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【電子書籍化】多元世界戦記 ~テイル奇譚~   作者: 篠原2
プロローグ 復活と脱出
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激突、一対八

「いいか、相手がただの自信過剰な小娘か本当の実力者かはまだわからん。わからんからこそ絶対に油断するな。わかったな?」


「「「「はっ!!」」」」


「よし、まずは様子見、という事では無いが三方向からの包囲攻撃を仕掛ける。左右から二機ずつ、正面から四機、ひとまずこれで相手がどう動くか確かめる。いいな?」


「「「「はい!」」」」


「よし、各機散開!いくぞ!」


「「「「了解しました!」」」」


以上の作戦会議を終わらせた魔王軍部隊は作戦通りにワイバーンの正面から四機、左右から二機ずつの包囲攻撃の為にそれぞれに別れ、ワイバーンに向けて前進を始めたのである。

魔王軍部隊のこの行動を見たテイルは敵部隊の行動予測とそれへの対処の脳内会議を始めたのである。


(三部隊に別れましたか…。予想でしかありませんが恐らくは鶴翼陣での包囲攻撃でしょうね…。そう考えるならこちらの一手は魔導シールドを最大展開での中央突破でしょうか…。その後は敵部隊を分断しつつ各個撃破ですね…)


との結論で脳内会議を終わらせたテイルは早速行動を起こすのだった。


「では行きましょうかワイバーン。レーザーソード起動!浮遊魔法発動!スラスター及びバーニア最大出力起動!参ります!」


テイルが自身の行動を確認する為の言葉と動きに合わせてワイバーンが左手にレーザーソードを構えて刀身を発動させ、浮遊魔法によって空中に浮かび同時に最大出力で起動させたスラスターとバーニアの力で自身達の正面から急速接近してきていた魔王軍部隊四機に向けてテイルとワイバーンの方からも急速接近を開始した。


「何だ!?」


「突っ込んで来る!?」


「慌てるな!各機迎撃!」


「「「は、はい!」」」


突撃してくるワイバーンに対して迎撃行動を取る魔王軍部隊四機。

そして彼等の迎撃行動にテイルも即座に反応した。


「回避行動を行ないつつ魔導シールド最大展開!このまま参ります!」


こうして回避出来る攻撃は回避し、回避しきれなかった攻撃は魔導シールドで防ぎつつ敵部隊への接近を継続するテイルとワイバーン。


「なっ!?隊長、当たりません!」


「攻撃が…弾かれる!?魔導シールドか…!?」


「た、隊長!どうするんですか!?」


「ええい、慌てるな!攻撃継続!そして…聞こえるか、左右の四機!」


「「「「はい!」」」」


「出来る限り急いで包囲を完成させろ!このままでは下手をすると包囲完成前に突破される!」


「「「「了解です!」」」」


ガノハットの指示でワイバーンへの接近速度を上げる左右の部隊。

しかしワイバーンはそれを上回る速度と回避技術で正面の四機に突撃していく。


「このっ…止まれってんだよ!」


「クソが!!当てにくい上に弾かれる!」


「隊長…!」


「ええい、構うな!撃ち続けろ!通常弾だけじゃなく攻撃魔法も撃ちまくれ!」


「「「は、はい!」」」


こうして通常弾での攻撃に加えて魔法での攻撃も始めた魔王軍部隊四機だったがテイルとワイバーンの方は通常弾だけでの攻撃の時と同様の回避と魔導シールドでの防御のままで通常弾に魔法を組み合わせての攻撃にも対応してみせた。

そしてその状態を維持したワイバーンが魔王軍部隊四機まで残り数百メートルとなった所でテイルが呟いた。


「さて、そろそろこちらも仕掛けましょうか…」


そう呟くとテイルはワイバーンの右手に装備しているレーザーライフルの目標を前方の四機の内の中央の二機に定めると目標の二機が左右に離れていくように計算しながらレーザーライフルを連射し始めたのである。


「くっ!隊長!」


「怯むな!我々が隊列を崩せば奴に突破される!」


「ですが…!」


「怯むなと言った!それに敵機のレーザーライフルの威力は恐れるような物では無い!隊列は維持、いいな!?」


「…はい…!」


こうして中央の二機は隊列の維持を継続するのだった。

これを見たテイルは、


「レーザーライフルが簡単に防がれている…?三年前の最新鋭機のレーザーライフルがもうそのような事になりますか…凄いですね…」


と、三年の間に起こった技術の進歩に感嘆の声を上げた。

そしてレーザーライフルの連射を防ぎながら前進してくる魔王軍部隊に対してテイルはレーザーライフルの連射を続けながら大きく息を吸い込んで意識を集中させ、


「仕方がありませんね、火力が足りない所は…私の魔法で…!」


と、言い、続けて、


「いきます、ファイアボール!!」


と、叫んだ。

次の瞬間、レーザーライフルの連射に加えて対マシンアーマノイド用に直径約1メートルの火球が複数出現、レーザーライフルの連射を続けていた魔王軍部隊の二機に向かって放たれたのである。


