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多元世界戦記 ~テイル奇譚~   作者: 篠原2
プロローグ 復活と脱出
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暴れる新型マシンアーマノイド

ワイバーンとエスト機による一方的な蹂躙が続いていたところにシャドウと近衛隊の猛攻撃が始まったテイル達と魔王軍艦隊の戦闘は魔王軍側の戦力がマシンアーマノイド四万機を超える空前の大部隊が極少数のテイル達にフルボッコにされる展開になっていた。

それでも圧倒的な物量差に物を言わせた魔王軍のマシンアーマノイドが少しずつテイル達を包囲し始めていた。


「後から後から湧いて出てくるな!キリがない!」


「そう言いながらも片っ端から両断していってるよね、エストは!」


「そう言うテイルもな!っと、そこっ!」


会話しながらでも敵マシンアーマノイドへの攻撃の手を緩めないテイルとエストによって次々と残骸の山にされていく敵マシンアーマノイドと、同様に死体の山を築いていく魔王軍兵士達。

それに加えてシャドウや近衛隊達の攻撃もあって残骸の山と死体の山は少しずつ大きくなってはいたのだが、それを上回るペースで押し寄せる魔王軍マシンアーマノイド隊に徐々にテイル達が押され始めたその時だった。

押し寄せてきていた魔王軍マシンアーマノイド隊の一部が地上方面からの攻撃で吹き飛ばされたのである。


「!…テイル、あれは!?」


「下からの攻撃だった…という事は…!」


そう言って地上方面に目を向けたテイル達が見た物は地上からテイル達の方に向けて飛んでくる四機の新型マシンアーマノイドの姿であった。

それぞれ青色、黒色、赤色、黄色一色にカラーリングされた四機のマシンアーマノイドが機体毎に異なった武器を構えながらテイル達の元に高速で近付いてくるその未確認機体に狙いを定める魔王軍マシンアーマノイド隊。

そんな彼等に今度は上空から攻撃が行われたのである。


「う、上からだと!?」


「で、ですが…上には敵機は存在しません!!」


「何だと!?」


「レーダーにも反応ありません!」


「馬鹿な!?姿が見えずレーダーにも反応しない敵だとでも言うのか!?」


上空からの攻撃に魔王軍部隊が混乱する中、地上からテイル達の元に向かっていた新型マシンアーマノイドがいつの間にか一機増えて五機になっていた。

新たに増えた一機は緑一色にカラーリングされ、手には二挺のハンドガンを構えた機体、という物であった。


「先ほどの二回の攻撃は…ジェーンか?」


「ええ、そうでしょうね」


「…何をやったかとかはわかるか?」


「私にもはっきり見えなかったから…予想で良いなら」


「それでいい。頼む」


「わかった。多分だけど最初の攻撃は地上から高速移動しながら上昇しつつハンドガン二挺を連射、そうして敵部隊とのすれ違い様にレーザーソードに変更して敵機を切断し上空に離脱、ある程度の高度に達したところで今度は降下しつつ再度ハンドガン二挺を連射、すれ違いながらレーザーソードで切断、敵部隊を突破してレガシア姉様達と合流して私達のところに向かって来ている、こんな感じでしょうか?」


