表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】多元世界戦記 ~テイル奇譚~   作者: 篠原2
プロローグ 復活と脱出
3/495

出撃、戦闘開始

前書き、後書きに何を書けば良いのかがわからない…。

階段を降りきったテイルと先生は薄暗い廊下を真っ直ぐ進み、幾つかの扉の前を通り抜け、一際大きな扉の前で足を止めた。


「ここですか?」


「ええ。もう一度あのノックを…と」


テイルはそう言うと先程と同じコン、ココン、コンと特徴的なノックをおこなった。

するとやはり先程と同じように壁面の一部がスライドしてパスワード入力装置が現れたのである。


「さて、もう一度…」


テイルはそう呟き液晶画面を覗き込み、左右両方の手の平を液晶画面に押し付けた。

そして再び十桁のパスワードを入力してこちらももう一度、


「登録者名、テイル・フェリアシティ」


と、パスワード入力装置に自分の名前を告げたのである。

するとここにあるパスワード入力装置からも、


「パスワード確認、登録者名確認、網膜及び角膜、左右掌紋及び左右指紋、声紋、全て確認。ロック解除します」


と、電子音声が流れて扉が開いたのである。


「…行きましょう」


「…はい」


そしてテイルと先生は開いた扉の中、第一格納庫へと足を踏み入れていった。


「…姫様、照明等は無いのでしょうか…?」


「…うーん…、照明機器は…どこにスイッチが有るかがわからないので…魔法でどうにかしますね」


足を踏み入れたのは良かったのだが第一格納庫内がこれまでの場所よりも暗かった事から先生がテイルに弱音を吐く形になっていた。

そして先生の弱音を聞いたテイルはすぐに魔法で光源を作り出したのだった。


「ありがとうございます、姫様…。それで…あれですか…」


「ええ、あれです」


そう話す二人が見ている物。

それはここで三年前に建造されたテイル専用のマシンアーマノイドであった。


「あれが…ワイバーンですか…」


「ええ。正式には型式番号MAG02MAN25-1Xtypeワイバーン、との事ですが」


「な、なるほど」


先生がテイルの説明に軽く引く中、テイルが格納庫の天井、の更に上の方に視線を向けた。


「また来ますね…。魔導シールド!」


テイルがそう言って右手を振りかざした直後、爆発音が響き辺り一帯に小規模な地震の揺れのような振動が起こったのである。


「残り何発あるんですかね…」


「ふむ…」


先生が口にした疑問にテイルが少し考えて自身の考えを口にした。


「もしかすると収納魔法を駆使していくらでも取り出せる、と言う事かもしれません」


「…詰んでませんか?」


「今のままなら詰みです。ですからすぐにでも出撃しなければいけません。と言う事で先生、カタパルトの操作、お願いしますね?」


と、言うとテイルは先生に向かって穏やかに微笑んだ。

一方で微笑まれた側の先生は固まってしまっていた。


「…えーと…姫様?私には…」


「出来ません、とは言わせませんよ、先生?」


テイルは笑みを浮かべたまま先生に告げたのである。


「いえ、ですが…」


「三年前までは出来ていましたよね?」


「三年間やっていなかった事を今やれと言われますか…?」


「ええ、言います。でなければ皆死にます」


「…とんでもない脅迫ですね…」


「脅迫だと理解して頂けましたか。理解が速くて助かります、先生。それでは…」


