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多元世界戦記 ~テイル奇譚~   作者: 篠原2
プロローグ 復活と脱出
14/502

全援軍到着

「ロイヤルガードが…全滅しただと…?」


ロイヤルガード隊の増援に向かっていた部隊からのロイヤルガード隊全滅の報告を受けた包囲艦隊の艦隊長は呆然としながらそう呟いた。

そんな艦隊長にこれからの行動をどうするのか確認するために副艦長が声を掛けた。


「…艦隊長、どうされますか…?」


「…………」


「…艦隊長?」


「…あ?…ん?…な、何だ?」


「…これから…どうされますか?」


「…攻撃続行だ。艦隊から出撃した部隊がテイル達と戦闘を開始するまでは全力艦砲射撃を行い戦闘開始後は味方機に当たらないように注意しながら艦砲射撃だ」


「了解しました」


こうして包囲艦隊のこれからの行動が決まったのとほぼ同じ時間、テイルとパーチェは敵増援部隊との会敵までの僅かな時間に互いの無事を喜び合っていた。


「パーチェ、久しぶりね。元気そうで安心したわ」


「お久しぶりです、お姉様!お姉様もお元気そうですごく安心しました!」


「ふふっ、ありがとうね、パーチェ」


こうして再会の挨拶を終わらせたテイルとパーチェ。

そんなパーチェにジェーンが声を掛けた。


「パーチェ、お前相変わらずテイルの事が大好きだな…」


「あ、あぅ……」


ジェーンの指摘を受けて顔を真っ赤にしながら俯くパーチェ。

そんな風に戦場に流れていた束の間の和みタイムはパーチェ機のコクピットに鳴り響く警告音によって終わりを向かえたのである。


「警報?何が…あ」


パーチェがそう呟いた直後、包囲艦隊の一斉掃射がパーチェ機に全弾直撃したのである。

これはパーチェ機がワイバーンやジェーン機よりも包囲艦隊に近かった為に起きた現象だったのだがテイルとジェーンは自身の目の前で起きた妹が搭乗する機体に包囲艦隊の一斉掃射が全弾命中という非常事態にも全く動じること無くその光景を落ち着いて見ていたのである。

そしてテイルが口を開いた。


「ジェーン姉様、パーチェは能力を発動させてましたよね?」


「そのはずだけど…」


「なら大丈夫のはずですよねぇ…?」


「ああ。それなのに動きが無いな…」


ここまで会話したところでテイルとジェーンがパーチェに呼び掛けた。


「…パーチェ?生きてるわよね?」


「死んでは無いだろうが…意識はあるか?」


「…あ、はい、大丈夫ですお姉様、ジェーン姉様。ちょっと驚いただけなので…」


「そう?それならいいけど…」


「やれやれ…。あまり脅かすなよ、パーチェ」


「はい、気を付けます」


パーチェがそう答えるのとほぼ同時にパーチェ機を包んでいた爆風が徐々に収まっていき、爆風が完全に収まった時現れたパーチェ機は包囲艦隊の一斉掃射に全弾直撃していながら全くの無傷という状態であった。

