貴方へ贈る最後の手紙
若気の至り ですか?
忘れては、いませんよ
もう、そろそろ肌寒い季節になりましたね
お元気で、お過ごしでしょうか?
いつも、この季節になると
少し、体調を崩していましたよね
貴方のことが、心配です
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締め付けられるように、胸が痛い…
そんな、物語の台詞が浮かばないくらい
立っていられないくらい、
私の心臓が軋んだ、あの日
これが、最期になるなんて
誰も思っていなかった
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毎年、貴方へ手紙を書いていました
渡せないのは毎年のこと
あの、辛い毎日
あの女に貴方が入れあげ
我が伯爵家の財産を
ずいぶん減らしましたね
あのときの
言い尽くせない恨み言を
渡せない手紙に綴りました
何枚もの便箋に
貴方への愚痴を書き連ねました
何でも言い合える
なんて
そんなのただの
綺麗事
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そんな、哀しい日々も過ぎ
領地経営も落ち着いて
貴方も考えを改めて…
子ども達も大きくなりましたね
やっと、少し楽になる
そんな風に思ってました
でも、まだ
彼らは未熟
貴方と私は伯爵夫妻として
ある程度の立場となり
毎日のように
社交に領地事業の宣伝に
勤しんでましたね
貴方との仲の良いふり
物わかりの良いふり
疲れる毎日、でした
そのうち 月日は流れ
たくさんのことが
少しずつ手が離れ
未熟だった息子も成長し
素敵なお嬢様を
紹介してくれました
そんな、彼には
そっと
貴方の裏切りを
伝えてはおきましたよ…
なかなか
ショックを受けさせてしまいましたが…
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だって、調べればわかることですからね
あんなにあの後、私や領民が
頑張ったのだから
貴方ではなく
あれこそ
隠すべきことでは
ありませんよね
結局
今後 貴方の
子どもからの
態度
どうなるのでしょうね
あのとき 疲れ切った私に
何も貴方は言いませんでしたね
一体
私を
この土地を
どう
思っていますか?
貴方と私
立場は違う
それは、分かってる
でも、
領主としての立場は
それも
違うの?
私は
彼らも
ずっと
忘れてませんよ
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渡せない手紙に書き綴った
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結婚して30年
お互い年を取りました
子ども達は
私たち以上に立派になり
私達は
体も無理がきかなくなり
愚痴を飲み込むのも上手くなり
毎日を過ごしています
この、手紙にたちも
そろそろ
始末しようと思っていました
クローゼットの片隅に
侍女にも内緒で
ひっそりとしまっています
気が付かないで
ゴミになれば良いのですが…
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嗚呼
意識が遠くなってきました…
季節の変わり目に体調を崩す 貴方
どうか
どうか
あの、手紙が
貴方に見つかりませんように
ごめんなさい
私の自己満足で
書かなければ、良かった…
でも、あの頃は
書かないではいられなかったの
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これからの生活の
貴方の幸せを祈りながら
それだけではない、私の
醜い
この思いを
私の
これまでの思いを
貴方が
思い知れば
良い