「…なるほど。しかしそれよりも」


「ん?」


「戦いながらそのやたら長い説明を出来るテイルはさすがだな」


「戦いながら全部聞いてるエストもさすがだけどね」


こう言って互いに称え合っている間も戦っているテイルとエスト。

そうこうしている間にレガシア達五人がテイル達と合流、戦線に加わったのである。


「待たせましたかしらぁ?」


「いえ、大丈夫ですよ、レガシア姉様」


「そう?それなら良かったわぁ」


「ええ。それよりも早速で悪いんですがシャドウや近衛隊達と交代してもらっていいですか?」


「ええ、任せておいてぇ。…と私が言うより早く暴れてる娘もいるけれどねぇ…」


「…そうですね」


「…やれやれ…馬鹿ライトはともかくクオンまで指示を待たずに突撃していくとは…」


「新型機乗り換え前の戦いでは暴れ足りなかったらしいな」


「…そう、みたい、ですね…あは、ははは…」


合流してすぐに乗り換え前の方針から何か変更がないかの確認を行ったレガシア、ジェーン、パーチェの三人。

しかしテイル達との方針確認をせずにクオンとライトの二人は敵部隊に向かって突撃していったのである。

テイル達はその光景を眺めながら方針に変更が無い事を確認、そして話し合いを終えたところでテイルが改めて口を開くのだった。


「…まあ魔王軍はクオン達の突撃で混乱してるみたいだしシャドウと近衛隊達は今の間にマヤさん達の手伝いに向かってもらいましょうか?エストはどう思う?」


「…そうだな、それが良いだろう」


「よし、それじゃシャドウ、近衛隊、すぐにマヤさん達の手伝いに向かってください。頼みましたよ」


「わかりました」


「「「「「「「了解です!」」」」」」」


テイルの指示を受けたシャドウと近衛隊は魔王軍部隊が現在の混乱状態から立ち直る前に動かなければ包囲される展開になると判断、急いでマヤ達の元に向かいその手伝いをするべく行動を開始した。

そしてテイル達はすでに突撃して暴れていたクオンとライトの二人との合流を急いだのである。

そして少しずつクオン機ドレイクとライト機サラマンダーに近付くのに合わせてクオンとライトのコクピット内での一人言や叫び声などがそれぞれの通信回線から流れてきたのだった。


「…邪魔…。…墜ちろ雑魚…」


「あ~っはっはっはぁ!!いいねいいねぇ、やっぱりマシンアーマノイドで一番重要なのは火力だねぇ!!あ~~っはっはっはっはっはっはぁ!!!」


「「「「「……………」」」」」


通信回線から流れてきた以上の音声を聞いたテイル達は少しの間無言になり、その沈黙を破るようにテイルが口を開いた。


「…二人共絶好調みたいだから放っておいていっか…」


「…そうだな」


「…ああ」


テイルの発言を肯定する意思を一言で示したジェーンとエスト。

このテイル、ジェーン、エストの三人に続いてレガシアとパーチェの二人も、


「そうねぇ、危なくなりそうなら気付いた誰かが助けに行けば良いだけだしぃ…放っておきましょうかぁ…」


「…お姉様達が大丈夫だって言うなら私はそれを信じます」


と、テイル達三人に追随してクオンとライトの二人を放置する事を決めたところでテイルがエスト、レガシア、ジェーン、パーチェの四人に指示を出した。


「それじゃあ私達はクオンとライトが突撃していっている方面以外の敵部隊に攻撃を仕掛けましょう。なるべく包囲されないようにね?そしてエスト、エストは出来る限りクオンの近くで戦ってもらってクオンが危なくなったらクオンの救援を任せます。頼めますね?」


「「「「わかったわ」」」」


「了解だ。ライトはどうする?」


「ライトは私がフォローします。なので皆は指示通りに動いてもらって大丈夫です」


「わかった。それじゃ行くか」


「ええ。それじゃあ散開!」


「「「「了解!」」」」


こうしてテイル機ワイバーンはライト機サラマンダーが突撃していっている付近に展開している敵部隊へ、エスト機はクオン機ドレイクが突撃していっている付近に展開している敵部隊へ、レガシア機シーサーペント、ジェーン機リンドブルム、パーチェ機ヴィーヴルはそれぞれがテイルの注意通りに包囲されないような位置取りを心掛けながら別々の敵部隊密集地帯に突撃していったのである。


「…当然だけど…前の機体よりレールガン(リニアレールライフル)の威力が上がってる…凄く…楽に倒せる…」


ボソボソとした口調とは裏腹に二挺のリニアレールライフルを乱射しながらクオンが呟いた。

テイルとほぼ同じ戦い方をするクオンに合わせてテイル機ワイバーンと同じく二挺ライフルに二刀流の装備とされたクオン機ドレイク。

その中で唯一の差別化とされたのがワイバーンの装備しているレーザーライフルがドレイクではリニアレールライフルになっている事であった。

これはパイロットのテイルとクオンの特性を考慮してのものだったのだが以前の機体に装備されていたリニアレールライフルの威力に満足していなかったクオンはドレイク建造の際にドレイクの最初期携行火器がリニアレールライフルになると聞いて普段から低いテンションがさらに低くなる事態が発生していたがドレイクに装備されたリニアレールライフルはこれまでクオンが搭乗してきた機体に装備されていたリニアレールライフルとは比較にならない威力になっており、これを目の当たりにしたクオンはドレイクの装備、リニアレールライフルに持っていた悪感情を完全に払拭する事に成功したのである。

