《魔王軍との交渉準備》
ヴォロシンスキーの訴えを聞いたイグナイエル皇帝はしばらく黙って考え込んでいたが、ある程度考えがまとまったらしくヴォロシンスキーの訴えに答えていった。
「……わかった、それでは交渉してみるか。足元を見られることになるかもしれんがな」
「そうなった時は断りましょう」
「そうだな、ヴォロシンスキー」
自身の返答を聞いたヴォロシンスキーの反応に、微笑みながら頷いたイグナイエル皇帝はすぐに人を呼んだ。
「すまない、誰か近くにいるか?」
「はっ。陛下、お呼びでしょうか?」
「うむ。至急魔王軍との通信回線を開いてくれないか?」
「魔界との……ですか?」
「そうだ。急いで大魔王フレイルと交渉しなければならない案件ができた」
「わかりました、大至急ご用意いたします」
こう話してイグナイエル皇帝の指示を聞き入れた従者のひとりが、魔王軍との通信会談の準備を行うために会議室を退室していく。
そうして従者が戻ってくるのを雑談をしながら待っていたイグナイエル皇帝の元に従者が戻ってくる。
「陛下、お待たせいたしました」
「いや、大丈夫だよ。それで大魔王フレイルはいつなら会談が可能だと返答してきた?」
「陛下……それが……」
「む? もしや数週間単位で難しい、等と言われたのか?」
「いえ、その逆なのです……」
「逆? ということは……」
「今すぐ会談を始めよう、先方はそのように言ってまいりました……」
従者の答えを聞いたイグナイエル皇帝は思わずヴォロシンスキーとトーリアに交互に目を向け、従者の言葉に答えていく。
「今すぐ? そう言ってきたのか?」
「はい」
「……こちらからなにか言ったのか?」
「いえ、なにも言っておりません。ただ陛下が大魔王フレイル様と会談を行ないたいと申しております。ですからフレイル様の都合の良い日を教えていただきたいのですが……と、このように伝えただけなのですが……」
従者の言葉を聞いたイグナイエル皇帝は再度ヴォロシンスキーとトーリアに目を向け、従者に返答を行なった。
「……わかった、それでは会談を始めよう。ただ少し準備を行ないたい。フレイル陛下には少しだけ待ってもらいたいと伝えてほしい。頼めるか?」
「わかりました。直ちに伝えて参ります」
「頼む。その間に準備を終わらせる」
「かしこまりました。それでは行って参ります」
そのように答えた従者が会議室を出ていったあと、イグナイエル皇帝も会議室をあとにして会談を行う準備を始める。
こうして会議室に残る形になったヴォロシンスキーとトーリアが、なんとも言えない表情で魔王軍がすぐに会談を行うと言ってきた理由について話し合いを始めていった。
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