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多元世界戦記 ~テイル奇譚~   作者: 篠原2
プロローグ 復活と脱出
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テイルの切り札

レガシア達五人がネオヒューマン能力と魔法の併用で数機から数十機単位で派手に魔王軍マシンアーマノイド隊を蹴散らしていく中、テイルとエストの二人はネオヒューマン能力と魔法の使用禁止措置の解除前後での戦闘スタイルがほぼ変化しなかった為に良く言えば堅実、悪く言えば地味な戦い方になっていた。


「…皆派手にやってるな」


「自分の戦い方が地味なのを気にしてるの?エスト」


「…意識していないと言えば嘘になるな」


「大丈夫だよ、私も地味だから…」


レガシア達五人と比較して思わず心の声を漏らしたエストに自分も地味だからと慰めたテイル。


「…互いにへこむ慰めの言葉ありがとう」


「ちょっとは元気出た?」


「とりあえずはな。さて、まだ愚痴を言っている場合では無いな」


「そうそう。地味なのは地味なのなりに頑張らないと」


「…そう、だな。では続けるか。ネオヒューマン能力発動。闘気操作」


テイルの慰めの言葉を受けて多少やる気を取り戻したエストは魔王軍マシンアーマノイド隊の迎撃を再開すると告げると地味だと言っていたエストのネオヒューマン能力、闘気操作を発動させたのであった。


「「「「「「「…!…なんだ!?」」」」」」」


そしてエストが能力を発動させた直後、エスト機の周囲にいた魔王軍兵士はそうだが離れた場所にいた魔王軍兵士達もエスト機へと視線を向けさせられてしまったのである。


「他に敵がいるのに…あのが気になってあの機体から視線を外す事が出来ない!?」


「戦い方は他の奴らの方が圧倒的に派手なのに…あの機体から目を離せない…」


「ええい!他の機体に目を向けられないならあの機体から落とすだけだ!」


エスト機から他の機体へと目標を変えられなくなってしまった魔王軍マシンアーマノイド隊はそれならばとエスト機に殺到し始めた。


「…地味は地味だが…しかし便利ではあるんだよな…この能力は…」


殺到してくる魔王軍マシンアーマノイド隊を前に呟いたエストは攻撃可能距離まで近付いてきた魔王軍マシンアーマノイド隊へ無造作に巨大剣を繰り出して薙ぎ払っていった。


「「「「ああぁぁぁ…」」」」


一薙ぎで四機のマシンアーマノイドが破壊され断末魔の叫びを上げるパイロット達。


「ふっ!」


「「「「「ぎゃああぁぁ!!」」」」」


今度は飛び掛かってきた五機を下から上への斬り上げで両断したエスト機。

そうして斬り上げた巨大剣をすぐさま振り下ろし、続けて攻撃を仕掛けてきた敵機三機を真っ二つにすると休むことなく横方向に振り抜き襲い掛かってきていた七機を破砕、その後は次々に押し寄せてくる敵機の位置に合わせて縦横無尽に巨大剣を振り回し片っ端から斬り捨てていった。


「ここまでくればあとは適当に振り回しておくだけでなんとかなるだろう。いつも通りの簡単なお仕事だな」


とんでもない事を口走るエストであったが実際その通りであった。

エストが発動させたネオヒューマン能力、闘気操作は普段なら気配を感じ取る事が出来ない者にも強制的に発動者の気配を感じ取らせて発動者に注意を向けさせる、という物でこの能力を発動させている現在は効果範囲内の魔王軍兵士全てがエスト機、というよりはエストに向けて押し寄せてくるという状況になっていた。

因みにこの能力は敵味方識別が可能でありテイル達はこの能力の影響を受ける事無く戦えていた。

このような能力と戦い方であった為にエスト機は最初に 突撃してきた敵機を撃破した位置から全く動かずに対処し続けていたのだった。

そして最後はテイル機ワイバーン。

テイルの戦い方でネオヒューマン能力と魔法の使用解禁前と後で変わった事と言えば主に使う魔法が火属性のファイアボールから光属性最下級魔法のシャインバレットになった位で他はこれまでの戦い方と変わらなかった為に戦い方が地味だという自己評価になっていたのであった。

このような感じでテイル達が戦っていたその時、テイル達が戦っている地帯の地上、それも地面の下から凄まじい轟音がすると共にまるで地震のような地響きが巻き起こったのである。