そうして悪感情を払拭したクオンは希に見るハイテンションで魔王軍マシンアーマノイド隊を蹴散らしていた。

その様子を視界の端で確認したエストが呟いた。


「クオンにしては珍しくテンションが高いな…。まあ見る人が見なければわからんだろうが…」


普段からテンションが低く感情表現が苦手で喜怒哀楽の判断が難しいと言われる事の多いクオンの感情の移り変わりを完全に把握出来る数少ない人物の一人であるエストが声に出すほどクオンはご機嫌で敵部隊を薙ぎ倒していた。

ただその結果としてクオン本人も気付かない間に少しずつ敵部隊に包囲され始めていた。

その事実に気が付いたエストは、


「むう、クオンの奴…暴れる事しか頭に無いな?包囲され始めている事に全く気付いていない…。これは救援と同時に注意した方がいいな…」


と、言うと自身の周囲に展開している敵部隊を素早く撃破してクオン機ドレイクの救援に向かったのである。

そのクオンは相変わらずハイテンションで敵部隊を蹴散らしていた。


「…次は…誰…?」


そう言いながら次の敵機に斬り掛かろうとするクオン。

その時、ドレイクのコクピットに敵機の異常接近を知らせる警報音が鳴り響いた。


「…え?…敵…?」


警報音に反応してクオンが呟いた次の瞬間、一機の敵マシンアーマノイドがドレイクの左後方から襲い掛かってきたのであった。

それまで攻撃する事しか頭に無かったクオンはこの突然の攻撃への対処が遅れてしまったのである。


「…く…」


「墜ちろ!化け物!!」


反応の遅れたドレイクに襲い掛かっていく敵マシンアーマノイド。

それに対して反応が遅れながらも襲い掛かってくる敵マシンアーマノイドに無理矢理振り返ったドレイク。

次の瞬間、ドレイクのモニターに映し出されたのはエスト機の一撃で頭頂部から真っ二つにされた敵マシンアーマノイドの姿だった。


「…エスト…?」


「無事だな、クオン?いや、安心するのはまだ早いか」


エストの言葉に後ろを振り返ったクオンの目に、今にも飛び掛かってきそうな敵マシンアーマノイド隊の姿が入ってきた。


「とりあえずあれを倒しながら話すか」


「…うん…」


エストとクオンはこう言って会話を終わらせると自身達に飛び掛かってきた敵マシンアーマノイド隊に自分達も飛び掛かっていったのである。

エスト機はこれまで通りに巨大剣を、ドレイクはリニアレールライフル二挺からレーザーソード二刀流に変更して飛び掛かってきた敵マシンアーマノイド隊との戦闘を開始したエストとクオン。

そして二人は戦いながら会話し始めるのだった。


「…さっきは…ごめんなさい…」


「謝れるという事は多少落ち着いたらしいな?」


「…うん…」


「それならいいさ」


「…ありがとう…」


「…落ち着いたようだが一応注意しておくぞ?クオンは感情に任せて暴れるタイプじゃない。それはわかっているな?」


「…うん…」


「ならこれからも感情に任せて暴れるなよ?いいな?」


「…うん…。…わかった…」


「よし、それならここが落ち着いたら俺はまた少し離れるからな?」


「…うん…」


「…一応もう一回言うが暴走するなよ?」


「…うん、大丈夫…」


この会話の間に二人合わせて三十機以上の敵マシンアーマノイドを撃墜し最初に飛び掛かってきていた敵マシンアーマノイド隊を全滅させてその後ろにいた敵マシンアーマノイド隊にも攻撃し始めたところでさっき話していた通りにエストはクオンの救援前に戦っていた地点に戻っていったのである。

