第一段階、解放
気が付いたらポイントが入っていて、いいねもついていた…。
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「ギガストームか…かなり驚いたし後ろと分断させられたけどよぉ、俺がお前を押し込めるってのは変わらねぇからなぁ、このまま押し込んでお前が発動させたギガストームにお前を押し込んでやるよ!!」
女の敵がそう叫んでワイバーンへの圧力を更に増大させたその時、ワイバーンのテイルもワイバーンのコクピットでワイバーンに優しく語り掛けるのだった。
「それでは押し返しましょうか。いきますよ、ワイバーン」
そう語り掛けたテイルがワイバーンの左手に力を込めるとそれまで一方的に押し込まれていた状況から好転、拮抗状態に持っていったのである。
「…な、何だ…?押せない…?」
突然ワイバーンを押し込めなくなった事に女の敵が困惑の声を上げる中、テイルが叫ぶ。
「スラスター及びバーニア最大出力限界突破!!いきます!!」
テイルが叫んだ瞬間、拮抗状態にあったワイバーンと女の敵のマシンアーマノイドは更にワイバーンが有利になった。
具体的に言うと女の敵のマシンアーマノイドをワイバーンが押し返し始めたのである。
「押し返される!?バカな!?」
女の敵が困惑状態からパニック状態になる中、女の敵のマシンアーマノイドを逆に押し返していたワイバーンが突如押し返すのを止めたのである。
それどころかワイバーンはいきなり急速後退を行なったのである。
その為にフルパワーで押し返そうとしていた女の敵のマシンアーマノイドは大きくバランスを崩してしまった。
そしてその状態の女の敵のマシンアーマノイドにワイバーンが急速接近、激しく蹴り飛ばしたのである。
「うおおぉぉ!?」
女の敵が絶叫しながら吹き飛ばされていく中、テイルは冷静にワイバーンのレーザーライフルの照準を女の敵のマシンアーマノイドに合わせると、
「レーザーライフル最大出力限界突破…!」
と、言って引き金を引いたのである。
そして放たれた五つのレーザー光線は女の敵の乗るマシンアーマノイドの頭部、両腕部、両脚部を正確に撃ち抜いてそれぞれの部位を木っ端微塵に吹き飛ばしたのである。
「えっ…ちょっ…!?」
あっという間に搭乗機の胴体部分以外を破壊された女の敵が何かを言おうとしたがいつの間にか接近してきていたワイバーンに残りの胴体部分を捕らえられた衝撃で話す事が出来なかった。
一方女の敵が搭乗するマシンアーマノイドを捕まえたテイルは、
「貴方も…落ちなさい!」
と、叫びながら女の敵が搭乗しているマシンアーマノイドの胴体部分を地面に向けて思い切りぶん投げたのである。
「ああああああぁぁぁぁ…!!」
地面に高速落下していく胴体部分だけになったマシンアーマノイドのコクピットで絶叫する女の敵。
それを黙って見詰めるテイルはとある次の行動の準備を始めていた。
「このまま地面に落下させるだけで充分な気もしますが…下から魔法で攻撃される可能性を考えると念には念を、となりますよね…」
テイルがこう言っている間に落下していた女の敵の乗るマシンアーマノイドとその前に落下していたもう一機のマシンアーマノイド。
その二機に向けてテイルが叫ぶ。
「いきます、封魔陣!!」
テイルがこう叫んだ直後、地面に落ちている二機のマシンアーマノイドに乗っている二人に異変が起きた。
「なっ…何だ!?今度は何が起きた!?」
「か、体が動かねぇ…!あの女何しやがった!?」
二人の身に起きた異変、それは一切の身動きが出来なくなる、という物であった。
「うん、下の二人は良し、と…。これで安心して残りの六機に向かえますね」
地面の二人にしっかりと術が掛かっている事を見て取ったテイルは自身の背後、ギガストームの向こうにいる残り六機に狙いを定めると最大速度でギガストームの中に突入していった。
一方ギガストームの向こう側で立ち往生している六機のパイロット達は自分達と仲間を分断している巨大竜巻を歯軋りしながら見詰めていた。
「隊長、どうしましょうか…?」
「…我々の力ではこれを突破する事は出来ん」
「ではあの二人は…?」
「…持ち堪えてくれていると信じる他あるまい…」
「…隊長…」
こうしてギガストームを見詰めながら仲間の無事を祈る後続部隊六機のパイロット達。
そして彼等はまだ気付いていなかったが、彼等の元にテイルが操るワイバーンが徐々に近付いていたのである。
そしてワイバーンが後続部隊六機を射程距離に捉えた所でテイルが叫ぶ。
「レーザーライフル最大出力限界突破!同時にファイアボールをホーミングモードで発動!同時発射…いきます!!」
こうしてまだワイバーンの接近に気付いていない後続部隊六機にレーザーライフルとファイアボールが発射されたのである。
