《振り返った先の人物は》
テイル達が声のした方に目を向けると、そこには涼やかな笑みを浮かべた一人の男性が立っていた。
その男性を見たテイル達は、全員が大声をあげていく。
「……あっ⁉ ケイン・ファルネウス⁉」
「ケイン将軍⁉」
「おお、ケイン提督!! そなたであったか!!」
「ケイン総司令……なぜここに⁉」
ウクライナ王宮にやってきた男性は、大英帝国軍最高司令官兼大英帝国海軍総司令官、ケイン・ファルネウスその人であった。
その肩書きの多さと一部NATO軍将兵からのヘイトのせいで、テイル達がケインの名を呼ぶ時の呼び方が統一されずバラバラになってしまうなか、ケインはNATO軍将兵を無視する形で玉座の間を進んでいく。
そうしてテイルとグレノスキー国王の前に立ち、テイルの方から先に挨拶をしていった。
「……」
「……うん? あっ、おい⁉」
「待て! 我々のことは無視か⁉」
「……」
「……無視、らしいな……」
「ちっ、くそ……」
「……ご無沙汰いたしております、テイル・フェリアシティ女王陛下……」
「……そうですね、ケイン・ファルネウス総司令」
「はい。おお、それからボロディメル・グレノスキーウクライナ国王陛下も。ご無沙汰いたしております。ご機嫌はいかがですかな?」
「……ここはウクライナの王宮で、私はウクライナの国王なのだがな、ケイン総司令」
「ええ、存じております」
「……それならばテイル陛下よりも先に、この私に挨拶をするべきではないのかな?」
「申し訳ございません、グレノスキー陛下。ですが私は陛下よりもテイル女王陛下とお近づきになりたかったものですから。どうかお許しを、グレノスキー陛下」
「……そうか……相変わらず自由な男だな……」
ケインが自身よりも先にテイルに挨拶したことをなじっていくグレノスキー国王。
しかしケインは、そんなグレノスキー国王に悪びれることなく平然と謝罪をしていき、その謝罪にグレノスキー国王が溜め息を吐いていった。
そんなケインに、今度はテイルが声を掛けていく。
「……私とお近づきになりたい、ですか……ケイン総司令……」
「ええ、それはもう、是非に」
「……そうですか……わかりました」
「む⁉ テイル女王陛下、それでは⁉」
「ロシア海軍黒海艦隊をどうにかしていただけるのであれば、前向きに考えましょう」
「おお、そうですか! そのようなことであれば容易いことです!」
自身の発言に対するテイルの返答を聞いたケインは、嬉々として受け入れていく。
そんなケインの様子を、NATO軍将兵は冷ややかな目で眺めていた。
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