と、言うとテイルは浮かべていた笑みをフッと消し、


「…出来ませんとは言わせませんよ、先生…」


と、先程と同じ言葉を、今度は笑顔では無く、スッと目を細めた真顔で先生に告げたのである。

そのテイルの顔を見た先生はフゥ、と溜め息を吐くと覚悟を決め、テイルを真っ直ぐに見詰め、


「…わかりました。三年ぶりでどうなるかわかりませんが、何とかやってみましょう。正直かなり不安ですが…」


と、少々自信無さそうに答えたのである。

その返答にテイルは若干不満そうにしながらも、


「…お願いします。私もワイバーンで出撃する用意を始めます」


と、返したのである。

その様子を見た先生がテイルに愚痴を溢した。

そしてこれが発端となり、双方の愚痴の応酬が始まる。


「…不満そうにしないで下さいよ…」


「そうは言われましても三年前の先生を知る身としては、先程の先生の返答には落胆を禁じ得ません…」


「いえ、三年間やっていなかった事を当たり前のようにやれと言われるのは如何なものかと思うのですが…」


「…そうは言いますけど先生は三年前はぶっつけ本番で成功させてたじゃないですか?」


「…それはそうですが…。それにしてもよく覚えていますね…」


暫く続いた愚痴の応酬の途中で呆れたように放たれた先生の言葉にテイルはドヤ顔で、


「記憶力には自信がありますから」


と、言い放ったのである。

そんなテイルに先生も負けじと言い返す。


「三年前な上に途中、催眠術で完全に記憶を飛ばしたと思うんですけど…?」


「ええ。それでも催眠術が解けた時に私、言ったじゃないですか。全てわかりますって」


「…ああ、そう言われればそうでしたね…」


「ええ。つまりそういうこ、!来る!魔導シールド!」


「姫様!?」


二人の呑気なやり取りを敵部隊の攻撃が中断させる。

そして放たれた敵部隊の攻撃をこれまで同様にテイルが魔導シールドを展開させて防ぎきる。


「呑気に会話している場合ではありませんでしたね」


「…そうでしたね」


「先生、改めてお願い致します。カタパルトの操作、なんとかやって頂けないでしょうか?」


「…わかりました。なんとかやってみましょう」


「お願いします。私もワイバーンの起動シークエンスを始めます」


「わかりました」


こうしてテイルはワイバーンのコクピットに、先生はカタパルトの操作室へと向かうのだった。

そしてワイバーンのコクピットに乗り込んだテイルは早速ワイバーンの起動シークエンスを始めたのである。


「エンジン始動、及びパイロット登録開始、パイロット登録者名テイル・フェリアシティ、網膜及び角膜登録、左右掌紋及び左右指紋登録…。これでパイロット登録は完了、と…」


そうテイルが呟いた瞬間、コクピット内に電車音声が流れてきた。


「パイロット登録者名確認、パイロット登録者名、テイル・フェリアシティ、網膜及び角膜登録完了、左右掌紋及び左右指紋登録完了、声紋登録完了、脳波パターン登録完了、パイロット登録完了しました」


この電子音声を聞いたテイルは思わず、


「…脳波パターン?そんな物まで登録する必要が…ああ、そうか…」


と、呟いた。

だがそんなテイルの呟きを無視するかのように電子音声が鳴り響く。


「続けて起動シークエンスに移行します。魔導力増幅機構起動、ソウルリアクター起動、全ナノマシンユニットシステム起動、パイロットとの脳波接続完了、モーションコントロールシステム起動、各部ユニットのオンライン接続完了、システムオールグリーン、ワイバーン起動します」


