《第一防衛ラインの惨状》
全速力でポーランド王宮を出ていったテイルは、仲間達が王宮を出てくるのを待つこともせずにウクライナに向けて飛び立っていった。
そんなテイルを慌てて追い掛けたアーシア達もウクライナに向けて飛び立つと、こちらも全速力でテイルのあとを追っていく。
そうしてウクライナ国内に入っていったテイルとアーシア達は、それぞれの持っている情報の違いからまったく異なる目的地に向かって飛ぶことになる。
テイルはウクライナ国境にある第一防衛ラインに向かう。
その一方でジャンが同行しているためにウクライナの各防衛ラインがどこに設定されているかを正確に把握出来ているアーシア達は、第二防衛ラインに向けて飛んでいくという違いがあった。
そうして思いがけず別行動をすることになったテイルとアーシア達。
その別行動で先に防衛ラインに到着したのはテイルだった。
テイルはボロボロにされた第一防衛ラインに降り立っていくと、周囲の状況を細かく観察して歩き、負傷者を見つけてはフルヒーリングで治療して詳しい話を聞いていくことにしていく。
「……ふむぅ、あれが防衛ラインですか……想像以上にボロボロにされていますね……あれでは生き残った方を探すのも苦労しそうですねぇ……よっと。すみませーん!! 誰か、私の声に答えられる方はいますかー⁉」
「……」
「……駄目だな、全然聞こえない……匂いもこれだけ血臭と金属臭がひどいと嗅覚もほとんど役に立たないからなぁ……」
「……う、うぅ……」
「……うん⁉ 今、近くで人の声がしたような……⁉ すみません!! 誰かいますか⁉」
「……こ、ここ……だ……ここの……瓦礫の下だ……ここに……三人……いる……」
「瓦礫の下、ですか。わかりました、すぐに助けます。あと少しの辛抱ですよ!」
「う、うぅ……」
「……これで、よし。さあ次は治療ですね。ネオヒューマン能力発動! フルヒーリング!」
「……お? お、おお⁉ 治った! あれだけの怪我が、一瞬で治った!」
「こっちもだ! 入院は絶対、全治一ヶ月は覚悟していた怪我が一瞬で……」
「……あ、あんた……すげえな……」
「いえいえ、困った時はお互い様ですから、気にしないでもらって結構ですよ?」
「いえ、しかし……命の恩人に対して、気にしないなどということは……」
「ふむ、そうですか……それでは教えてほしいことがあるんですけど、この防衛ラインを突破したのは共産軍の連合軍ですか?」
「いや、共産軍だが連合軍じゃあなかった……」
「うん? ということは単独軍ですか? それはまた、ずいぶんと思いきったことを……」
ウクライナ軍兵士の言葉を聞いたテイルは、思案顔で呟いていった。
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