この轟音と地響きは魔王軍艦隊でも観測された為に魔王軍艦隊の艦隊長達に更なるプレッシャーを与える事になったのだった。


「なんだ今の音と地響きは!?」


「…地震…なのでは…?」


「あんな一瞬の地震があると思うのか!?」


「い、いえ、それは…」


「艦長、地震では無いとするとあれは…?」


「…考えたくないが…テイルが仕掛けた何かだろう…何かはわからんが…」


「…どうされますか?観測地点に向けて砲撃を行いますか?」


「待て!あの付近には乗機を破壊され地上に落下した我が軍の兵が大勢いるんだぞ!?味方を巻き添えにする気か!?」


「あ…」


「艦長!どうしますか!?」


「く…ぬぅ…(どうする!?どうすればいい!?)」


魔王軍艦隊の艦隊長は対処に迷った。

迷ってしまった。

この迷いが、この後の大惨事に繋がることになるとは知らずに。

そしてその頃この轟音と地響きの原因を起こしたマヤ達は原因である全砲門一斉掃射の結果の確認を行っていた。


「各員、現状の報告を」


「メインエンジン全機、始動完了。全機安定稼動域に到達。問題ありません」


「艦上部の堆積物の除去はまだ不十分ですね。浮上はまだ不可能です」


「各砲門の状況は問題無しとの事。準備が終わり次第第二射、可能です!」


「艦上部でのテイル様達の戦闘もテイル様達の優勢で進んでいる模様です。かといって我々が遅くなっていいという理由にはなりませんが」


「わかりました。第二射の用意は?」


「実体弾の方の次弾装填、完了!いつでもいけます!」


「わかりました。それでは第二射、撃て!!」


「第二射、撃てー!」


こうして第二射も行われすぐに第一射の時と同様にマヤ達は砲撃の結果を確認する作業に移行したのだった。


「状況の報告を」


「艦上部の堆積物は後一回の一斉掃射で浮上可能なレベルまで除去出来ました。もう一息です」


「各砲門、問題無し。すぐに第三射の準備を始めます」


「テイル様達の戦闘も依然としてテイル様達の優勢で進んでいます」


各所から上がってくる報告を受けてアトレーがマヤに話し掛けた。


「間も無くですな、艦長」


その言葉にマヤは目を瞑り、感慨深そうに呟いた。


「…ええ。いよいよです」


この一言の後、マヤは一呼吸置いて命令を下した。


「…第三射、撃て!!」


「了解!第三射、撃てー!」


こうして放たれた第三射はアークワイバーンの上部の堆積物を落下していた魔王軍兵士達諸共に吹き飛ばした。

この様子は魔王軍艦隊のモニターにも映し出され落下していた兵士達が戦死する瞬間を彼等は目撃する事になったのである。


「ああ、パイロット達が…」


「…あの様子では全滅でしょうね…」


「…うう…すまない…すまない…」


「艦隊長…」


対処に迷ってパイロット達を戦死させてしまった事を後悔し懺悔の言葉を発すると共に涙を流す魔王軍艦隊長とその姿に何も言えずに立ち尽くす乗組員達。

数秒の間沈黙が支配した魔王軍艦隊長の艦のブリッジにその沈黙を破る警報が鳴り響いた。


「何だ!?」


「先程…我が軍のパイロット達が吹き飛ばされた地点の地下から…正体不明の巨大構造物が浮上してきます!」


「正体不明の巨大構造物!?…正確なサイズは!?」


「待ってください…推定ですが…約800メートル!約800メートルです!」


「800メートル!?…何だ…何が出てくる!?」


狼狽える魔王軍艦隊長達の目の前にテイルの切り札、アークワイバーンがその姿を現すまで、あと僅か。

そして時は少し遡り、アークワイバーンの第三射で艦上部の堆積物を魔王軍兵士ごと吹き飛ばした直後のアークワイバーンブリッジでは浮上に向けた最後の作業が行われていた。


「状況の報告を」


「第三射で艦上部の堆積物は全て除去出来ました。いつでも浮上可能です」


「各砲門問題無し。次弾はどうされますか?」


「上空で行われているテイル様達の戦闘、依然テイル様達が優勢の模様」