そしてギガストームの内側から狙い撃ちされる形になった後続機六機は四機が最初のレーザーライフルを避けられずに首部分を撃ち抜かれ、なんとか避けられた残り二機も直撃した四機共々に次弾のホーミングファイアボールに頭部を吹き飛ばされたのである。
「隊長!?」
「やられた!!あの小娘!!」
「隊長…俺達が撃たれたって事は…」
「…ああ、あの二人はやられた。それで間違いあるまい」
「隊長…」
「泣くのは後だ!それより今は退くぞ!いいな!?」
「そんな!?あいつらの敵討ちは!?」
「落ち着け!!頭部を破壊されて目をやられているんだぞ!まともに戦えると思っているのか!?」
「そ、それは…」
「悔しいだろうが今は退くぞ!わかったな!?」
「う、うぅ…」
「は、はい…」
こうして後続機六機はこの場からの撤退を決めたのだった。
だがこの作戦会議の時間が彼等の命取りになった。
彼等が会議をしている間にワイバーンがギガストームの突破を終わらせて彼等との距離を縮め、近接戦闘が可能な距離まで近付いていたのである。
「捉えましたね。まずは他の機体との距離が離れているあの一機から!」
そう言ってテイルは若干孤立していた一機に狙いを定めるとレーザーライフルを最大パワーで撃ちながら急激に距離を縮めていった。
「…え?うわあぁぁ!?」
ガノハットの命令で撤退を始めようとしていた六機だったがその中で若干孤立していた一機にワイバーンが放ったレーザーライフルが全弾直撃、それまでの二機と同じように胴体部分以外を全て破壊されたのである。
その残った胴体部分に向けて急速接近して掴まえたワイバーンにこの胴体部分をこれまでの二機と同じように地面に向けて投げ落としたのである。
そうして三機目を投げ落としたテイルは投げ落としたその相手が今もまだ発動されているギガストームに巻き込まれてバラバラにされないようにギガストームへの魔力供給を解除して完全に消滅させたのである。
「これで良し。後は残りの五機を同じように戦闘不能にするだけですね」
こうしてテイルは撤退を始めている残りの五機に対する攻撃を開始、ここに来て狩る者と狩られる者の立場が完全に逆転したのだった。
そして狩られる者になった五機には深刻な問題が発生していた。
「そ、そう言えば隊長…」
「何だ!?」
「に、逃げるって、何処へ?」
「基地へ逃げるんだよ基地へ!!」
「基地ってどっちですか…?」
「ふざけている場合か!?それにわからんならレーダーを見ろ!!」
隊員達の言葉に激怒して叫ぶガノハット。
そのガノハットに隊員達が自身達が陥っている深刻な問題を告げる。
「…レーダーは…頭部を破壊されたので…使えません…」
「…あ」
隊員達がガノハットに告げたように彼等はワイバーンの攻撃で頭部を破壊された結果カメラアイによる目視とレーダーでの探知の両方が出来なくなってしまっていた。
そして彼等が話している間に次の一機がテイルの餌食にされ残りが四機になってしまい、残りの隊員は半泣きになりながらガノハットに意見を求める。
「…た、隊長…どうすれば…?」
「くぅぅ…ええい、全員回れ右してその方向に全速力で逃げろ!そしてある程度離れた所で地上に降りて位置を確認してそこから基地に戻れ!良いな!?」
「は、はい!」
こうしてガノハットの指示でその場の全員が回れ右をして逃げようとした。
その四機にテイルの声が響いた。
「いきます、ホーミングファイアボール!」
「え?うおおぉぉ!?」
この場からの撤退の為にワイバーンに背後を見せた四機の背部メインスラスターにテイルが発動させたホーミングファイアボールが直撃し四機それぞれのメインスラスターが大破、こうして残りの四機のこの場からの撤退が出来なくなってしまったのである。
「さて、これでレーダーの使用を封じてこの場からの撤退も封じました。後は戦闘不能にするだけですね」
と、残りの四機に絶望的な言葉を口にしたテイルがその言葉を現実の物にするべく残りの四機に襲い掛かっていった。
そして襲われた四機はレーダーが使えない事もあってまともな抵抗が出来ずに次々に頭部と四肢を切断されて戦闘不能に追い込まれ、あっという間に八機全てが倒されてしまったのである。
そして戦闘不能に追い込まれた八機は最初の二機が放置されていた場所に全て集められ封魔陣でパイロット達の身動きを完全に封じられた事で本当に戦闘不能にさせられたのだった。
この八機の前にワイバーンが降り立ちテイルが魔王軍兵士達に話し掛け始めた。
「宣言通り、私の勝ちですね」
「…こ、の、化け物が…!!」
テイルの言葉にガノハットが怒りで表情を歪めながら返す。
その一方で彼の部下達は恐怖に震えながら呟いた。
「こ、殺される…」
「ま、まだ死にたくねぇ…」
その呟きを聞いたテイルは今まで彼等を生かしていた理由を彼等に説明し始めるのだった。
「貴方達は殺しません。全員帰還して貰います」
「……へ?」
「…か、帰れる…?」
「ええ。やってほしい事がありますから」
「…やってほしい事…?」
「ええ、やってほしい事です」
「…それは…?」