この光景はテイルとジェーンにとってはいつもの事という感じであったのだが遠方からこの光景を見ていた包囲艦隊の艦隊長達にとっては信じられない状況であった。


「………無傷?」


「…その、よう、です…」


「…馬鹿な…全艦の一斉掃射だったんだぞ…」


「…艦隊長…どうしますか?」


「…当初のプラン通りに攻撃を行う。良いな?」


「艦隊長…ですが…」


「一度の一斉掃射で駄目なら二度目の、二度目でも駄目なら三度目と破壊出来るまで撃ち続けるだけだ。良いな!?」


「…破壊出来るのですか?」


「…わからん。だが構造物である以上破壊出来ない物は無いはずだ」


「…撃ち続ければいつかは壊せる…と?」


「そうであってほしいと思っている」


「…了解しました。それでは攻撃を続行します」


「頼むぞ」


こうして包囲艦隊による攻撃の続行が決定されたのであるが彼等に急報が告げられる。


「艦隊長!レーダーに反応が!」


「どこからだ!」


「先頭を行く包囲艦隊の更に先からです!」


「!!…数は?連中の目標地点は!?」


「数は二十八!目標地点は…恐らくテイル達のもとかと…」


「二十八…それが援軍の総数か…先頭を行く艦隊にその部隊への攻撃指示を出せ!」


「了解です!」


この指示で包囲艦隊の一部の攻撃がレガシア達後続の増援部隊に向けられたのである。

こうして始まった自身達への攻撃にどう対処するのかの緊急会議がレガシア達の間で始まった。


「あらぁ、こっちに撃ってきましたねぇ」


「…そう、だね…」


「どうすんの?避けながら強引に突破する?」


「待て、ライト。それだと最悪の場合後ろの親衛隊に被害が出る。加えて前線のテイル達も猛攻撃を受けている気配が濃厚だ」


「じゃあどうすんの?」


ライトのこの問いにエストは質問者のライトを無視する形になるのを承知でレガシアに声を掛けた。


「レガシア、氷壁を頼む。…いけるか?」


「ん~、範囲にもよるけど多分いけると思うよぉ」


「範囲はここからテイル達との合流地点までだ。大丈夫か?」


「えぇ、大丈夫~。いくわよぉ~」


レガシアがこう言った後、続けて、


「ネオヒューマン能力発動ぉ!津波召喚!」


と、叫んで彼女のネオヒューマン能力を発動させたのである。

するとレガシアが叫んだ直後、陸地のど真ん中であるにもかかわらずレガシア達とテイル達のいる地点から外側に向けて大規模な津波が起こったのである。

これに続けてレガシアは、


「続いてぇ、マキシマムフリーズゥ!!」


と、叫んで水属性最大魔法のマキシマムフリーズを自身が召喚した大津波に向けて発動したのである。

すると次の瞬間、大津波が一瞬で氷漬けになりあっという間に即席の氷の防壁が出来上がったのである。


「はい、完成~。これで良い、エスト?」


出来上がった超巨大氷壁に胸を張りながらエストに問い掛けるレガシア。

その声にエストが答え次の指示を出す。


「ああ、文句無しだ、レガシア。よし、総員、敵艦隊の攻撃が氷壁で阻まれている間にテイル達と合流するぞ!」


「「「「「「「おおー!」」」」」」」


こうしてエストの指示でレガシア達増援部隊は包囲艦隊が氷壁への対処に頭を悩ませる事になった間にテイル達との合流を急いだのである。

一方で包囲艦隊のブリッジは突然現れた超巨大氷壁への対処で大騒ぎになっていた。


「なんなんだあの氷の壁は!?」


「…以前の事例から考えますと恐らくレガシアの仕業かと思われますが…」


「レガシア…!奴も出てきたか…!」


「艦隊長、今はそれよりも…」


「ええ、今はそれよりもあの氷の壁をどうするかを考えなくては…」


「ああ、わかっている。急がなければ出撃した部隊が孤立する。最悪の場合、孤立した部隊が一機残らず撃墜される」


「はい、そうです。それで艦隊長、どうしますか?」


「…あの氷の壁を以前の事例と言ったが、以前はあれにどう対処したのだ…?」


「……確か以前は…巨大な氷の壁ではありますが氷の壁の成分そのものは普通の氷との事なので強引に破壊したような…」


「…そうなのか…。ならば今回も同じ手でいくしかあるまい」


「艦隊長、ですが…」


「うん?何か問題があるか?」


「氷の壁を破壊出来てもその後のテイル達への攻撃の時に残弾不足になる可能性がありますが…」


「……その時はマシンアーマノイド部隊に任せるしかないだろうな…」


「正気ですか艦隊長…」


「半分は冗談だ」


「艦隊長…」


「とりあえずテイル達への攻撃はその時に考えよう。今はそれよりもあの氷の壁を破壊しなくては。急がなければ出撃した部隊が全滅する」


「…そうですな。では攻撃の再開でよろしいですな?」


「ああ。全艦全砲門開け!!掃射開始!!撃てぇ!!」