「次弾装填は行ってください。次弾装填が終わり次第アークワイバーンを浮上シークエンスに移行させます」


「了解!装填作業を急がせます!」


「ええ、お願いします」


マヤはそう言うと浮上後に起きるであろう戦いに備えて静かに目を閉じて集中力を高め始めるのであった。

そうしてマヤが目を閉じてから三十秒が経過したところで、


「次弾装填完了!いつでも撃てます!」


と、待望の声を耳にするとマヤはすぐに目を開けて全員に命令を下したのである。


「これより浮上シークエンスに移行する!メインエンジン全機戦闘モードに移行!及び反重力推進システム始動!」


「了解です!」


「地表から浮き出た直後辺りから敵艦隊の攻撃に備えてフォトンバリアと魔導シールドを展開、いいですね?」


「了解であります!」


「メインエンジン全機戦闘モードに移行完了!いつでも浮上可能です!」


「艦長、ご命令を」


エンジンの戦闘モード移行完了の声を聞いたアトレーがマヤに促した。

その言葉に応えマヤが命令を下した。


「ええ。…抜錨!!アークワイバーン発進!!」


「「「「「「「了解!!」」」」」」」


マヤの下した命令を受けてアークワイバーンはゆっくりとその巨大な船体を浮上させ始めたのだった。


「エンジンブロックと反重力推進システムの状況はどうですか?何か異変のような物は起きていいませんか?」


浮上の合間も問題が起きていないかを確認していくマヤ。

その声にクルーが答える。


「メインエンジン及びサブエンジン全機安定稼動中。問題ありません」


「反重力推進システムも問題ありません。順調に稼動しています」


「そうですか。わかりました」


クルーの返答に一言返してマヤは一度深呼吸を行った。

その様子を見たアトレーがそっと声を掛けた。


「…大丈夫ですか?」


「…ええ」


「…緊張しすぎでは?」


「…私達が失敗すれば全てが終わります。緊張もしますよ」


「…失礼しました」


「気にしないでください、アトレー副長。おかげで少し落ち着きました」


「そう言ってもらえると助かります。…そろそろですかな?」


話の途中でアークワイバーンが浮上を止めた事に気付いたアトレーが話を区切る。

マヤもアトレーに続いて話を区切ってクルーに呼び掛ける。


「そのようですね。…状況の報告と命令の実行を!砲雷手、アークワイバーンのロックオン可能限界まで敵艦隊のロックオンを!」


「アークワイバーン浮上完了!直ちにフォトンバリアと魔導シールドを展開します!」


「本艦のロックオン可能限界まで敵魔王軍艦隊のロックオン完了!すぐにでも攻撃可能です!」


「艦長、ワイバーンとの通信回線を開きます!」


「お願いします」


マヤが返事をしてすぐにワイバーンとの通信回線が開かれテイルとの通信が始まったのである。


「聞こえる、マヤさん?」


「はい、聞こえます、テイル様」


「ついに御披露目の時が来たわね。…思っていたより長くなってしまったけれど」


「テイル様…」


「…感傷に浸るのは終わってからにしましょうか。マヤさん、いけるわね?」


「はい、いつでもいけます」


「よし…それじゃ脱出戦の総仕上げの開始といきますか!」


「了解です!」


テイルとマヤの声と共にアークワイバーンの全砲門が魔王軍艦隊へと向けられたのだった。

その頃魔王軍艦隊艦隊長のいるブリッジでは地底から現れた全長800メートルの超巨大戦艦の考察と対処が話し合われていた。


「…あれは…何だ…?…艦…か?」


「お、恐らくは…」


「あれが…テイルの切り札…でしょうか…?」


「恐らくは…」


「…なるほどな、あれがあるからテイルはここから動かずに戦っていたのか」


「…どうされますか?」


「…戦場にいる全マシンアーマノイド隊に帰還命令を出せ。同時に全艦隊に伝達、味方のマシンアーマノイド隊が帰還が終わり次第敵新型戦艦へ向けて全力砲撃を開始する。出てきてすぐだが早速沈んでもらう」


