《ジャンの身分証》
顔を見合わせたアーシア達はあるひとりを除いた全員が力強く頷き合い、そのあるひとりを指差していった。
「身分証っていったらこいつでしょ?」
「アーシアと同じ意見なのは業腹じゃが、わらわもこやつが良いと思うぞ、テイルや」
「私はマスター・リューネルンの言葉に従います」
「私も皆と同じ意見で、この方の身分証を提示するのが良いと思うわ、テイル」
「皆がそう言うなら君の身分証を提示するのが良いんだろう、ジャン」
アーシア達が選んだ相手を指を指しながらテイルに推薦していき、皆の意見を聞いたジェーンが最後にその人物、ジャンの肩をポンと叩き、その肩に手を置いていく。
これに選ばれたジャンが少しだけ嫌そうな顔を見せ、テイルはジャンを推薦した時のアーシア達のような妙にキレイな笑顔でジャンに対してポーランド軍兵士に身分証を提示するように頼んでいった。
「……俺かよ……」
「そうみたいだね、ジャン。そんなわけだから身分証の提示、お願いね?」
「……いつも通りの騒動になりそうだから抵抗感が強いんだよなぁ……まあ提示するけど……」
「ふふ、お願いね?」
「はあ、やれやれ……」
嫌そうな顔をしながらもテイルの言葉に従って兵士達に自身の身分証を提示することに了解したジャン。
そのジャンを朗らかな笑顔で送り出していくテイルに、その言葉に対して軽い溜め息を吐きながら兵士達に自身の身分証を提示するために近付いていくジャン。
そうして兵士達の前に立ったジャンが身分証を提示していった。
「ほら、身分証だ」
「……確認します」
若干の上から目線での身分証の提示に兵士達は表情には出さなかったものの機嫌を悪くしていく。
しかし提示された身分証を確認した次の瞬間、兵士達は土下座するほどの勢いでジャンに頭を下げていった。
「……うん⁉」
「ア、アメリカ帝国第二皇子⁉」
「あ、あなた様が⁉」
「……はあ……ああ、そうだ。俺はアメリカ帝国第二皇子、ジャン・ケネディだ」
「し、失礼いたしました!!」
「いや、良いさ。普通に名乗らなかったこちらが悪いのだから」
「で、ですが……」
「あの、少しよろしいでしょうか?」
ジャンに対してこれまでの言動を振り返り、恐縮している兵士達に気にしていないと答えているジャンの元に、テイルがひょっこりと顔を出して言葉を掛けていく。
「うん? あなたは?」
「ああ、ジャン殿下の御付きのものです。お気になさらず」
「そうですか。それでなんでしょうか?」
「もしジャン殿下への言動を申し訳なく思っているのなら、このまま我々を王宮のなかに入れてはいただけないでしょうか?」
この言葉を聞いた兵士達は、テイル達から少し離れてから話し合いを始めていった。
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