《魔王軍との交渉 その三》
テイル対策を考え始めたフレイルとオブルクの二人であったが、有効な手立てを考えられないまま時間だけが過ぎていった。
そして話し合いを始めて二十分が経過した時、話し合いを行なっている場にひとりの伝令兵が入ってくる。
「失礼いたします!」
「む? なんの用だ? 我々が頭を悩ませている様子がわからんか?」
「……非常事態ですから、どうかご容赦をお願いいたします……」
「非常事態? なにがあった!?」
「それが……例の方がまた問題を起こしたと苦情が……」
伝令兵の報告を聞いたフレイルとオブルクは揃って机に突っ伏した。
その様子に伝令兵は非常に申し訳ないと思いながらも、職務だからと自身の心を奮い立たせ、フレイルとオブルクにどう対処するのかを尋ねる。
「……それで……フレイル様、オブルク様、どのように対処いたしましょうか……?」
「……少し待て。まだショックから立ち直れん……」
「……私も同様ですな……」
「……あいつめ、また問題を起こしたか……」
「……これで三百件目です……いかがなさいますか? 陛下?」
「くそっ!! テイルのことだけでも頭痛がするほど悩んでいるというのに……!!」
フレイルがこう言いながら凄まじい殺気を放ったその瞬間、オブルクがまるで雷に打たれたように絶叫しながら立ち上がった。
「……それだーー!!!!!!」
「うおっ!? どうした、オブルク!?」
「これですよ、フレイル様! あの問題児をロシアに押し付け、テイルにぶつけさせましょう!!」
「……なにぃっ!?!?」
「よく言うでしょう? 化け物には化け物をぶつけろ、と。今のあやつは魔界史上最凶の化け物になっています。テイルにぶつける化け物としてはこれ以上の存在はないかと思います」
「そして我々はロシアとテイルと問題児に頭を悩ませることがなくなる、と。さすがだ、オブルク。見事な策だ」
「ありがとうございます」
「これで方針は決まったな。それでは会談に戻るとするか」
「はい、そうしましょう」
このように結論を出して立ち上がったフレイルとオブルク。
そんな二人に伝令兵が恐る恐る尋ねていく。
「……あ、あの、苦情の方は……?」
「苦情は会談が終わったあとにオブルクに向かわせるさ。良いか、オブルク?」
「かまいません。今後あの問題児に悩まされることがなくなると思えば、苦情の対応に行くことぐらいどうということはありません」
「ふふ、そうか。そうだ、お前、あやつを呼んできて玉座の間で待たせておいてくれ。頼むぞ」
「わ、わかりました」
伝令兵の返事を聞いたフレイルとオブルクは、意気揚々と会談の場に戻っていった。
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