《助けた理由》
テイルによる事情聴取が一段落したところで、今度はブラストがテイルに質問をし始める。
「しかしテイル陛下、陛下はなぜ俺を助けてくれたのですか?」
「うん? なぜって?」
「……いえ、わざわざ妹君をあの相手にぶつけて隙を作るような真似をしなければ助けにこれなかったでしょう? そこまでしてなぜ俺を助けたのですか?」
このようにブラストから尋ねられたテイルは、少しだけ悪い笑みを浮かべながらブラストに返答していく。
「そのことですか。そうですねぇ、ライトなら誰にぶつけても互角以上に戦ってくれると信じていますからフィフにぶつけました。それからあなたを助けにきた理由ですが、それは……」
「……それは……?」
「それはまだ私がブラスト将軍から丁寧な言葉遣いでの会話しかしていないからですね」
「……へ?」
テイルの口から発せられた予想外の理由を聞いたブラストが変な声をあげるも、テイルは更に追撃を行っていった。
「へ? じゃありません。戦闘開始前にも話しましたが、ケイン閣下は私に対しても部下と話すように会話をしてくれましたよ?」
「いえ、あれはケインの奴が異常なだけであって……」
「ブラスト将軍から見れば異常なことなのかもしれませんが、私にとってみれば特別扱いせずにいてくれると嬉しく思ったものです」
「む、むぅ……」
「ですからブラスト将軍の口からもケイン閣下と同じように、特別扱いしない言葉遣いをしてほしいと思っています」
「うぐ……」
「もちろん今すぐとは言いません。ですがそうなるとここでブラスト将軍に死んでしまうとこの願いが一生叶わないことになります。私がブラスト将軍を助けた理由はこれになりますね」
ここまでを悪戯っぽい笑顔で話し終えたテイルに、ブラストが半分呆然としながら声を出す。
「……つまり、俺を助けた理由は俺のためではなく、テイル陛下御自身のためだった、と……?」
「そういうことです。ついでにブラスト将軍に恩を売れますし、ドイツ全体からは手放しで感謝される。私にとってはこれ以上ないぐらいお得な理由だったんですよ」
「……陛下という方は……まったく……」
テイルの話を最後まで聞いたブラストは呆れたようにそう言うと、観念したように笑っていく。
そんなブラストを見てテイルも笑うなか、アーシア達はフィフとぶつかっているライトを見てその感想を話し合っていた。
「……ライトがフィフとぶつかってからまったく動きがないんだけど……」
「……どうやら二人共互角らしいな……」
「互いに決め手がなくて決着をつけられない状況、ってこと?」
「恐らくな……」
アーシア達はこのような会話をしながらライトとフィフの激突を見つめていた。
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