Prolog『序』
「ぁがッ…………ご……」
ぼたぼた。吐血する。大量出血による失血死。そんなとこか?
何度目の死だろうか、数えるのも億劫になってきたな…………。エメラルド。兄貴はポツリとつぶやく。
「ごめん……俺が。おれが……」
守りきれなかったから。
違う。違うよ兄貴。兄貴が悪いんじゃない……。翠色の髪を揺らして。其の宝石のような翠の瞳には潤んだ涙を浮かべて。
俺は血塗れになってぬかるんだ泥の中で藻掻きながら……。
ゆっくりとその手を。グーにして。
「こんどこそ……やり。切らなきゃ……」
そう呟いて。静かに息を停めた
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四大国ーーメルト平和主義連邦。
いつもの如く、平和な街並み。夕夜の暗がりの中に、堕ち夕陽が煌めいている。
水平線の向う側、そこへ夕陽は……堕ちる
ーー途端、現れる『刃』。刻みつける宵の刻。
平和な街並みは一瞬にして不穏な気配に包まれた。そこはとあるバー。マスターでさえもグルの……邪悪達が肩を並べ、ほくそ笑み……
藍色のほんのりと未だ朱色が残穢の如く残っている夕闇の中で……。紫髪に黒いメッシュ、藍色を織り込み、固めたかのような紺色の瞳。その顔立ちはどこか妖艶ながら、男性的な顔立ちをしている。首筋が見え、肩程まで伸びた紫髪を留めている。……彼の名はーー。
「ローラン様。今の状況は?」
そう、ローラン。黒い手袋、黒い外套を羽織り、不敵な笑みを浮かべているーー。
「そうだな、始まったよ」
ーー百物語事変
がね
その言葉と共に辺りに喧騒が拡がったような気がした。
「ははっ、騒がしくなりますね」
そう言って微笑むのは、桃色の髪をボブカットに切り、緋色の瞳を持つ。服装はローランと同じ服装をしており、統一性が見られるだろう。
彼等彼女等は…悪夢之玖人と称される、この世界において悪夢の如き力を誇る、化物共。
彼女の名前は……アメリ。アメリ・プルファという。
「で。君は……どれくらい時間を稼げると思う?」
そう囁くように問い掛ける。それで彼女はこう答えるだろう。
「貴方の予想の通りに……動くでしょう」
酷く心酔した様子で、そう呟くことだろう。
同刻、メルト平和主義連邦……。
既に平穏は取り払われ、代わりに未曾有の異常事態に苛まれていた。それは……この世界においては時たま有り得る出来事だ。それはなぜなのか。それは。
この世界には『異能術』や『術式』。『源力』といった、通常存在し得ない存在が在るからだ。
さて、今の状況は。都市部として発展していた中世ヨーロッパのような街並みが、一気に崩壊してゆく……。途端、生まれ出ずるは火山。台風、雷華、白光などなど、莫大な量の『事変』が巻き起こる。 それに対し……。一閃、蒼色の閃光が迸り、火山を。台風を。雷華を。白光を。その事変の悉くを打ち砕いていく。メルト平和主義連邦。そして……ネビュラ帝国。その二つの大国を跨ぎ、双方の事変を瞬く間に平定させ、平和へともどした、『人類最強』のーー“鬼神”
青髪黄眼、ダイヤ、エース、ジョーカー、スペード、クラブ、ハートの刺繍がなされた純白の羽織を着用した、整った顔立ちの男性。厄災とも呼ぶべき『悪夢』とーー。盛大な殺し合いが勃発するだろう…。
その人物の名は。カルヴァ。カルヴァ・ブロークンその人だ。
「ーーなんだ。案外雑魚ばっかだな」
数にして九十の事変を一気に片付けた。正にその姿は鬼神。