《フィフとテイル》
ようやく謎の少女の名前を知ったテイルは、ノータイムでリューネルンに質問していった。
「フィフ、か……やれやれ、ようやく名前を喋ったか……リュー?」
「む? なんじゃ?」
「リューはフィフって名前の魔族を聞いたことある?」
「いや、今初めて聞いた」
「そうなるとフィフってのは最近出てきた魔族ってこと?」
「恐らくはそうじゃろうな」
「なるほど、そうなると情報収集は無理っぽいかな?」
「無理とは言わんじゃろうが、時間は掛かるじゃろうなぁ……」
「そうか……できれば今すぐに情報が欲しかったところだけど、無茶を言うわけにはいかないからしばらく待つことにするよ」
「そうしてくれると助かるのう」
残念そうにしながらも無理をして情報を集めろと言わなかったテイルに感謝の言葉を伝えたリューネルンが、続けてテイルに声を掛ける。
「……ところでテイルや、少し良いかの?」
「ん? どうしたの、リュー?」
「わらわとの確認作業はここまでにしておかんと、フィフの奴が暴れ回るぞ?」
「む……」
リューネルンの指摘を受けたテイルがフィフに目を向け直すと、フィフは暇だったのか立ったまま居眠りをしていた。
「……リュー、寝てるけど?」
「寝ておるのぅ……厄介そうじゃから、今のうちに逃げぬか?」
「……いや、それはできない」
「なぜじゃ?」
「ブラスト将軍達の安否確認ができていない。帰るにしても安否確認だけはしておかないと」
「ふむぅ、そうか。あいわかった。それではテイルや、すぐに安否確認を行おうぞ」
「ええ」
リューネルンの言葉に答えたテイルができるだけ静かにアジトのなかに向かおう移動を開始した瞬間、フィフが目を開けてテイルに話し掛けてくる。
「アジトに行くの? 行ってもなにもないよ? 私がすべてを焼き尽くしたからね」
「……起きてたか」
「それはどっちでも良いでしょ? それよりもさぁ、早く戦おうよ。戦闘民族なのに雑魚ばっかりと戦わされてきたからちょっと戦いにうんざりしてきてたんだよね」
「……ふぅん……そう……」
フィフの発言を聞いたテイルはなるべく無関心を装いながらアジトの入り口に目を向け、フィフの隙をついてアジトに突入するタイミングを窺っていた。
そんな時、アジトのなかからボロボロになった人間らしき動く物体がよろよろとしながらアジトの外に逃げ出してくる。
「あっ、誰か……いや、あれ人型生物だよね? とりあえずそれが出てきた!」
「……誰? っていうか、なに?」
「……う、うぅ……テイル……陛下……」
「その声!! ブラスト将軍か!!」
アジトのなかから逃げ出してきた人型生物は、ブラスト将軍であった。
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