この掃射命令で包囲艦隊全艦による氷壁破壊の為の全力砲撃が始まるのだった。

その一方で氷壁が現れた直後のテイル達は事態好転の兆しが見えた事に安堵の声を上げていた。


「いきなり氷の壁が出現したから何事かと思ったけどよく考えればこれ、レガシア姉様の能力ですよね」


「ああ。かなり近付いているみたいだな」


「これでエストさんも含めて一族全員集合ですね、ジェーン姉様、お姉様」


「ええ、そうね、パーチェ」


「それより先に敵後続部隊との戦闘が始まるな…」


「そうですね。でも敵艦隊の援護射撃が無くなりましたから囲まれないように注意しながら戦えば大丈夫そうですけどね」


「ああ。まあテイルは大丈夫だろうがパーチェ、お前は気を付けて戦えよ?」


「はい、わかりました、ジェーン姉様」


「ふふ、それじゃ始めましょうか、ジェーン姉様、パーチェ」


「ああ!」


「はい!」


こうして敵後続部隊との戦闘開始というところでテイルが突然全く別の動きを見せたのである。


「よし…と、その前に…」


「ん?どうしたテイル?」


「お姉様?」


「ちょっとトーブル隊長に連絡先を…と。トーブル隊長?」


「はい、なんでしょうか、テイル様」


「トーブル隊長達は半数をすぐにシェルター(?)内に戻してください。そして戻した隊員達には例の五機体の発進準備を開始してください。お願いします」


「!…わかりました!全員聞いたな!?半数はすぐにシェルター(?)内に戻るんだ!」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


このテイルの指示でシェルター(?)内に戻っていくトーブル達以外の半数の隊員達。

この様子を見ていたジェーンがテイルに声を掛けた。


「なあテイル。例の五機体ってまさか…」


「ええ、そのまさかです。ワイバーンと同型の皆の専用機です」


「…!…そうか…。三年越しの新型機受領か…感慨深いものがあるな…」


テイルの返答にジェーンがポツリと呟くなか、今度はこのやりとりを聞いていたパーチェがテイルに声を掛けてきた。


「新型機って無事だったんですか…?てっきりお姉様のワイバーン以外は壊されたのかと思ってましたけど…」


「なんとかね。下手をすると全機破壊される可能性もあったんだけどね」


「そうだったんですね…って危なっ!?」


それまで呑気に話していたパーチェの叫び声に敵後続部隊の射程距離までの接近に気付いたテイルとジェーンが雑談を終わらせて今度こそ戦闘開始となったのである。


「来ましたね。この後の行動についてはレガシア姉様達との合流後に」


「わかった。では今度こそ始めるか。いくぞ、パーチェ!」


「は、はい!いきます!」


「トーブル隊長、この後も援護射撃頼みます」


「了解です!」


トーブルの言葉を最後に敵後続部隊との戦闘を始めたテイル達。

まずはジェーン機が敵後続部隊の中央に超音速で斬り込み敵部隊の陣形を掻き乱す。

その乱れた敵部隊陣形に今度はテイル機、ワイバーンが突入して乱れた陣形を分断していく。

そうして散り散りになった敵部隊をパーチェ機が巨大な金棒を片手に一機ずつ確実に破壊していった。

さらに数は減ったが引き続き確実な援護射撃を行うトーブル達。


「ふむ、特に何も言わずに突撃したが問題無く連携できたな」


「一番楽そうな二番手になっただけなんですけどね」


「私も散らばった敵を少しずつ倒していくだけですから…」


ジェーンの漏らした感想にテイルとパーチェが答える。

そうしながらもジェーン機は敵部隊の連携を乱しながら隙を見つけては撃破していきワイバーンもジェーン機に続いて敵機を破壊、そしてジェーンとテイルが撃ち漏らした敵機をパーチェが確実に破壊する、というパターンで少しずつ、しかし着実に敵後続部隊の数を減らしていったのである。

そんな中、パーチェ機の巨大金棒の直撃を受けて破壊された機体の影、パーチェ機の死角からパーチェ機に特攻を仕掛ける敵機が現れた。

この敵機の動きをテイルとジェーンは当然として狙われた本人であるパーチェも反応出来ずにパーチェ機は完全に棒立ちになってしまった。


「あ…」


「「パーチェ!?」」


迫る敵機にパーチェが呆然として呟きテイルとジェーンが叫び声を上げる。


「お前が硬いのはわかってるよ…。だが…取り付かれて自爆されても無事でいられるか!?」


このように雄叫びを上げながらパーチェ機に突撃していく敵マシンアーマノイド。

そしてパーチェを助ける為にジェーンがネオヒューマン能力を発動しようとした次の瞬間、テイル達の後方からマシンアーマノイドサイズにしても巨大すぎる大剣がパーチェ機に取り付いて自爆しようとしていた敵マシンアーマノイドの胴体部分目掛けて飛んできたのである。

