マ◯コ二毛作が怖い
むしゃくしゃしてやった
オレは大山大雅。私立高校に通う高校2年生だ。
どこにでもいる高校生、なんて言いたい所だが、ところがどっこい、実家は超金持ちの国際企業の創業者で、親も企業経営をしている超おぼっちゃま系男子だ。
昔は直系から大臣を輩出したり親戚に総理大臣がいたりしたものの、今は余り政治に関与していないらしい。裏ではどうか知らないけど。
それでも甘やかされているわけではなく、お小遣いさえ貰えない家だ。
最近はモデル業やそれで得た資金の運用とかでお小遣いを捻出するほぼ貧困学生だ。
あ、嘘。お小遣いであって貯蓄、投資のお金は別。
しかしながら許嫁とかいるわけでもなく、親には自由恋愛で結婚するように言われている。
でも最近思う。許嫁欲しかった。もしくはお見合いで結婚がいい。そんなふうに思うようになった。
なぜか?女という生き物が恐ろしいとよくわかったからだ。ビックリするほどに、近づいてくる女性全員が資産目当てなのだ。
資産がない大山大雅は女性に興味を持たれないということを最近理解した。
周りの女性がみんな資産目当てで怖くなりつつある。そんな敏感なお年頃なのだ。
そのせいか彼女を作るのも億劫で、他人からは寂しい高校生活と言われていた。
「大雅、彼女の1人でも出来たの?」
「出来てない……」
母親の若干咎めるような声で嫌気がするものの、答えた。
「貴方ね、さすがにこの歳で彼女いない歴=年齢、童貞歴=年齢、みたいな男なんて少ないわよ?同世代の女の子なんてみんな彼氏はいるし、みんな貫通済みよ?処女なんて都市伝説よ?何やってるの?」
「いや、母さん、常識考えてくれ。僕と付き合いたいとかいう人って大概が資産が魅力的に思っているだけで、僕のこと、あんまり見てもらえてないんだよね」
「それは出会っている女性の質が悪いんでしょう?貴方のクラスは比較的資産家の令嬢が多いでしょう?そっちはどうなの?」
「同じクラスの人はなんか気恥ずかしくて……だからバイト先のモデルの人とか……」
「それがダメなんでしょう?」
「わかってるよ!とにかく!俺は今の所彼女作る気、無いから!」
「へぇ、そんなこと言うんだ」
母は急に冷めた声音で告げた。あ、これあかんやつ。
「ほ、ほら、大学受験とかもあるから。それが終わったら頑張るから!」
「はぁ?その頃には女はみんな貫通済みだから、お前が初体験の時、前のチ◯ポと比べられるのよ?入れられながら「小さい」とか思われるわよ?」
「やめろよ!それ初挿入で折れるやつだよ!」
「とにかく!貴方がそう言う考えならこちらも考えがあります」
「お、おう」
そして、この日の母との会話は終わった。
気になったのは母の態度。なんか絶対余計なことを仕掛けてくる感じだ……
その週の週末の昼、母に呼び出され自宅の客間でお茶を啜っていると、母とその後ろにゾロゾロと俺くらいの年齢の、しかも見知った顔の多い女性陣を引き連れてやってきた。
「というわけで、第1回、大雅の彼女オーディションを始めるわ」
ぶはっ!!!
「は!?気でも狂った!?何その企画!?迷惑なことこの上ないだけじゃなくて他の人にも迷惑かけすぎじゃない?」
お茶を吹き出し、それを拭きながら突っ込んだ。
「そんなことないわ。こちらから打診してそれなりに筋がありそうな……いえ、貴方でも可能性のありそうな子を集めたわ」
「いやいやいやいや、本当?このメンバー、知らない人は別として……可能性、全くなさそうなんだけど」
「そうかしら?私の情報によると……まぁいいわ。1人ずつ、改めて自己紹介とアピールをお願いね」
「「「「「「はい!」」」」」」
「それでは1人目、松平英美里さん」
「改めましてだけど松平英美里。アンタも知っての通り、幼馴染の松平家の娘よ。パパがアンタとなら結婚してもいいって言うから今日は来たわ。ええっと……スリーサイズは上から「ストップ!!!」
「大雅、気にならないの?」
「いやいや!セクハラでしょ!?それはアウトでしょ!」
「そんなことないわよ。数値は努力の結晶よ。その努力の成果を発表しているだけじゃない。もちろん言いたい人だけでいいと思うけれど。それとも無しにする?」
こういうことを平気で言える母親なのだ。ある意味男勝りって感じで、女相手でも男相手でも全く容赦がない。女傑っていうのはこういう人のためにある言葉だと再認識させられた。
「無しで。今度会った時、目を合わせられなくなる……」
「とんだチキン野郎ね。ちんこ付いてんのかしら?」
「お前の息子だからついてるわ!」
「ほら、そんなつまんない事言ってないで松平さんの話を聞きましょう?」
「はい……」
押し負けてスリーサイズは各個人に任せることになった。何でや……
「えっと……スリーサイズは秘密よ。」
松平英美里は少し顔を赤らめて、秘密の暴露を避けた。見たところ80-56-82だな。俺の勘がそう告げている。この英美里とは長い付き合いで小学校入学時歳から知り合いだ。
俺にとってはコイツは……まぁ今は語るまい。
「次」
「はい。菊地桃花です。大雅君とは同じクラスの同級生です。今日は……大雅君とお付き合い出来たら実家の会社、助けてくれるかなって……スリーサイズは92-60-91です」
菊地さんはクラスの委員長で、巨乳の真面目系委員長。目の保養ではあるんだけどなぁ……
「次」
母がテンポ良く捌き始めた。何だろう。就活かなんか?
