《ロシア軍の会議》
上機嫌の前線指揮官は自身の隣にいる男に声を掛ける。
「いや、これであなたが手土産にした情報が確かな物だったと証明されましたな、トーリア殿! いや、これからはトーリア特務少将と呼ばなければいけませんな! はっはっは!」
「それはどうも」
大笑いしながら肩をバシバシ叩いてくる前線指揮官に対して、迷惑そうな表情を見せながらトーリアが答える。
そんなトーリアが前線指揮官に報告を行った部下に尋ねた。
「色々と聞きたいことがあるんだが良いか?」
「問題ありません。どのような質問でしょうか?」
「アメリカ軍は問題なく殲滅できただろうが、その他の軍はどうだった? 苦戦はしたか?」
「そうですねぇ、カナダ軍も日本軍もそれなりに強かったと報告が上がってきています。しかしそれよりも……」
「フェリアシティ軍が強かった、か?」
「はい、そうですね。極めて少数の部隊でしたが、参戦してきたもの達全てが化け物のような戦闘能力だったとか」
「む? フェリアシティ軍? 少数の部隊? トーリア殿、どんな奴らが来ているか、わかりますかな?」
自身の部下とトーリアの会話に首を突っ込んできた前線指揮官にトーリアは軽く溜め息を吐いたあとで説明を行う。
「はぁ、魔力波形から参戦して来ているのはテイル、エスト、アメリカ帝国第二皇子のジャン、エルヴァンディア王女のアーシア、魔界有数の大貴族の令嬢リューネルン、リューネルンのボディーガード兼友人のテオ、最後にテイルの親衛隊隊長兼友人のフェイト、この七名だな」
「たった七人の部隊か、そしてそいつらが化け物のように強いと、そういうことか」
「そうなる」
「う~む、さてどうするか……」
前線指揮官がトーリアの言葉にテイル達にどう対処するかを考え始めた時、このアラスカ侵攻の最高指揮官がトーリアの説明への感想を話し始めた。
「アメリカの皇子にエルフの王女、それに魔界の大貴族の令嬢か。ずいぶんとバラエティに富んだ部隊構成だな、トーリア殿?」
「……エストとジャン皇子はともかく、それ以外のメンバーは全てテイルが選んでスカウトした者達です。並大抵の実力者ではありません」
「なるほど、そうか。しかしトーリア殿の話ではテイルはそなたと同じく魔を狩る一族だとのことだが、それが魔族を部下に迎えるとは、矛盾した話ではないか?」
「魔族にも二種類います。一つは他種族全てを滅ぼそうとしている魔族、もう一つが他種族と協力して生きていこうしている魔族です」
「ふむ、ではテイルは協力派の魔族は敵視していないと。そしてリューネルンは協力派の魔族である、と。そういうことか」
トーリアの話を聞いた最高指揮官は興味深げな表情を浮かべて笑っていた。
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