「!…隊長!」


「慌てるな、しっかり防御しつつ前進だ!」


「は、はい!」


こう言って前進を続ける魔王軍部隊。

そしてテイルの放ったファイアボールが着弾、それも防いだ二機であったがその感想はレーザーライフルの時とは全く違う物だった。

その反応は、


「な、何だこの威力は!?」


「た、隊長!!」


「くっ!いいか、ある程度ならレーザーライフルは直撃しても構わん!だがファイアボールは絶対に直撃させるな!わかったな!?」


「は、はい!」


と、いうものであった。

そしてこの二機がファイアボール回避の為に、駄目だとわかっていても少しずつ左右に離れてしまった事で正面の隊列に穴が出来てしまった。

そしてその穴にワイバーンが全速力で突っ込んだのである。


「行けぇ---!!」


「し、しまった!!」


「隊長!!」


「くうぅ、全機急速反転!奴を追え!!」


「「「「「了解!!」」」」」


レーザーライフルの連射とファイアボールの複数弾で出来た隊列の綻びを全速力で突破したテイルとワイバーン。

そして隊列を突破され通り過ぎたワイバーンへの急速反転を指示したのだがそれに手間取る魔王軍正面部隊四機にテイルは背を向けたまま、


「追尾能力を付与して…ファイアボール!!」


と、突破した四機に足止めの為に追尾機能のあるファイアボールを発射したのだった。

そして反転を終わらせてワイバーンの追撃を始めようとした四機にテイルの放ったファイアボールが直撃したのである。


「うおお!?」


「ぐうぅ!!」


「ええい、何だこのレーザーライフルとの威力の違いは!?」


こうして正面にいた四機の足止めをしたテイルは、


「とりあえずこれで包囲攻撃は食い止めましたね。ここからはこちらの番です!」


と、言って反撃開始の宣言をしたのである。

その最初のターゲットに選んだのは、


「気配及び魔力探知……いた。まずは貴方からです、女の敵!」


と、ある意味では当然の人(?)選となったのである。

そしてターゲットの位置を割り出したテイルは彼がいる最初に別れた左右二機ずつの部隊の内の左方面の二機に向けて移動し始めたのだった。

そしてターゲットにされた女の敵ともう一機はワイバーンが自分達の方向に向かって来るのを見て、なんとなくだがまずは自分達と戦おうとしていると判断、ガノハットの指示を待たずに二機揃ってワイバーンに突撃していったのである。

この二機の様子を見たテイルは、


「味方と合流せずに二機だけで来るみたいですね…」


と、即座に判断し、続けて、


「各個撃破が基本戦術のこちらとしてはありがたい状況なんですけどあちらは大丈夫なんでしょうか…?」


と、敵部隊を心配する発言をしたのである。

それでもすぐに気を取り直して、


「まあ、こちらは彼等の心配を出来るだけの余裕は無いですからこのまま各個撃破させてもらいましょう」


と、言ってターゲットの二機への接近速度を引き上げた。

そしてターゲットの二機とワイバーン双方が射程距離に入った所で互いに牽制射撃を開始、魔王軍部隊の二機は通常弾と攻撃魔法での同時射撃、ワイバーンの方はレーザーライフルのみでの射撃、という違いはあったが双方共に牽制射撃を行ないながら距離を詰めていった。


「あの女…!さっさと墜ちろってんだ!!色々楽しめねぇだろうが!!」


「………」


理不尽な事を叫びながら距離を詰める女の敵と何も言わずに後に続くもう一機。

一方のテイルは、


「もう少しで近接戦闘が可能な距離になりますね。先程は女の敵から戦闘不能にするつもりでしたが位置が悪いですね。予定変更です。まずは後続機を戦闘不能にしてその次に女の敵を沈めます!」


と、宣言してテイルの方も魔王軍部隊二機へと接近を継続、遂に双方が近接戦闘が可能な距離まで近付いたのである。


「おらぁ!!墜ちろ女ぁ!!」


最初に手を出したのは女の敵だった。

ある程度距離が近付いた所で手にしていたレーザーライフルからレーザーハンドアックスに持ち替えていた女の敵の搭乗しているマシンアーマノイドが充分に接近してきていたワイバーンに向けて持ち替えたレーザーハンドアックスを振り下ろしたのである。


(当たる!)


女の敵がそう思った瞬間、直撃コースに入っていたワイバーンが女の敵が搭乗しているマシンアーマノイドがレーザーハンドアックスを持っていた右手とは逆の左手方向にバレルロールをしながら急速回避、空振りさせたのである。


「……は?」


女の敵が間抜けな声を上げた次の瞬間、急速回避の反動を利用した強烈なかかと落としが彼の乗るマシンアーマノイドに炸裂したのである。


「んなっ!?」


その一撃で吹き飛ばされていく女の敵は気にもしないで後続機へと襲い掛かるワイバーン。

そのワイバーンに対し持っているレーザーライフルを乱射しながらレーザーハンドアックスを構える後続機。

一方のワイバーンは放たれるレーザーライフルを避けたり魔導シールドで弾きながら後続機に接近、本格的な近接戦闘へと突入したのである。


「おおぉ!!」


先程のワイバーンの横方向への回避行動を見ていた後続機は持っているレーザーハンドアックスをワイバーンが横方向に避けられないように横薙ぎに薙ぎ払ったのである。


(よし、これなら!)


