《魔王軍との交渉 その五》
イグナイエルはフレイルの微笑みに警戒しながら、フレイルの発言を詳しく聞いてみることにした。
「満足する相手と戦えなかった時だけだと言われましても……こちらとしてはどの程度の相手と戦ってもらえば良いのかがわからないのですが?」
「心配することはない。あやつが暴れたいと言ってきた時にはテイルのぶつけてやれば良いだけの話だからな」
「……テイルにぶつける? ということはテイルと同等の化け物だということですか?」
「まあそうなる。これで良いのではないか? ロシア側、いや、共産同盟側にしてみても、我々の側にしてみても」
「……わかりました。まだ不安はありますが、今はそういうことにしておきましょう」
こう言ってイグナイエルはフレイルの提案を受け入れる。
このイグナイエルの決定に、フレイルは手を叩いて喜びながら会談が成功に終わったことを口にした。
「そうですか! いや、それはありがたい! これでこの会談は終わりなのですかな? それともまだなにか話し合わなければならない事案がありますかな?」
「今はとりあえずないですね。頭を悩ませていたのがテイルにどう対処すれば良いのか、これだけでしたからね」
「ふむ、そうですか。それではお互いに忙しい身の上、この辺りで会談は終わらせますか」
「……そうですね、そうしましょう。今日は誠にありがとうございました、フレイル陛下」
「いや、こちらこそ、ありがとうございました、イグナイエル皇帝」
こう声を掛け合い、握手をして会談を終わらせたイグナイエルとフレイル。
この会談が終わったあと、イグナイエルはヴォロシンスキーとトーリアのいる会議室に戻り、会談の結果戦力を提供してもらえるようになったと伝えていった。
その一方で厄介払いをできることが確定したフレイルとオブルクは、厄介払いをされる張本人である問題児を呼び出し、これから自身がどうなるのかを話すことにする。
「……遅いですな」
「やれやれ、問題児は最後まで問題児か」
「まあもう少しの辛抱なので、それを考えると我慢はできますが」
「それだけが救いか……む、来たか」
「そのようですな」
「ほいほ~い、なんか呼ばれたから来たんだけどぉ、なんの用? また説教?」
「……いや、そうじゃない。お前に頼みごとができた。たがら呼んだ」
「頼みごと? どんな?」
「人間界の、ロシア帝国に向かってもらいたい。先ほどロシア帝国との交渉でそう決まった」
「え~、人間界? ザコばっかりじゃん?」
「……最近超強い化け物が現れた。その超強い化け物の対処をお前に頼みたいそうだ」
「え~? 超強い? それマジなの? いっつもザコとばっかり戦わされてるんだけど?」
「安心してくれ、今回の敵は本当に超強い」
「マジ? どれぐらい?」
「我々が魔王軍が全員で戦って、倒すことができずに途方にくれるレベルの相手だ」
「ほ~、それはちょっと楽しめそうだね。わかった、ロシアに行くよ。それじゃまたね」
「あ、おい、ちょっと!」
「……行ってしまいましたね」
「……仕方がない、ロシアには我々から伝えておこう……」
「……わかりました」
フレイルとオブルクは非常に深い溜め息を吐いた。
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