《魔王軍との交渉 その一》
最初にヴォロシンスキーがトーリアに問い掛ける。
「恐ろしいぐらいあっさりと会談を始めてきたんだが……奴らはそんなにテイルが怖いのか?」
「俺達竜人族は魔族の天敵だからな。怖いのは怖いんだろうが……」
「……それにしても会談を始めるのが早すぎる、か?」
「ええ……」
「なにか裏があるのか……?」
「気を付けた方が良いかもしれないな……」
「ああ……」
このように話し合ったヴォロシンスキーとトーリアは、不安そうにイグナイエル皇帝が出ていった先に目を向けた。
こうしてヴォロシンスキーとトーリアの話し合いが終わったのと同じ頃、イグナイエル皇帝と大魔王フレイルの通信会談が始まろうとしていた。
「……ふむ、突然すぎたかな? イグナイエル皇帝の準備がなにもできていなかったとは……」
「今回は目の前の問題から目を背けるように会談を始めようとした陛下サイドに問題があると思います」
「そう言うな、オブルク。それにそう言うならお前に丸投げしても良かったんだぞ?」
「……それは脅迫でしょうか?」
「そうだが?」
「……もう少しオブラートに包んでもらいたかったのですが……」
「そういうのは苦手でな……む」
「お」
フレイルとオブルクがイグナイエル皇帝を待ちながらの雑談を行なっていると、準備を終えたイグナイエル皇帝のホログラム映像がフレイルの前に現れた。
これに一言ずつ反応したフレイルとオブルクに、イグナイエル皇帝が挨拶を始める。
「ご無沙汰しております、フレイル大魔王。アレクサンドル・イグナイエルです。この度は急な会談要請に快諾していただき、大変嬉しく思っております」
「これはこれはご丁寧に。ですがそこまで丁寧にされることはありませんよ? なにせ我々は盟友なのですから」
穏やかに笑いながら自身の挨拶に返答してきたフレイルに、イグナイエル皇帝は内心で歯ぎしりをしながら、心のなかで呟く。
(盟友だと? ただ人間界の争いを眺めているだけの者達がいけしゃあしゃあと……)
このように呟いたイグナイエル皇帝が、気を取り直して今回通信会談を申し込んだ理由を伝えていった。
「そうですか、そう言っていただけると助かります。それでは今日会談を要請した件を話したいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫です」
「それでは始めます。実はつい先日、我がロシア帝国は敵国アメリカの領土であったアラスカ全土の攻略に成功し、アラスカ全土を支配することに成功しました」
イグナイエル皇帝はここまで話すとフレイルがどういう反応を示すかを観察し始めた。
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