《テイル対ロシア軍 その六》
ヴォロシンスキーの言葉に、トーリアは自身の方から話し掛けたのにそれほど興味なさそうに答えていく。
「まあ、それなりに。もう少し厳しく部下達を統制していると思っていましたから」
「現場の意見を聞いて方針を変更することは大事なことだし、ある程度は現場の者達も自身の考えで動いてもらわないと上の負担が大きくなる。だからこその措置だよ」
「……そうですか」
ヴォロシンスキーの考えを聞いたトーリアは軽く返事をしたあと、すぐに戦闘を開始したテイルとキャンベルの様子をモニター越しに見ていった。
そんなトーリアと同じようにモニターを見始めたヴォロシンスキーがトーリアに声を掛ける。
「始まりましたね」
「そうですな」
「さて、キャンベル殿は勝てますかねぇ?」
「絶対に勝てん。百パーセント間違いなくテイルが勝つ。賭けをしても良い」
「ずいぶんはっきりと言いますね? キャンベル殿はあなたの直属の部下でしょう? もう少し部下のことを信じてあげた方が良いのではないかな?」
あまりにも冷たいトーリアの発言に、ヴォロシンスキーがやんわりと苦言を呈した。
しかしそんなヴォロシンスキーの言葉にトーリアは無感情で続きの言葉を述べていく。
「信じるもなにも、俺はキャンベルのこともテイルのこともよく知っていますからね。二人の実力差もよくわかっています。そのことから考えますに、キャンベルは八分か九分の時間稼ぎができれば良い方でしょう。十分以上の時間稼ぎはまず不可能でしょう」
「ふむ、それほどか」
「ええ。ほら、見てください」
「うん?」
トーリアに言われてモニターに目を向けたヴォロシンスキーは、そのモニターに映るテイルとキャンベル機の戦闘映像に自身の目を疑った。
そのモニターには、マシンアーマノイドに搭乗していないテイルが、キャンベル機を一方的かつボッコボコに殴っている映像が映し出されていた。
「……おいおいトーリア殿、なんだあのひどい映像は?」
「キャンベル機がテイルにフルボッコにされている映像のことですか?」
「ああ、そうだ」
映し出された映像の酷さに思わずトーリアに尋ねるヴォロシンスキーに、トーリアが平然と答える。
「先ほど俺は話しましたよ? キャンベルでは八分、九分の時間稼ぎが精一杯だろう、と」
「確かにそうは言ったが……あれほど一方的にやられることにはなるとは予想できないだろう?」
「……まあ知らない者が見ればそうなのでしょうが、二人をよく知る俺にとっては、キャンベルはよく頑張っている方だと思いますよ?」
ヴォロシンスキーにそう話したトーリアは、一方的にやられるキャンベルに通信を繋げていった。
閲覧、感想、評価ポイント、ブックマーク登録、いいねありがとうございます!