「わかりました。すぐに伝えます」


魔王軍艦隊長の命令が動員艦隊全てに伝わると魔王軍艦隊はタイミングを合わせてアークワイバーンに向けて一斉掃射を開始したのであった。

この一斉掃射が始まったと同時に敵艦隊の攻撃を確認したテイルはエストと姉妹達にアークワイバーンのカタパルトに降りるように指示を出した。


「エスト、皆、すぐにアークワイバーンのカタパルトに降りましょう」


「え?艦内に逃げるんじゃなくて?」


「一斉掃射の後どう動くかがわからないからね。すぐに動けるようにしておかないと」


「なるほど、わかった」


この声を聞いたテイルはすぐにマヤにも声を掛けた。


「マヤさん、フォトンバリアと魔導シールドの準備は?」


「完了しています。その後の反撃の準備も終わっています」


「さすがマヤさん、仕事が早いね」


「恐れ入ります。…テイル様、砲撃が」


「了解!………着地完了!マヤさん!」


「はい!フォトンバリア、魔導シールド、最大出力展開!」


「了解です!」


こうしてテイル達がアークワイバーンのカタパルト上に降りるのを確認したアークワイバーンのクルーはフォトンバリアと魔導シールドを展開、そしてその直後、魔王軍艦隊一万九千四百四十隻の全力砲撃がアークワイバーンに豪雨のように降り注いだのである。


「…着弾を確認。やりましたな」


「沈んでいたらな」


「いや、沈んだでしょう?あれだけ撃ったんですよ?」


「…そうだといいが…あれはテイルの切り札だろう…ならば恐らく…」


「…か、艦隊長!」


「…健在か?」


「…は、はい…」


「「「「「「「……………」」」」」」」


その言葉に艦隊長以外のクルー達は驚愕のあまり言葉を失ったが艦隊長はその事実を落ち着いて受け止め、次の手を考え始めた。

その一方で魔王軍艦隊の攻撃を防ぎきったアークワイバーンは当初の予定通りに魔王軍艦隊への反撃を開始したのである。


「マヤさん、やっちゃって」


「はい。敵艦隊への砲撃を始めてください」


「了解!撃ち方始め!!」


テイルのゴーサインを受けたマヤが砲撃開始を指示、その指示を受けてアークワイバーンの全砲門が魔王軍艦隊に向けて一斉に火を吹いた。

多数のレーザーキャノンが、多数の実体砲弾が、多数のミサイルが、ロックされた敵艦隊に向けて飛んでいく。

その様子を見た魔王軍艦隊長が指示を出す。


「撃ってきたか!」


「艦隊長!」


「迎撃!及び防御行動!」


「はい!」


魔王軍艦隊長の指示で多数の迎撃ミサイルが発射され、魔王軍艦隊全てが魔導シールドを展開、全艦が迎撃と迎撃に失敗した時の着弾に備えたのである。

だがアークワイバーンから発射されたレーザーキャノンは魔王軍艦隊の魔導シールドを簡単に貫通、直撃を受けた艦は一撃で轟沈させられ、さらに轟沈させられた艦の後ろにいた艦にも一隻目を貫通、轟沈させたレーザーキャノンが襲い掛かった。

こうして二隻目の魔導シールドに当たったレーザーキャノンは二隻目の魔導シールドも貫通、その直後直撃した二隻目の艦も一撃で沈めたところでエネルギーを失って消失したのだった。

実体砲弾も魔導シールドを楽々と貫通して艦に直撃、こちらも一撃で艦を轟沈させてみせた。

そしてアークワイバーンのミサイルは敵艦隊の迎撃ミサイルが着弾しても撃ち落とされる事無く敵艦に飛翔していった。

そして敵艦が展開している魔導シールドに直撃したのだが、通常なら魔導シールドに直撃した瞬間に魔導シールドに阻まれて爆散するミサイルが魔導シールドを貫通して艦に着弾、こちらも一撃で艦を轟沈させたのであった。

ちなみにこのミサイルはトーブル達のマシンアーマノイドから発射された特殊ミサイルで元々はアークワイバーンで使用する予定のミサイルでありテイルはこれを改造して無理矢理トーブル達のマシンアーマノイドに搭載、使用していたのであった。

この一斉掃射で五十隻もの艦艇が轟沈させられた魔王軍艦隊長達は敵艦であるアークワイバーンの圧倒的火力に底知れない恐怖を感じていた。


「…味方艦隊の五十隻が…沈められた…?…たった一度の…一斉掃射で…?…何かの間違いでは…?」


「…間違いありません…先程の一斉掃射で被弾した味方艦隊の五十隻が轟沈…再度確認しましたから確定事項です…」


「そんな馬鹿な…魔導シールドは展開していたのだろう?レーザーキャノンはともかく実体弾とミサイルはミサイルを中心とした迎撃システムと魔導シールドで防げるはずだろう!?」