「白井千尋です。モデル仲間の。大雅と付き合ったら話題にもなりそうだし、仕事も増えそうだし。いいかなって思って。スリーサイズは92-58-90。どうせ公表してるしね」
次に自己紹介をしたのはモデルとしての知り合いの千尋。芸能界では先輩で、子役とかもしてたらしい。ドライな雰囲気があるように見えるくせに、グラビアまでこなす同い年とは思えないセクシーさが売りだ。
「次」
「南雲凛です。この前大雅さんに助けてもらって……まぁそのお礼というか、また今度遊んで欲しいです。出来れば家に来てくれるとお母さんも喜ぶし……」
凛ちゃん……あなた、中学2年生でしょ。何でこんなところ来てるの?
「次」
「南雲香奈子、凛の母です。今日は凛ちゃんの付き添いのつもりだったんだけれど、大雅くんの彼氏って話なら私もなりたいなって。なってくれたら私たちとても助かっちゃうし。スリーサイズは95-65-98です」
はい、凛ちゃんのお母さんで今年29歳かな?
凛ちゃんを家に送り届けた時に親しくなったのだけれど、こんな所に来るなんて……
「次」
「大沢心です。環さんの部下をしています!スリーサイズは……秘密で」
若干このオドオドした感じの人、知らないわけじゃない。母である環の部下として働いている姿を何回か見たことがある。まさかこんなところに来るなんてなぁ。
「心は私が呼んだ。将来的には会社の上役になる器だろうからな」
「無理矢理呼んだんじゃ……」
「無理矢理なわけないだろう?」
「無理矢理じゃないですよ……?」
心さんの目が若干泳いでるよ。母さんアウトだよ。
「とりあえず最後」
「メイドの桜です。大雅様とは幼少から互いにお風呂も入る仲。大雅様の貰い手がどうしてもいないならば、永久雇用と共にお引き取りと言う名の婚約を考えます。スリーサイズは87-59-86です」
メイドの桜さんはクールな姉って感じの人だ。オレを見る目はいつもゴミを見る目だ。そんな人がこんな企画に来るとは……
「さあ、とりあえず誰がいいか選びなさい」
「待って母さん。さすがに無理あるよ」
「貴方、女性関係に優柔不断なところは本当に父親似ね」
「母さんが即決できるだけじゃないかな!」
父は婿養子なので家じゃ立場が弱いし、今なんて海外の事業所に出向中だ。もう少し軌道に乗ったら帰ってくるって言ってたんだけど帰ってくるのはいつになることやら……
「と、とりあえず立ってるのはなんだし……ちょっと母さんと話をしたいから、母さん、別の部屋来てもらえる?」
「いいけど手短にね」
「はい……」
自己紹介してくれた人たちを残して2人で別の部屋に入り、椅子に腰掛けた。
「母さん、非常識すぎない!?今の世の中的にアウトだよ!これがバレたら週刊誌沙汰だよ!」
俺は冷静を保ちつつも、なるべく大きな声でわ今回の事を抗議した。
「そんなの金で黙らせればいいでしょ」
「今じゃSNSもあるんだから何でもすぐ拡散されるんだよ!?」
「そんなの言わないって誓約書とか書かせればいいのよ」
「それで秘密がバレないなら本当に楽な世の中だよ!」
「あなたね……何が気に入らないのよ。あの子達の何がダメなのよ!」
母さんも更年期なのか、青筋が立ってる。いや、怒りたいのこっちなんだけど。
「まずは、(松平)英美里。幼馴染だけどアイツの場合は親の強制だろ?将来、週刊誌とかにお金の為に結婚させられたって売られるやつだよ」
「さすがに松平家でそれはないわ」
「絶対ある。そもそもアイツ、俺の事嫌いすぎるから。中学まで一緒だったけど、一時期付き合ってるって噂流れて、本気で嫌がられてマジ凹んだんだけど。その挙げ句、高校別になったんだぞ?そんな相手と結婚させられたら何されるかわからない」
「あんたバカァ?ただのツンデレじゃない」