このアナウンスにテイルが呟く。


「こちらは終了ですね…。ワイバーン、方法は問いません、先生との通信回線を開いて下さい。先生の状況を確認します」


「了解しました。通信回線一覧確認、並びに接続可能な通信回線の選択を開始します………確認完了、所持されているタブレット端末と接続、そこから通信回線を開きます」


「ええ、任せます」


「回線接続中………」


こうして十秒程で先生との通信が開始、テイルによる先生の現状確認が始まった。


「先生、そちらの状況はどうですか?」


「どうにかこうにかなりましたよ…。姫様の方はどうなんですか?」


「私の方はいつでもいけます」


「そうですか…ではすぐに出撃されますか?」


「もちろんされます。ですので先生、管制官役、お願いしますね」


「…姫様はまたしてもキツい事を言われる…」


そう言って弱音を吐く先生にテイルは笑顔で語り掛ける。


「明確に出来ないと言われ無かったと言う事はやってもらえると判断して宜しいですね?」


「…よろしいです」


テイルの言葉に色々な事を諦めた先生が半分棒読みで返事をする。

その返事を受けてテイルが先生に指示を出す。


「ではカタパルトの操作と管制官役をお願いします。私もすぐにワイバーンをカタパルトに接続させます」


「わかりました。すぐに始めます」


テイルから受けた指示に今度は棒読みでは無く普通に答えた先生がカタパルトの操作を始める。

そして操作し始めた所である事を思い付いた。

そのある事を実行するかどうかを確認する為にテイルに尋ねた。


「姫様、少し宜しいですか?」


「あまり宜しくは無いんですけど…何ですか?」


「…姫様が出撃される際にここの迎撃システムを使って敵部隊の目眩まし、という事を思い付いたんですが…やりましょうか?」


「…ふむ?」


先生の提案に一言相づちを打つとテイルは数秒考えて、


「ええ、お願いします。やってください」


と、許可を出した。


「わかりました。それではその準備も始めます」


許可を貰った先生がすぐに目眩ましの準備にも入る等順調な中、テイルの方はワイバーンに搭載されている新型のモーションコントロールシステムに若干苦戦していた。


「うーん…新型のシステムに慣れていない事もあるからか…少し反応が良すぎる気がしますね…」


動作確認をしながらテイルが問題点を口にする。


「…むう…仕方がありません、非常事態ですし新システムには戦いながら慣れていくしかありませんね…」


この言葉で強引に自分を納得させたテイルは出撃する為にカタパルトへと向かって行った。


「うん、カタパルトとの接続は完了、と…。先生、どうですか?」


「問題ありません。いつでも出撃出来ますよ、姫様」


「わかりました、ならば出撃します」


「了解しました。それでは失礼して…」


「ん?」


「テイル機、発進、どうぞ!」


「……ああ、そういう事ですか、わかりました。…テイル・フェリアシティ、ワイバーン、いざ、推して参ります!」


テイルがそう声を上げると同時にカタパルトが起動、ワイバーンを射出口へと高速で送り出したのである。


「よし、迎撃システム起動!」


ワイバーンの射出シークエンスを確認した先生が『ここ』の迎撃システムを起動させ十二発の迎撃ミサイルを撃ち出したのである。

その突然のミサイル発射に上空の敵部隊は、


「何だ!?」


「ミサイル!?」


「何で突然!?」


と、大混乱に陥った。

だが彼等はすぐに気を取り直すと発射された迎撃ミサイルを全て撃ち落とすと先程迎撃ミサイルが発射された地点に向けてバンカーバスターを発射したのである。

そしてそのバンカーバスターが着弾しようとしたその時だった。


「出撃完了!そして……当たれ-!!」


というテイルの雄叫びと共にワイバーンが右手に装備していたレーザーライフルから放たれた閃光の全てがバンカーバスターに直撃、一つ残らず破壊したのである。


「な、何だ!?」


「…見た事無い機体だ…」


「…新型…か?」


突然現れて自分達が撃ったバンカーバスターを全て撃ち落として見せた未確認のマシンアーマノイドに警戒心を高める敵部隊。

一方対峙しているテイルはワイバーンの搭載武装の最終確認をしていた。


「武器はレーザーライフルが一挺にレーザーソードが一基か…。火力が足りない所は私の攻撃魔法でカバーですね…。…ん?」


テイルがワイバーンの搭載武装の最終確認を終えるとほぼ同時に敵部隊からの通信を行なってきた。


「そこの所属不明機に告げる。俺は魔王軍対エルヴァンディア王国方面艦隊外郭部隊第133小隊分隊隊長ガノハット軍曹である」


この名乗りを黙って聞いていたテイルはこう思った。


(うーん…名乗りを聞いたのがあの娘だったら途中で「長い。もっと簡潔にしろ」とか言って問答無用で撃ちそうですねぇ…)