パーチェ機に取り付いて自爆する事しか考えていなかった敵パイロットは自身が搭乗している機体目掛けて飛んできたこの巨大剣を避けられずにコクピットを含めた胴体部分に直撃と同時に貫通してパイロット自身は何が起きたかを理解する間も無く戦死、機体の方も間も無く爆散し跡形も無く吹き飛んだ。

その要因である巨大剣はマシンアーマノイドの爆発の中心にありながらも全くの無傷であったのだが直撃した機体そのものが破壊されてしまった為に地面へと落下していったのである。

その時だった。

落下していく巨大剣を目掛けて飛んでいく赤色のマシンアーマノイドが姿を見せたのである。

そのマシンアーマノイドは落下していく巨大剣を地面に落ちる直前に掴み取ると急上昇を開始した。

そしてワイバーンやジェーン機、パーチェ機の前で動きを止めると敵後続部隊に手にした巨大剣を向けてテイル達を守るように立ちはだかったのである。


「エスト!来てくれたのね!」


現れた赤いマシンアーマノイドにテイルが声を掛ける。


「ああ、遅くなってしまったがな…」


よく見ると全身が赤いという事ではなく左肩部分だけが白くカラーリングされた専用機で現れたエストがテイルに答える。

そのエストにテイルが問い掛ける。


「他の皆は?まだ到着しないの?」


「心配するな、もう来ているよ。ほら」


そう言ってエスト機が指を指す。

つられてエスト機が示した方向に目を向けるテイル。

すると次の瞬間、テイルの目に映ったのは敵後続部隊に襲い掛かっていく二十七機のマシンアーマノイドの姿であった。


「攻撃開始します。皆さん続いてください」


「…わかった。レガシア姉に続く…」


「ええ?好き勝手に暴れていいんじゃないの?」


そのような会話をしながら二十七機の内の三機が先頭を争うように敵後続部隊に突撃していった。

その光景を見てテイルは思わず声を上げた。


「おお、クオンとライトはわかるにしてもレガシア姉様までもが突撃するとは思ってなかった…」


「まぁ…色々と鬱憤が溜まっていたんじゃないか…?」


テイルの上げた声に反応してテイルの声に答えたエスト。

そんな感じで敵後続部隊に背を向ける形になっていたエスト機に敵後続部隊の内の一機が襲い掛かっていったのである。


「背を向けたままの自分の不注意を呪え!!」


エスト機に斬り掛かった敵後続部隊の一機のパイロットがこのように吠えた。

そしてエスト機に攻撃する為にレーザーソードを振り上げようとした次の瞬間、それよりも速くエスト機の巨大剣が敵後続部隊の一機のコクピットごと胴体を横薙ぎに両断していた。

そしてパイロット含めて両断されコントロールを失い落下していく敵後続部隊のマシンアーマノイドに向けてエストが、


「悪いな、後ろから攻撃されても魔力反応や気配でわかるんでな」


と、声を掛けたのである。

そんなエストにテイルが声を掛けた。


「決まったところでそろそろ私達も攻撃し始めましょうか?レガシア姉様達に遅れるわけにはいかないでしょうし」


このテイルの言葉にエストではなくジェーンが答えた。


「そうだな、レガシア姉様とクオンにはともかくとしてライトに遅れるというのは個人的にちょっと…な…」


最後の方で歯切れが悪くなるジェーンにテイルが呆れながら皆に聞こえるように呟いた。


「相変わらず仲悪いっぽいですねぇ…。三年間冷却期間があったはずなんですけど…」


「あってないような物だったな」


「あ、あははは…」


「………」


テイルの呟きにエストが簡単な説明を、パーチェが苦笑いを、そしてジェーンが目を逸らしながら無言になるのを聞きながら見たテイルが一つ咳払いをして三人に話し掛けた。


「詳しい話は後で聞く事にして私達も行きましょう。本気で遅れます」


「そうだな、行くか」


「ええ」


「はい!」


テイルの言葉にエスト、ジェーン、パーチェが答え先に突撃したレガシア達に続いてテイル達も敵後続部隊に襲い掛かっていくのだった。

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