあちゃんの家から遠いほうがいいから、シーガの西側で止めましょう。ところで、うちのおばあちゃんのために、どうして危険なことしてくれるの?」


「ミンクさんのおばあちゃんには、家が命より大事なんだと思うけど、周りの人には理解してもらえないよね。僕も、そういうのがあるから、助けたくなったんだ。あとは、ミンクさんに恩を売って味方にするためだね。」


「おばあちゃんのこと、ありがとう。味方になっても食い逃げの手伝いはしないからね。」


ソーマはこちらを見上げてニヤリと笑った。


「ミンクさんに手伝ってもらったら逃げるのが簡単になっちゃうからつまんないよ。ギリギリで逃げ切った時の、追いかけてる人の悔しそうな顔がたまんないんだ。」


本当にろくでもない奴だった。牢屋に入れておいた方が良い気がする。まぁ今は頭を切り替えよう。


「桜海の武器は?」


「右手のライフルの射程が3kmぐらい。威力は弱いから五六発当てないと相手を壊せない。左手のビームは一発しかないけど威力はバグってるよ。10km先までビルでも山でも貫通するんだ。火力を上げるのが趣味のメカニックが担当してるからね。あとは接近戦用のブレードがあるよ。左右どちらでも持ち替え出来るし、僕は二刀流も対応できるよ。作戦はどうする?」


「敵の動きをまずは見たいかな。当たらなくて良いから、安全な位置から相手全員に一発ずつ攻撃してくれる?」


「オッケー、じゃあそろそろ敵に会うから、しっかり掴まっててね!」


角を曲がると10機のロボットが編隊を組んで大通りを進んでいるところだった。編隊の後ろから二発ライフルを放つと、後の二体に当たって大きな音がした。機体は凹んだが、問題なく動けるようだ。


「何だが敵の方が一回り小さいね。」


「あっちのが最新型だよ。今のロボットは人が乗らないから、小さく出来るんだ。」


とか言ってると敵側が銃を撃ってきた。ソーマは楽々とかわしてビルの陰に隠れ、半分ほど陰から出てライフルを撃つ。先ほどとは違うロボット二体に一発ずつ当てた。ロボットの戦闘はほとんど見たことがなかったけど、ソーマの操縦は迷いがなく、美しい。


「もしかして、作戦が無くても勝てるんじゃないの?」


「弾が無限なら勝てるかもね。でもライフルがあと26発しかないから、半分倒せたら良いぐらいだね。ブレードで5体相手は出来ないよ。」


その時ソーマのスマホが鳴った。私に投げてよこす。


「スナオちゃんからだ、出て。本人確認のコード入力がいるから、5674を入力して。」


「え、いーの?」


「さすがに今は操作出来ないよ。桜海の通信使ってこなかったってことは司令部は復旧してないし、戦闘中って分かってるのに敢えて電話してきたのは、きっと悪い情報だよ。ミンクさんに取ってもらうのを期待してると思う。」


「じゃあ、通話ボタン押すよ?」


「うん、早く。」


えいっ。

ポフっと間抜けな音がして、スマホの画面が真っ暗になった。


「壊れました。機械オンチでゴメン。」


「そうだった!もうそれ絶対機械オンチってレベルじゃないよ。呪いとかじゃない?」



…ヒドい。頼まれたからボタン押しただけなのに。


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