《やってきた問題児》
この日、イグナイエル達は期待半分、不安半分の気持ちで一日を過ごしていた。
というのも、フレイルから連絡があった、問題児がロシアにやってくるのが今日だからであった。
「……来ないな」
「……来ませんね……」
「本当に今日やってくるのでしょうか?」
「フレイルはそう話していたが……」
「その問題児本人がまっすぐロシアに来るかどうかまではわからない、ということでしょうか?」
「……どうやらそのようだな」
「やれやれですな」
「おまけに見た目の特徴もなにひとつ教えてもらえませんでしたからな……」
「あえばわかる、などそんな雑な話をするとあっという間に通信を終わらせましたからね……」
「まったく……雑なのは会談の最中の態度ぐらいにしてほしいものだ」
「まったくですな」
イグナイエル達がフレイルの悪口を話し合っていると、イグナイエル達の背後にゲートが現れる。
この現れたゲートをイグナイエル達が見ていると、ゲートの中からひとりの少女がゲートの外、ロシアの大地に降り立つ。
「ほ~、ここがロシアか。気になるものがなにもないところだね」
「……え?」
「……まさかこれが……」
「最強の援軍……でしょうか?」
「……お、おそらくは……」
現れた少女に困惑するイグナイエル達は、そのような会話をしながら少女を見つめる。
そうしてイグナイエル達が少女を見つめていると、少女がイグナイエル達の姿を見つけて動きを止め、声を掛けてきた。
「お、人間がいる。ってことはあんたらの誰かがイグナイエルって奴?」
「イ、イグナイエルって奴……」
「あれ? いないの? じゃあ全然関係ない奴ら?」
「……い、いや、私がイグナイエルだ。君がフレイル陛下が話していた援軍かな?」
「そうだよぉ。なんか面白そうなのがいるって聞いて来たんだけど、本当にそんな奴いるの?」
「ああ、いるぞ……それよりひとつ聞きたいことがあるんだが、聞いてもいいかな?」
「うん? なに?」
「君の名前はなんというのかな? フレイル陛下からも教えてもらっていないからわからないのだよ」
自由過ぎる少女の言動に圧倒されながらも、少女に名前を尋ねたイグナイエル。
そんなイグナイエルやロシア帝国関係者一同に対して、少女が面倒くさそうに名前を答える。
「え、自己紹介しろって? めんどいな……」
「そこをなんとか頼むよ。そうでないと我々はいつまでも君のことを君と呼ばなければいけなくなる」
「……ちっ、仕方ねぇなぁ……まあいいや、私はフィフっていうんだ。これで良いだろ?」
「フィフか。わかった、これからよろしく頼むよ、フィフ」
こうして魔界からの援軍、フィフにイグナイエルは微笑み掛けた。
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