《逃げる理由とトーリア評》
自身の意見に表情を歪めたトラウト准将と一条准将を見たテイルは、続きを話していく。
「私が基地をそのままにして逃げようと言ったのは、基地を爆破するような時間はないだろうと思ったからです」
「ん? 時間がない? なぜですか?」
「朝早くに、それこそ爆破する準備をして、そのあと七時頃に撤退すれば良いのではないですか?」
テイルの発言に対して、疑問と自身達の考えを話したトラウトと一条に、テイルが時間がないと言った理由を話す。
「七時では遅いですね。もっと早く、朝六時頃には逃げたいですねぇ」
「朝……六時ですか?」
「なぜそんなに早く……?」
「理由は、ロシア軍に私の元部下のトーリア・バグダリス、こいつが多分います。トーリアなら私が朝早くに撤退するだろうと予想してくるでしょう。だからトーリアの予想を上回る早さで逃げないといけませんから」
テイルの言葉を聞いたトラウトに一条、さらにはオリヴィエと三枝も顔を見合わせ、無言で頷きあったあとでテイルに質問する。
「……つまり陛下はそのトーリアという相手が考える時間よりも早いと予想した時間が、朝六時だということですか?」
「そうですね」
「そのトーリアという者は……強いのですか?」
「そうですねぇ、まあそれなりに強いですかねぇ」
「それなりに、ですか……それなら出てきてもそれほど驚異にはならなそうですね」
テイルの返答に安心してそう発言した三枝に、エストが話し掛けた。
「三枝大佐、テイルの言葉を聞いて安心したようだが、そんなに安心している場合じゃないぞ?」
「……え? それは一体どういうことですか?」
「テイルのそれなりは他の者のそれなりとは意味が違うからな。安心していると酷い目を見るぞ?」
「え? それでは、あなたのトーリアに対する評価はどのようなものになるのですか?」
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はエスト・フェリックス。それで俺のトーリア評だが、とりあえずは人間界の各国軍のトップエースクラスの実力は持っていると思う。戦闘能力に関してはそんなところかな」
こうしてエストは三枝達に自身が考えるトーリアの戦闘能力の評価を話した。
これを聞いた三枝達は再度顔を見合わせ、今度はテイルではなくエストに尋ねる。
「各国軍の……トップエースクラス?」
「それほどの実力者なんですか?」
「それをそれなりに強いって……」
「テイル陛下の他人への評価はどうなっているんですか?」
このように尋ねられたエストは、テイルの顔をチラッと見たあとでテイルの異常性を語り始めた。
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