当たる、後続機のパイロットがそう考えた時、目の前のワイバーンは信じがたい動きをしてみせた。

ワイバーンはレーザーハンドアックスが直撃する直前に急速接近していた機体を急停止させて更に瞬時に急速後退、レーザーハンドアックスの一撃を避けると続けて急加速、左手のレーザーソードを振りかぶると斬撃態勢に入ったのである。


「このっ…!させるか!」


そう叫びながらレーザーライフルを放つ後続機。

放たれたレーザーライフルを瞬時の急降下で回避しながら距離を詰めるワイバーン。

そしてレーザーソードの有効距離になった所でテイルが叫ぶ。


「まずは両脚!いきます!!」


気合い一閃、すれ違い様に後続機の両脚を切り落とすとそのまま後続機の背後を取り左腕を切断した。


「なっ…!?」


あっという間に両脚と左腕を切断された後続機のパイロットが驚愕の声を上げる中、テイルは続けて頭部と右腕も切断し胴体部分だけになった後続機に、


「これで一機目!落ちなさい!!」


と、叫ぶと胴体部分だけの後続機を地面に向けて蹴り落としたのである。

そして蹴り落とした後続機が地表に落下していくのをチラリと見たテイルはここまでの動きである感想を抱くのだった。


(よし、新型のモーションコントロールシステム、ようやく慣れてきましたね。ここからが本番です!)


こうして更に気合いを入れたテイルが次に撃墜するターゲットの名前を叫ぶのだった。


「続いて二機目!いきますよ、女の敵!!」


こう叫んだテイルは当初のターゲットだった女の敵に向かって急速接近、一方の女の敵も搭乗しているマシンアーマノイドに搭載されているもう一つのレーザーハンドアックスを装備、二刀流の形でワイバーンに向かっていった。

こうして近付いていって互いのレーザーソードとレーザーハンドアックスの届く距離まで近付いたテイルと女の敵の第二ラウンドのゴングが鳴る。


「今度こそぉ…墜ちろ女ぁ!!!」


そう叫びながらレーザーハンドアックスをワイバーンに向けて振り回す女の敵が搭乗するマシンアーマノイド。

そして振り回されるレーザーハンドアックスを避けながらその中の一撃をレーザーソードで受け止めたワイバーン。

そして鍔迫り合いが始まったこの時、女の敵とテイルはそれぞれ全く逆の感想を持ったのである。

女の敵の方は、


(押せる…!?こっちの方がパワーが上なのか!?)


と、いうものでありテイルの方は、


(押し負けますか…機体の出力は向こうが上の様ですね…)


と、いうものであった。

これに加えてテイルは、


(この様子だとその他のマシンスペックも軒並み負けてそうですね…。三年間…その間の技術の進歩は三年前の最新鋭機をあっという間に旧型機にしてしまったみたいですね…)


と、いう感想も浮かんでいた。

一方、自身の機体の方がパワーが上だとわかった女の敵はそのパワー差を活かしてワイバーンを押し返し始めたのである。


「へへっ、さっきまではどうなるかと思ってたけどよぉ、これならなんとかなりそうだなぁ?」


「………」


「へへへっ、さっさと終わらせて楽しもうぜぇ?」


女の敵はこう言いながらもう一方のレーザーハンドアックスをワイバーンのレーザーソードに押し付け、ワイバーンへの圧力を増大させてきたのである。


「…このままではまずいですねぇ…。……う?背後から気配が…」


そう言ったテイルが女の敵の二刀流レーザーハンドアックスを受け止めながら背後の様子を伺うとそこにはファイアボールを直撃させて足止めしていた四機と右方向に位置していた二機が合流してワイバーンの背後に迫ってきていたのである。


「この状況で挟み撃ちはまずいですね…さてどうするか…」


テイルがそう言っている間にも女の敵はワイバーンを押していき、背後からは合流した六機が迫ってくる。

この状況がテイルに一つの決断を下させた。


「仕方ありませんね、少し解放しましょうか」


そう言ったテイルが背後から迫ってくる六機とワイバーンの間に狙いを定めて、


「いきます、最上級攻撃魔法の四、ギガストーム!!」


と、叫んでとある魔法を発動させたのである。

そして次の瞬間、テイルが目標地点に定めた場所に直径約三百メートル、高さ約八百メートルの巨大竜巻が出現したのである。


「は!?」


「これは!?」


「ギ、ギガストーム…か!?」


「あの女…ギガストームを使えたのか…!?」


この巨大竜巻、ギガストームの影響でワイバーンの背後から攻撃をしようとしていた六機はワイバーンと女の敵の二機と完全に分断させられてしまったのである。


「とりあえずこれで背後の六機の再度の足止めは完了しました。次は…前方の女の敵…ですね…」


そう言ったテイルが目の前の女の敵を見詰め、次に行う事を告げるのだった。


「ネオヒューマン能力発動…無機物スペック限界突破!!」


次の瞬間、ワイバーンのカメラアイが輝いた。

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