「それが…迎撃ミサイルは敵艦の実体弾とミサイルに着弾しているのですが…何故か一発も破壊出来ておらず…」


「どういうことだ…?」


「…艦隊長その件ですが…」


「何か分かるのか!?」


「完全ではありませんが…恐らく」


「…そうか…。いや、何でもいい。教えてくれ」


「はい。敵艦の実体弾とミサイルが味方艦に着弾する前に魔導シールドに当たった瞬間と言いますか…とにかくその時にこちらの魔導シールドを中和?しているように見えたので…恐らく敵艦の実体弾とミサイルには魔導シールドを展開する機能を持たせたのではないかと…」


「魔導シールドを纏ってこちらの迎撃システムを突破してくる実体弾にミサイル!?そんな馬鹿な!?」


「…ですが艦隊長…それならこちらの迎撃システムが全て突破された事に対する説明が出来ます…」


「…それは…そうだが…」


「…艦隊長…」


「…おのれテイル・フェリアシティ…なんという…なんという恐ろしい艦を作り上げたのだ…!」


こうして魔王軍艦隊長達がアークワイバーンとアークワイバーンの建造させたテイルへの恐怖と怒りを募らせる中、テイル達は続けての行動を始めようとしていた。


「マヤさん、他五人の状況はどうなってるの?」


「順調に推移しているようです。もう間も無くかと」


「援護射撃した方が良いと思うんだけど、どう?」


「…そうですね。一度砲撃すると連絡してから援護射撃を始めましょうか」


「ええ。任せたわよ、マヤさん」


「任されました。…マイ、マキ、アヤ、アイ、アキ、五人に連絡を。急いでください」


「了解です…………回線開きます」


「マイ、マキ、アヤ、アイ、アキ、そちらの状況はどうですか?」


「こちらマイ、順調ですよ。すぐにでもいけます」


「こちらマキ、私の方は全ての準備が完了しています。今は他四人の準備が終わるまで待機しています」


「こちらアヤ、私達の方は完了までもう二分といった感じです」


「こちらアイ、只今準備完了!いつでもいけますよ!」


「こちらアキ、間も無く準備完了します。もう少しだけ待ってください」


「こちらマヤ、了解しました。…それで五人に連絡があります」


「「「「「…連絡?」」」」」


「ええ。テイル様の提案でアークワイバーンから援護射撃を行おうと思っています。どうでしょうか?」


「「「「「…そうですね、お願いします」」」」」


「わかりました。それでは援護射撃を始めますから全員にそう伝えておいてください」


「「「「「わかりました」」」」」


こうしてマイ達五人への連絡を終えたマヤはアークワイバーン艦内への命令を始めたのである。


「これよりアークワイバーンは援護射撃を開始する。実体砲弾及びミサイル、全弾発射用意……撃て!」


「了解!実体砲弾及びミサイル、全弾発射!」


こうしてアークワイバーンから発射された実体砲弾とミサイルは魔王軍艦隊からも確認された。


「!敵艦撃ってきます!!」


「何だと!?目標は!?」


「…目標は……え?上空?」


「…何?上空?」


アークワイバーンが実体砲弾とミサイルを発射する瞬間を確認した魔王軍艦隊長達は発射された位置が自分達に向けてではなく何もない上空に向けてであった事に激しく戸惑いながらアークワイバーンから発射された実体砲弾とミサイルの行き先を眺めていた。

そうしてある程度の高度まで達したところで実体砲弾は重力に負けて急速落下を始め、それに続くようにミサイルも地表に向けて落下していった。

この様子を眺めていた魔王軍艦隊長達はテイル達の行動の意図がわからずに困惑していた。


「砲弾とミサイルが…落下していきますね…」


「…ああ…そうだな…」


「奴ら何がしたいんですかね?」


「…むぅ」


困惑しながら実体砲弾とミサイルが落下していく様子を眺める魔王軍艦隊長達。

こうして落下した実体砲弾とミサイルが落着した地帯一帯を吹き飛ばし大きなクレーターが作られた。

その直後、アークワイバーンが浮上する前のような轟音と地響きがクレーターだらけになった地面から沸き起こったのだった。

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