不安そうに尋ねる魔王軍兵士達にテイルが彼等にやってほしい事の詳細を話し始めた。
「基地に帰り貴方達の上官に…いえ、大魔王フレイル・ランカスターに伝えなさい。フェリアシティ王国女王テイル・フェリアシティが帰ってきたと…!」
「テ、テイル・フェリアシティ…!?」
テイルの言葉に驚愕の声を上げる魔王軍兵士達。
それを無視するようにテイルは話し続ける。
「以前は戦力差を覆す事が出来ずに敗北しましたが次は負けません。この事も伝えなさい。良いですね?」
「あ、ああ…あ…」
恐怖でまともな返事が出来なくなってしまった魔王軍兵士達。
その中で唯一ガノハットだけはテイルの言葉に反論したのである。
「なるほど、テイル・フェリアシティか…。だがその証拠は?口だけでは誰も信用せんぞ?」
「証拠ですか?」
「ああ。名前を出すだけなら誰にでも出来るからな。はっきりした証拠が無ければ信用できん」
「なるほど。ただ映像は…今の私の髪色は偽装工作でオレンジ色になっていますし、そちらは…映像をモニターに表示出来るのですか?」
テイルに尋ねられたガノハットが映像を表示出来るか試してみたが損傷が激しいらしく映像の表示は出来なかった。
部下達の機体も同様でテイルは確たる証拠の示し方を考えてある事の実行に踏み切るのだった。
「わかりました。それではある程度ですが力の解放をしましょう」
「ある程度の…力の解放…?」
「はい」
「何故ある程度なんだ?完全解放では駄目なのか?」
テイルの言葉にガノハットが自身の頭に浮かんだ疑問を口にする。
その疑問にテイルは、
「完全解放だと皆さんが怯えてしまって伝言役になれないと思いましたから…」
と、答えたのである。
この言葉にガノハットが再度反論した。
「我々魔王軍兵士を甘く見ない方が良いぞ。たかが力を解放しただけで怯える事などあり得んからな」
この反論にテイルは、
(今の状況を見る限りとてもそうは思えないのですが…まあ、黙っておきましょうか…)
と、考えてこのまま黙って力の解放を行なうのだった。
「…そうですか。ではガノハットさんが問題無いと言われたのでいきますね?闘気解放!魔力解放!はああぁぁぁ!!!」
こう言ってテイルが自身の力を解き放った瞬間、大気が震え、地面が割れ、猛烈な砂煙が巻き起こり、魔王軍兵士達が今までに感じた事の無い凄まじいプレッシャーが彼等に襲い掛かった。
ちなみにテイルは魔王軍兵士達に殺意は当然ながら、敵意も向けていない。
純粋な力だけで魔王軍兵士達にこれまで経験した事の無い凄まじいプレッシャーを与えたのである。
そしてこのプレッシャーは魔王軍兵士達の想像を遥かに越えていた。
それは甘く見るなと言っていたガノハットも同様で彼は自身の発言を激しく後悔した。
(な、なんだこの圧倒的な力は!?これがテイル・フェリアシティの力なのか!?これを部下達に怯えるなと言うのは無理だ!俺ですら足が震えて動かんのに部下達が動けるわけが無い!)
ガノハットが自身の発言を後悔している中、彼の部下達は全員がテイルのプレッシャーに震え上がっていた。
「ひ、ひいいぃ…」
「あ、ああ、あ…」
「も、もう駄目だ…殺される…」
そんな彼等を見ながらテイルが彼等に話し掛けた。
「だから言ったんですけど…。ちなみにこれで完全フルパワー状態の時の十分の一以下ですからね?まだまだ上がありますからね?」
テイルのこの言葉で魔王軍兵士達の心が完全に折れてしまったのである。
こうして心の折れた魔王軍兵士達にテイルが続けて話し掛ける。
「さてガノハットさん。これでテイル・フェリアシティが帰ってきたと理解して貰えましたか?」
「は、はい、理解、しま、した…」
「では早く帰って大魔王フレイルに伝えて下さい。テイル・フェリアシティが帰ってきた、と。次は負けない、と。お願いしますね?」
そう言ってテイルは解放していた闘気と魔力を霧散させたのである。
そして闘気と魔力を霧散させたと同時に魔王軍兵士達を襲っていたプレッシャーも消えたのである。
同時にテイルは彼等に掛けていた封魔陣も解除した。
これでようやく魔王軍兵士達は全員が自由に動けるようになったのだった。
「…あ、で、では我々は、これで、帰れる、と…?」
自由に動けるようになったとはいえ先程までのプレッシャーの影響ですらすらと話せないガノハットがテイルに確認する。
「ええ。くれぐれも宜しくお伝え下さい。それではさようなら。ご機嫌よろしゅう」
こう言ってテイル搭乗のワイバーンが魔王軍兵士達に手を振った。
これを受けて魔王軍兵士達は自身達が搭乗しているマシンアーマノイドの胴体部分から飛び降りると飛翔魔法を発動させて自分達が出撃してきた基地に向かって一目散に飛び帰っていったのである。
その様子を見ながらテイルは心の中で呟いた。
(これで良し。後は大魔王フレイルがどこまで食い付いてくるか、ですね…)
その後テイルはワイバーンと共に元の格納庫へと戻って行くのだった。