ーーーー過去編。幼年期
その世界は、四つの大国が並び、手を組み合い、国同士の仲は良好な世界。だが、どの世界にも……【不幸】というモノは……どこにだって存在するものだ。
例えばーー“僕”は…両親は生まれた時には既に、死去していた。別段珍しくもない病院の産婦人科にて。
「……こ…れは……“悪魔のオトシゴ”だ……」
呟きと同時、死にながらも産んだ母の腹から、取り出されてそう言われた。
僕の未だ発達していなかった瞳には……真っ白な風景と少しの肌色。その程度しか映らなかったと思う。 いや、むしろその程度映っただけでも驚異的な発達力だろう。そして、悪魔のオトシゴ、などと言われたことを勿論、僕は知る由もない。だから今を精一杯生き抜こうと踏ん張っている、小さく、弱く……、死という災害に見舞われれば直ぐにその葉を散らす、若芽のようなモノだ。
それから数年ほど経ち、僕は孤児院で育っていた。貧しいながらも立つ子供達のための農園、僕らが住まう住居、優しいセンセイ。確かにそこは、普通の孤児院だった。比喩でもなんでもなく、本当にただ、普通の。
僕の齢は5歳。その頃から僕にはある特殊な力があった。生物を惹き付け、どんな生物も僕のものにしてしまう力だ。
けれど、人間だけは難しい。言葉を尽くして、理性を溶かさなければならない。けれど五歳にできるわけは無いから……。まだこの頃は動物が寄り付く不思議な少年でしか無かった。
ぼー、っと自分の寝る寝台から起き上がると、すぐ真横に。
「ろーらん、ろーらん、おはよっ」
にぱっ、と優しげな目付きで挨拶する、何処か儚い顔付きをした少女の姿。確か名前は……アンネ。けれど僕は、人間よりも動物と戯れるのが好きだったから。
「はいはい、おはよう」
とだけ返してそそくさと施設を飛び出し、農園を抜けて、自然広がる森へ駆け出して行った。
そこでは、熊、蟻、蜂、蚯蚓、猿、鹿。そんな生物達が集まってきて、僕に語りかけるように遊んでいた。
ーー楽しかった。
熊の腕でぶらぶらと揺れるのが楽しい。蟻と一緒に歩いて砂糖の在処を探すのが楽しい。蜂と一緒に花を見て回るのが楽しい。蚯蚓と一緒に土を柔らかくするのが楽しい。猿と一緒にバナナを食べるのが楽しい。鹿と一緒に葉っぱを食べるのが楽しかった。
これだけで僕は充実していた。楽しかったんだ。それなのにーー。
あくる日の朝、また僕は寝台から目を覚ました。
いつものようにアンネに愛想の悪い挨拶をして、ゆっくりと森へ歩こうとした。すると、農園の方でふと、男の子達が何かをしていた。ざわざわと騒ぎ、うざったい笑い声が聞こえてくる。
「何してるの」
そう呟いた途端、ケラケラと笑いながら、男の子は遊びに誘う
「お前もやるか?」
笑っている。何をしているんだろう、と畑の土を覗き込むと……蟻が水責めされていた。辛そうだった。どこへ行こうと水をかけられていた。
そこにはこの歳特有の、好奇心旺盛な醜い“遊び”があった。
蟻の視力はほとんど無い。匂いで視界を補っている。……それなのにこいつらは。
「なにしてんの」
怒りそうになった。ここまで怖い気持ちになったのは初めてだった。土を踏み締めている。
「なんだよ、怒ってんのか?」
ーーたかが蟻だろ
鼓膜を打ち付ける……人間の『醜悪』。
僕は苛立ちに任せて殴りを放つ。熊に鍛えてもらったパワーで殴った。男の子たちはごろごろごろごろっ、と農園から落ちていき、地面にばたりと背中を着いた。
「ありさん……」
ほろほろと涙を流していた。悲しい、悲しかったんだ。
次の日の朝、僕が孤児院で目を覚ませば
アンネの目が腫れていた。
「ろーらん。…おはよう」
笑っていた。違う。こんな事。こんなことになって欲しかったんじゃ。違うんだ。ねぇ、どうして?
ーーただ一緒に挨拶して、普通に話してれば良かった。なんで僕は……関われないで。勝手に僕のせいで傷つかなきゃならないんだろう。
辛かった。辛くて辛くてたまらなかった。
だから……。
「おはよう。アンネちゃん」
初めてのちゃんとした挨拶を呟くと同時、ゆっくりと寝台を降りて、昨日の男の子を探し始める。
「なんでアンネをあんな風にしたの」
男の子は笑いながら
「おれがやったって言うしょーこはあんのかよ!」
ケラケラとそういった。取り巻きたちもそーだそーだ、とゲラゲラ笑っている。
“しょーこ”も何も……お前らがそんなゲラゲラと笑っている事が。1番のしょーこだろ。
もう、話したって無駄なことがよくわかってしまった。だから僕は。殴り飛ばした。
「許されると思ってんの?お前」
ふざけてんじゃねえよ。こんな事して。
何“嗤ってんだ”。
ひたすらに殴り続ける、アンネが制止する声でやっと止まった。
アンネ「良くないよ、こんなこと、ね?もうやめよう?」
背中をさする声が聞こえる。
止めた、と同時に、男の子の蔑むような声が聞こえてきた
「お前は、お前はアンネを無視しただろう、だったら何してもいいじゃないか」
「ーーしょーこだよね、それ」
呟きと同時に、もう1発殴ろうかと拳を握ったけれど…やめておいた。殺してしまうかもしれないし。それに…アンネに申し訳ない。せっかく止めてくれたのに。というのがあって、辞めた。
けれど、それを孤児院の先生に見つかって、僕は孤児院から捨てられてしまった。それがいい。その時、孤児院の先生は呟いた
「出ていきなさい……悪魔が」
何故かその言葉が、酷く僕の心を殴り、突き飛ばしたような気がした。
どうも、奏主です、知ってる方はどうもっ、初めましての方は初めまして!久々に連載し始める小説ですね、結構気合い入れて書こうと思っております、是非是非、感想、ブクマ、評価等お願いしたいですっ