この思いを自身の胸の中だけに留めてテイルはガノハットに聞き返した。


「…そのガノハット軍曹が何の用でしょうか?」


「貴官は自殺志願者か何かか?八対一は正気とは思えんのだが?」


「…私一人だけなので八対一は仕方の無い事ですね。それに私は自殺志願者ではありませんよ?」


「…どういう事か?」


「死ぬつもりはありませんし、負けるつもりも無いからです」


「…この状況で勝つ、と?」


「はい」


テイルのこの言葉にガノハットは額に手を当てながらフゥ、と溜め息を吐いた。

そして部下達に命令を下した。


「やはり自殺志願者だ。望み通り殺してやれ」


「はっ!」


「了解であります!」


ガノハットの命令は部下達はほとんどが承諾したがその中の一人は違う反応を見せた。


「…殺すんすか?声聞く限り女でしょ?」


「…だろうな」


「だったらただ殺すより取っ捕まえて色々と好き放題してから殺す方が良くないっすか?」


その発言にガノハットは頭を抱えながらも、


「相変わらずだなお前は…まあいい、お前が捕まえたのなら好きにして良い、ただし他の者は容赦無く殺せ、いいな?」


と、命令を変更したのだった。

部下達はこの命令の変更にも即座に対応してみせた。


「はっ!」


「了解であります!」


このように最初の命令の時と変わらない返事をしていく部隊員を尻目に自分の要望を通した隊員が楽しそうにテイルに通信を繋いで話し掛けた。


「へへっ、取っ捕まえて色々とやってやっからよぉ、楽しみにしてろよぉ?」


そしてこれだけ言うと返事も聞かずに通信を切ったのだった。

これを黙って聞いていたテイルは心の中で、


(最低の発言…。どう考えても女の敵ですね…。出来る事なら今この場で抹殺しておいた方が世の女性の為にはなりますが…この先の展開を考えると生かしたままの方が都合が良いんですよねぇ…。仕方がありませんねぇ、この場は生かしておいてあげましょうか…)


と、色々と物騒な事を考えていた。

だが今後自分達が有利に動く事が出来るようになる為に最低の発言をした彼を今は生かして帰す事に決めたテイルは戦闘態勢になりつつある魔王軍部隊に対して今度はテイルの方からガノハットに通信を繋いだ。


「そろそろ始めますか?」


「…そうだな。……若干名物凄くやる気になってるのがいるが許してくれよ?」


「理由も含めて全て理解出来ているので問題ありません。お気になさらず…」


「そう言ってくれると助かる。…では始めようか。君が楽に死ねる事を願っているぞ」


「…ありがとうございます」


こうして二人は通信を終えて魔王軍部隊は完全に戦闘態勢に移行した。

一方で三年ぶりの戦闘だというのにテイルは全く慌てる事無く冷静にこれからしなければいけない事を頭の中で整理し始めた。


(まずは三年の間にどれだけマシンアーマノイドの性能が上がったか、ですね。魔王軍は純度100%の軍事国家。一般兵用の量産型マシンアーマノイドが他国のエースパイロット用のカスタム機とほぼ同性能という反則軍隊、この検証にピッタリの相手ですね。次にどれだけ苦戦してもワイバーンで戦い続ける、これですね。ワイバーンの、というよりワイバーンに使われているナノマシンユニットの特性を発揮させる為にはワイバーンで戦わなければいけない、という制約がありますからね。そして最後に。敵部隊をマシンアーマノイドは修復不可能な程に破壊しつつパイロットは全員生かして帰す、以上になりますね。彼等には全員生きて帰ってもらって私の帰還を大々的に彼等の上官に伝えて貰わないといけませんからね。難しい目標ですけど全て達成しなくては…。…っと、そろそろ来ますね、ではこちらも戦闘態勢に移行しましょう。…改めてお願いしますね、ワイバーン)


こうして頭の中での整理を終わらせたテイルも魔王軍部隊に続いて戦闘態勢に移行、ここからテイルと魔王軍部隊の戦いが始まるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