《テイル対身代わり人形 その三》
テイルのハンマーパンチは例の敵、身代わり人形に直撃する、アーシア達やテイル本人がそう思った次の瞬間、身代わり人形はこれ以上はないという絶妙なタイミングでテイルと車の間からすり抜けた。
「……」
「……え? あっ!?」
「うえ!? あいつ避けた!?」
目標の身代わり人形がいなくなってしまったが、テイルはすでに振り下ろしている自身の拳を止めることができず、直前まで身代わり人形がいた車に全力のハンマーパンチを食らわせる結果になってしまう。
「あっ……」
「……うわ、車が大変なことに……」
「……多分プレス機で潰してもあんなにぺしゃんこにはならんぞ……」
アーシア達がそのように話して表現した車は、テイルのハンマーパンチによって高さ10センチにまで圧縮されていた。
こうしてアーシア達がドン引いているなか、テイルのハンマーパンチを避けた身代わり人形は、一度離れたテイルに再度近付いていき、テイルに組み付いていく。
「……」
「ちっ、こいつまた掴み掛かってきた!」
「ちょっとテイル、これ以上町の真ん中で暴れるのは……!」
「そうです、マスターテイル」
「そういう文句はこいつに言ってほしいね!」
アーシア達の苦情にそう答えたテイルは、身代わり人形の腹部に膝蹴りを当てて身代わり人形との距離を数センチ作ると、身代わり人形の腹部に今度は前蹴りを当てて身代わり人形を吹き飛ばす。
そうしてテイルはアーシア達に話し掛けると、戦闘場所を変更するために飛び立った。
「……!」
「よし、これでいける!」
「……!!」
「よっし、これで良いんでしょ!?」
「良いんでしょってなにが!?」
「これで今のうちに戦闘場所を変えれば良いんでしょ!?」
「……ああ、そういうこと……」
「そうよ! それじゃ行くね! 追いかけてきてよ!?」
「あっ! ちょっ……! ……行っちゃったよ……」
新たな戦闘場所を求めて飛び立ったテイルを見つめるアーシア達に、吹き飛ばされた身代わり人形を見ていたジャンが声を掛け、身代わり人形をみせていく。
「……あっ、おい見ろよ!」
「えっ?」
「あいつがテイルを追いかけて走り出し……って速いっ!?」
「……時速500キロぐらいは出てるかな、あれは……」
テイルを追いかけて凄まじい速度で駆け出した身代わり人形を眺めたアーシア達も、周囲の状況を見ていく。
「……二人とも行っちゃったな……」
「それより俺達も行かないと、すごい騒ぎになってきたぞ」
「そうだね、行こうか」
「ああ!」
こうしてアーシア達もテイルと身代わりのあとを追って飛んでいった。
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