「はぁ?リアルのツンデレとか面倒すぎる」
とうとうラングレーみたいな事を言われた。そのセリフはこっちのセリフだ。
「(あんたがバカってことは)わかったわ。とりあえず全員に対してどう思っているか言いなさい」
「わかったよ。次に菊地桃花さん。家業の立て直しの為の供物ってことでしょ?結局お金の為なんだからリスクとしては英美里と差は無いし、割とすぐに融資が必要そうだから事が早急に運びそう。しかもたまに2人になると色仕掛けっぽいしてくるあたり、ハニートラップ的な要素もあるから無理」
「……菊地さん、頑張ってる様だけど少し可哀想じゃないかしら?……次」
「次は(白井)千尋さんも仕事絡みだよね。芸能界の暗部みたいな動機だし。まさに週刊誌が大好きなネタでしょ。最近流行りのマ◯コ二毛作になりそうで怖い。嫌いじゃないけど、それで付き合うのは無理」
「普通に照れ隠しに見えるけど……次」
「(南雲)凛ちゃんはまだ中学生。コンプライアンス的にお付き合い無理」
「年齢で決めつけるのは可哀想だと思うけれど……次」
「(南雲)香奈子さんは片親で生活が苦しいからでしょ。年齢差的にも愛人契約的な感じにならない?それにあの感じだと凛ちゃんの家に行こうものならあの2人大喧嘩するからやめといたほうがいい」
「そこは仲をとり持って親子丼でもいいじゃない……次」
「大沢心さん?だっけ?母さんのやってる事はパワハラだよ。子供の彼氏候補に部下を当てがうとか上司として速攻首だよ」
「……パワハラにならない様に気をつけて呼んだんだけど……次」
「最後は桜。もはや何ハラかわからないけれど、桜は可哀想だよ。あんなにいつも嫌そうに仕事してるのに結婚までさせようとするなんて。しかも仕事の延長で結婚でしょ?パワハラだしマリハラ?だし目も当てられないよ。明日辞表と共に損害賠償請求されたら勝てないよ!」
「桜はクーデレなのよ、多分。でも桜の場合だって何かあったらお金で解決出来るじゃない。桜はメイドはしてるけれど良家の令嬢よ?なんとかなるわよ。はぁ。全く……こんだけ集めて誰にも靡いてないじゃない」
母さんは何か諦めた様に天を仰いだ。
俺も話疲れたよ。
「当たり前だよ。全員リスクの塊だから。母さん、今はコンプライアンス至上主義なんだよ。もう昔みたいに金でなんとかならないよ。付き合うのだって、それこそ連絡先の交換でさえリスクなんだよ」
「アンタ、本当につまらない男ね。それにコンプラ、コンプラって、これだから仕事がつまらなくなるのよ」
「まぁ母さんの持論はさておき……とりあえず今日の事は謝って帰ってもらうから、それでいい?」
「……アンタがその気じゃないなら仕方ないわ。とりあえず……そうね。今から戻って全員に今日の謝礼渡して、解散にしようかしら」
「そうやってお金で解決するぅ……」
その後、客間に戻って全員に謝って今日は帰ってもらった。その際に宣言通り母が封筒にお小遣いを入れて渡しつつ、今日のことを口に出さない様に釘を刺していた。釘を刺すくらいなら呼ばなきゃ良いのに。
というかその封筒、どう見ても5万近く入っている。1万とかの厚みじゃない。
この後、今日のお詫びの連絡を何人かにした所、お詫びにお出掛けを要求されることや、また遊ぶ約束を取り付けられる羽目になったけれど、それは必要経費ってことで渋々了承した。なんか母さんの尻拭いさせられるの、癪なんだけど。
夕食時に母に今日の事を再度話され、また童貞の話になった。好きだな童貞トーク。卒業したら出来なくなるじゃん。というか後ろに桜が控えてるんだからやめてよ……セクハラじゃん。
今回のオチはこれだった。
「というか、貴方、いつどうやって童貞卒業するのよ」
「18歳過ぎたら風俗にでも行きますよ」
「よっぽどそっちの方が金で買ってるじゃない!」