《テイル対身代わり人形 その二》
テイル達が見守る前で身代わり人形が立ち上がる。
その様子にただ見守っていただけだったテイル達がざわつく。
「……」
「……ん? あいつ、あの起き上がり方は……」
「て、手を使ってない!?」
「……脚力と背筋力だけで起き上がってる……」
「……ねぇテイル、もしかしてあいつ……人間じゃないとか……?」
「……人間どころか生物かどうかも怪しい感じがしてきたな……」
「……それはどうして?」
「ひとつは今見たように起き上がり方がおかしい。それに魔力反応も気配も一切感じない。生物なら必ずどちらかは感知できる。それがどちらも感知できないということは……」
「生物ではない、か。なるほどな」
テイル達がこのように話して身代わり人形の正体について議論しているなか、完全に立ち上がった身代わり人形が再度テイル目掛けて突撃してきた。
この身代わり人形の突撃に、アーシア達と議論を行っていたテイルはよそ見をしていたこともあって反応が遅れてしまう。
「……」
「……え? あっ、テイル、後ろ!」
「へ? あっ!?」
「……」
「テイル!!」
「……くおっ……こ、の……! ほらぁ!!」
不意を突かれたテイルではあったが、突撃してきた身代わり人形の力を上手く利用して身代わり人形の体を掴むと、そのまま近くに駐車してあった車に身代わり人形を全力で押し付けて身代わり人形の動きを封じ込めていった。
「おお、上手い! 良い感じにあいつの動きを止めていった!」
「……ただ……」
「うん? どうしたの、フェイト? なにか問題でもある?」
「いえ、テイルにはなにも問題はありません。ただ、あの車の持ち主は泣くだろうなぁ、って思って……」
「……いい、フェイト? 私達はなにも見ていないし、なにも聞いていない。良いわね?」
「……はい」
フェイトが車の持ち主の心配をするなか、押さえ付けられている身代わり人形もテイル打倒の動きを加速させていく。
「……」
「……え? ……こいつ……私より力が……?」
「……ん? テイル?」
「……」
「うげっ!? つあっ!? ぐおっ!?」
テイルによって車に押さえ付けられていた身代わり人形は、押さえ付けているテイルの両腕を掴み返しながら少しずつテイルの体を押し戻すと、無防備になっているテイルに頭突きを食らわせてテイルの態勢を崩し、テイルの両腕を振り払うとテイルの顔面に強烈な左右フックを繰り出す。
「……」
「……こんの野郎が!! 死ねえぇ!!!!」
まったく予期せぬ三発の攻撃でキレたテイルは、まだ自身と車の間にいる身代わり人形に向けて呪詛の雄叫びを放ちながら、全力のハンマーパンチを放っていった。
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