《前倒し》
予定していた起床時間を大幅に前倒しする形で叩き起こされた指揮官達が眠そうにしているなか、ヴォロシンスキーが指揮官達に総攻撃を始める時間の前倒しを告げていく。
「おはよう諸君、良い朝だな」
「……おはようございます、ヴォロシンスキー総司令……まだ日が見えないので良い朝かどうかはわからないのですが……」
「眠そうだな。そんなことでは困るぞ? 朝四時には総攻撃を始めるのだからな」
「……そうですねぇ、朝四時には……え? 朝四時?」
「ああ、朝四時だ」
「……朝……四時……? !? 朝四時!?」
「どうした、なにを驚いている?」
「い、いえ、会議の時には朝五時に総攻撃を始めると……!」
ヴォロシンスキーの方針変更に驚愕しながらも、なんとか現在の状況を把握するための質問を行う指揮官達。
そんな指揮官達にヴォロシンスキーは冷静に作戦開始時間の前倒しを伝えていく。
「確かに会議の時はそう言った」
「ならば……」
「だがそのあとのトーリア殿との話し合いで考えを改めた」
「え……?」
「諸君らがこれから戦うテイル・フェリアシティはその場の状況などから臨機応変に対応を変えるタイプの人物のようだ。トーリア殿がロシアにいることにも気付いている可能性が高いと思われる。ならば撤退開始時間を早めることぐらいはしてくるだろう。だからこそこちらも攻撃開始時間を早める。なにか反対意見のある者はおるか?」
攻撃開始時間の前倒し方針を伝えたヴォロシンスキーが険しい目で指揮官達を睨み付ける。
これに指揮官達は反論できず、結局総攻撃開始時間の前倒しが行われた。
その後指揮官達は大急ぎで自身の部下達を起こして回り、忙しく出撃の準備を行い、ごく軽い朝食を食べたあとで最後のアラスカ基地への総攻撃に向けて出発していった。
こうして出撃していく部隊を見つめながら、ヴォロシンスキーが呟いた。
「さぁ、戦争開始だ。楽しませてくれよ、テイル・フェリアシティ」
このヴォロシンスキーの呟きにトーリアが不機嫌そうに言葉を放つ。
「あれを相手に楽しむとか言えるのはあんたぐらいだろうな」
「ふふふ……」
トーリアの言葉を軽く聞き流したヴォロシンスキーは、心底楽しそうに最後のアラスカ基地の方向を眺めていた。
そうしてヴォロシンスキーが楽しそうにアラスカ基地を見ていた頃から約八分後、ロシア軍マシンアーマノイド隊がアラスカ基地をレーダーで探知することが可能な距離にまで近付いていた。
そこで彼らはアラスカ基地周辺の様子をレーダーで探り始める。
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