《アラスカ攻略戦の結果報告 その五》
「ふむ、ではそういうことにしておくとしようか」
「お願いします」
ヴォロシンスキーの返答にイグナイエル皇帝が苦笑いを浮かべながら言葉を返し、これにヴォロシンスキーが軽く頭を下げて答える様子を見たトーリアが二人に話し掛けた。
「……自分の存在がお二人の迷惑になっているのなら、自分はこの部屋を出ていきますが、どうしますか。出ていきましょうか?」
「……いや、いてくれたほうが良いだろうからこのままで頼む」
「わかりました」
トーリアの質問に少しだけ考えて返答したヴォロシンスキーに、短く応じたトーリア。
この二人のやり取りを見て、タイミングが良くなったと判断したイグナイエル皇帝が二人に問い掛けた。
「よし二人とも、そろそろ本題に入るとしよう」
「テイルをどうするか問題、ですね?」
「ああ、その通りだ。トーリア、君はなにか考えがあるかな?」
「……そう言われても……自分はテイルを倒せればそれでいいと考えているような存在なので……」
「特に考えていない、ということかな?」
「……そうですね」
「ふぅむそうか……それならヴォロシンスキー、君はなにか考えがあるかい?」
トーリアの考えを聞いたイグナイエル皇帝が次にヴォロシンスキーに尋ねていく。
この質問にヴォロシンスキーが意外な返答を行う。
「……そうですね……トーリア殿、テイルには魔族でも対抗できないのですよね?」
「え? いや、まあ……なかには対抗できるやつもいるにはいるだろうが……」
「そうですか、ありがとう。それだけわかれば充分です」
「ん? 充分とは?」
「陛下、魔王軍に連絡しましょう。そして誰かを増援に送ってもらいましょう」
「なにっ!? 魔王軍に!?」
「おい、あんた正気か?」
ヴォロシンスキーの返答は魔王軍に援軍を要請する、というものだった。
これにイグナイエル皇帝とトーリアが驚きの声をあげる一方で、ヴォロシンスキーはイグナイエル皇帝に現状ではこれしか対抗手段が思い付かないと本音を話す。
「正気ですよ。トーリア殿もテイルひとりと戦うだけで手一杯でしょう? それなら同盟国の魔界に戦力を要求するしか手はないでしょう」
「それはそうかもしれないが……うーむ……」
「それに同盟を締結したと言っても、今のところ魔王軍は我々人類同士の戦いを眺めているだけでなにもしていません。そろそろ手を貸せと文句を言っても良い頃合いでしょう」
「……ふむ、なるほどな」
「それに情けない話ですが、私にはこれ以上の対抗手段が思い付きません。ですからどうかご一考をお願いいたします」
ヴォロシンスキーのこのようにイグナイエル皇帝に訴えていった。
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