政府専用機内にて その七
遅くなりました…。
ごめんなさい…。(土下座)
松本総理の言葉を聞いた十倉寺司令は、
「…あれは奇策などではありませんよ。本当の奇策というのは全員を無事にアメリカまで逃げさせるような物を言うのですよ」
と、言って松本総理の言葉に反論したのである。
そのやり取りを聞いていたトーマス博士が十倉寺司令に、
「ですがあの状況であの作戦を立案出来たという事実は誇っても良いのではないですか?」
と、言って話し掛けたのであった。
その言葉に十倉寺司令は、
「…ありがとうございます。博士にそう言っていただけるのは嬉しいです」
と、固い表情のままで答えたのである。
その様子をこれまで黙って見聞きしていたアーシアは心の中で、
(なんか十倉寺司令って母上と会談してた時のテイルに似た考え方してるな…)
と、言って、ほぼ同時にテイルも心の中で、
(…十倉寺司令ってアルシア様と話してた時の私に似てるなぁ…)
と、話してテイルとアーシアの感想がほとんど一致したのであった。
そしてテイルが、
「…十倉寺司令が、ご自身で発案した作戦に良い感情を持っておられないのは陸軍と空軍に全滅してもらう事が前提の作戦だったからですか?」
と、言って尋ねたのである。
するとその言葉に十倉寺司令が、
「…そうです。もっと上手い作戦を立案出来ていれば被害は出ていたでしょうが全滅する事はなかったでしょうから…」
と、言ってテイルの質問に答えたのであった。
それを聞いたテイルは、
「…それでは続きをお願いしていいですか?」
と、言って十倉寺司令に話の続きを行うようにお願いしたのであった。
これに答えたのは十倉寺司令ではなく、松本総理で松本総理は、
「…十倉寺司令はこの話をするのに抵抗があるでしょうから私が話しましょう」
と、言って続きを話し始めたのであった。
「十倉寺司令が提案した他国への逃亡案に戦争派と降伏派のどちらも難色を示したのですが十倉寺司令は両派閥ともそれほど時間を掛けずに説き伏せたのです。戦争派の人間達には韓国、台湾と滅ぼし戦力も十分で勢いに乗る同盟軍と万全の状態ではない我が軍が戦っても勝機は無い、むしろ日本軍を蹴散らしてさらに勢いを増した同盟軍に日本を端から端まで蹂躙される結果になるだろう、こう言って戦争派の人間達に意見を下げるように言ったのです。ただ戦争派の人間の中には各国に援軍の要請を行い徹底抗戦するべきだという者達もおりました。彼等に対しては、おそらく援軍に来てくれた各国の軍もまとめて撃破され、日本の後はその疲弊した国に攻め込んで滅ぼすはずだ、そうなってしまえば同盟軍の地球圏統一を止められなくなる。そうなるなら初めから援軍要請をしない方が良い、そう言って戦争派の人間達を説き伏せたのです」
松本総理はここまで話すと一度言葉を切って息を整えたのであった。




