《テイルのロシア視察》
発進していく身代わり人形を見届けたヴォロシンスキー達は、発信器の調子を確かめるために発信器の放っている信号の確認を始めていった。
「行ったか……?」
「そのようですな」
「……本当に大丈夫なんでしょうね、フィフ殿?」
「多分ね~」
「おい!」
「……トーリア殿、ここはひとまず落ち着いて発信器の様子を確認してみましょう」
「……ふぅ、そうですな、そうしましょう」
フィフの言動に怒りを覚えたヴォロシンスキー達だったが、その怒りをなんとか飲み込むと発信器の信号を確認していく。
「……どうですかな、トーリア殿?」
「待ってくれ、もう少しで……おお出た!」
「やりましたね、トーリア殿。それで身代わり人形は今どこを飛んでいますか?」
「えぇと、これは……う? これは……」
「うん? どうしました、トーリア殿?」
「おいフィフ、あの身代わり人形、壊れているんじゃないのか?」
「えぇ? なんでよ?」
「発信器の信号がロシア国内に留まっているからだよ!!」
「……え?」
「……ロシア国内に?」
「これを見てみろ」
自身の発言に疑いの目を向けてくるヴォロシンスキーとフィフに、トーリアが発信器の信号の位置を見せてくる。
そしてこれを確認したフィフが身代わり人形周辺の魔力反応を慎重に調べていく。
「……本当だ、ロシア国内にある……」
「……ちょっと待って、今調べるから」
「……急げよ」
「うるさいな……ああ、結果が出たよ」
「ほう、それで?」
「結論、テイルは今ロシア国内にいる」
フィフの発言にヴォロシンスキー達が驚愕の声を上げ、フィフに詰め寄り質問を行う。
「なにぃ!?」
「ロシアにきているだと!?」
「奴ら敵情視察をするつもりか!!」
「そこまでは私にもわからないよ。それでどうするの? 身代わり人形はこのままで良いの?」
「……どうする?」
「……このまま様子を見ましょう」
「……良いのか?」
「もうどうしようもないですからね。周辺に住んでいる方達が無事なのを祈るだけです」
「そうか……」
こうしてヴォロシンスキー達は周辺住民達のために祈りを捧げていった。
その一方ですでにロシア入りをしていたテイル達は、敵情視察という名のロシア観光を行っていた。
「ほえ~、やっぱりアメリカとは全然違うねぇ」
「確かにアメリカでは見たことのない物ばっかり」
「こうなってくると色々買い物をしてから帰りたいね」
「……おーいお前ら、我々は観光にきているんじゃなくて、敵情視察にきているんだぞ?」
「それはわかっているよ。でもロシア国内で売られている商品を調べることも大事な敵情視察でしょ?」
「確かにそうだが……やれやれだな、まったく……」
テイルの返答に、ジャンは呆れながらも無理矢理納得させられてしまう。
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