当然邪魔する敵は蹴散らしながら。

こうして危機に陥り掛けたクオンとその救援に成功したエストという二人の戦いが繰り広げられていた頃、その他のメンバーもそれぞれに激戦を展開していたのである。

その中で普通に見ればクオン以上のハイテンションでガトリングガンを乱射していたライトはその言動とは裏腹にクオンとは比較にならないほど落ち着き払って戦っていた。

この辺は普段感情に任せて暴れる事の無いクオンとどちらかと言えば普段から感情に任せて暴れるタイプのライト、という二人のキャラクターの違いが色濃く出た結果であった。

その為派手に暴れながらも冷静に状況を判断していたライトは敵部隊が包囲しようとすれば攻撃を中断して後方に下がり敵の数を減らし、敵部隊の包囲の手が緩めばガトリングガンを乱射しながら接近、サラマンダー以前に搭乗していたマシンアーマノイドから引き継いだ大剣を振るっての近接戦闘と暴れ回り、その冷静沈着な暴れぶりはフォロー役に名乗りを上げたテイルが、


「…うーん…あれは本当に放っておいても大丈夫そうだなぁ…。フォロー役は…必要無いかな…?」


と、自身のフォローの必要性の有無について頭を悩ますほどであったという。

その為テイルは方針を変更、ライトのフォローはライトが本当に危なくなったらだけに限定して自身はライト機サラマンダーの近くでライトの邪魔にならないように戦う事にしたのである。

そうしてクオンとエスト、テイルとライトの戦いとは別方面の敵部隊と戦っているレガシアはシーサーペント以前の機体と同じ種類の武装である刃の部分に高出力のレーザーコーティングが施されたハルバードを振りかざし戦っていた。

その戦い方はハルバードという武器が基本的に両手で持って使う武器である為にほぼ射撃武器を使用せずに接近戦主体で敵部隊を蹴散らす、というものだった。

ただその様相はこれまでのジェーンやパーチェ、エストにライトにクオンの五人のような荒れ狂う暴風とも例えられる戦い方ではなくテイルのような味方も敵も魅了するような華麗で優雅な戦い方だったのである。

その為か他の六人に比べると殲滅速度は若干遅めであったが周囲の敵がレガシア機シーサーペントの動きに見惚れて動作に隙が出来ている事、レガシア自身が周囲の状況をしっかり確認して無理な攻撃を控えている事、そしてシーサーペントに装備されているハルバードという両手持ちの武器の使用の邪魔にならないように両腕部に搭載された小型ガトリングガンを牽制や突撃前の敵部隊の足止め等に効果的に使っている、この三点から他の六人よりも安定した戦いを展開していた。

そしてジェーンとパーチェの二人はリンドブルムとヴィーヴルに乗り換える前の機体と全く同じ戦い方を行っていた。

ジェーン機リンドブルムは乗り換え前の機体から使用していたレーザーショートソードとレーザーハンドガン、この出力が乗り換え前の機体と比較して約二倍に上がると同時にジェーンが最も得意とする超高速で動き回り、すれ違いながら斬撃や至近距離射撃で一機ずつ確実に破壊していく戦い方に合わせて取り回しがしやすいように改良が加えられた高出力レーザーショートソードと高出力レーザーハンドガン装備になっており、この事からジェーンは今まで以上に戦い易くなっていると感じていた。

それはヴィーヴルに乗り換えたパーチェも同様で基本的に巨大金棒での殴打か素手での格闘戦を行うパーチェに合わせてパンチとキックに使う腕部と脚部の一部装甲の強化、巨大金棒に付けられているスパイク部分の増強、この二つに加えて射撃武器にレーザー兵器ではなく実体弾使用のマシンガンが採用されておりレーザー兵器不使用によって得た余剰出力をマシンアーマノイド本体の出力に回しており、この結果ヴィーヴルは他の五機体を上回るパワーを獲得、それがそのままパワー重視の戦い方をするパーチェに今までよりも戦い易い、と感じさせる要因になっていた。

こうしてテイルのワイバーンを含めた六機の新型マシンアーマノイドは圧倒的戦力差の魔王軍と戦うテイル達のこれ以上無い力になっているのだった。

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