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多元世界戦記 ~テイル奇譚~   作者: 篠原2
プロローグ 復活と脱出
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援軍、第二陣

「まずは様子見程度に…ネオヒューマン能力発動。超音速機動」


ジェーンがそう呟くとそれまでロイヤルガード隊が搭乗している機体と同等程度の速度でロイヤルガード隊に接近していたジェーン搭乗のマシンアーマノイドの速度が予備動作もないのに突如マッハ4に上昇、隊列を組み直そうとしていたロイヤルガード隊のマシンアーマノイドの間をすり抜けながら最もガードが甘くなっていた二機をいつの間にか両手に持っていたレーザーショートソードですれ違い様に斬り裂いたのである。


「なっ…にっ…!?」


「うっ…わっ…!?」


これが斬り裂かれた二機のパイロットの最期の言葉であった。

直後にジェーン機に斬られた二機は爆発し跡形もなく吹き飛んだのである。


「おのれジェーン!出てきて早々に八機も墜とすとは…っ!」


部下達が何も出来ずに墜とされていくのをただ見ている事しか出来ないでいる自分に怒りの感情を露にするモーンラインにワイバーンから強制的に通信回線が繋げられた。


「前というか後ろというかは微妙ですけど私の存在を忘れるとは随分余裕ですね?」


「!!…テイル!」


直後、ワイバーンのレーザーライフル二挺から放たれるレーザー光線とファイアボールがロイヤルガード隊に雨のように降り注いだのである。


「「「「「「「うわぁぁぁぁ!!」」」」」」」


完全にジェーン機に気をとられていたロイヤルガード隊員達はこのテイルの攻撃に全く対応出来ずに多数のレーザーとファイアボールが被弾、さすがに全弾直撃とはならなかったがそれでもロイヤルガード隊員全機の動きを止めるには十分すぎる攻撃となった。

そうして動きを止めたロイヤルガード隊にジェーン機が再度襲い掛かる動作に入った。

そして襲い掛かろうとする直前にジェーンがテイルにある事を確認するためにワイバーンとの通信回線を開いたのである。


「テイル、どの機体から撃墜して欲しいとかリクエストある?」


「リクエストしていいのならそろそろモーンライン中佐にはこの世から御退場願いたいのですが?」


「わかった」


この会話で通信を終わらせたジェーンはテイルのリクエスト通りにモーンライン機に狙いを定めると再度ネオヒューマン能力を発動、マッハ4の超高速でモーンライン機に襲い掛かっていった。


「さてモーンライン中佐…。知り合いになったばかりで悪いのだけどテイルのリクエストだから早々に死んでもらう」


この言葉と共にモーンライン機に斬り掛かったジェーン機。

しかしその攻撃はモーンラインが偶然に動かしたモーンライン機の両腕に阻まれたのである。


「…お?」


「なっ…!?」


激しい衝撃音の中、互いに一音ずつ発したジェーンとモーンライン。

そしてモーンライン機撃墜に失敗したとわかったジェーンはすぐにその場を離れてロイヤルガード隊の周囲を旋回し始めたのである。

そんなジェーンにテイルが通信を繋げて声を掛けた。


「直撃の直前に動かした腕に防がれるとか運が悪いですね、ジェーン姉様…」


「私の運が悪いんじゃなくて向こうの運が良いんじゃないか?」


「そういう事にしておきましょうか。それよりもさっきの攻撃で自分が狙われてるってモーンライン中佐に気付かれたと思うんですけど…どうしますか、ジェーン姉様?」


「…一回モーンラインから離れて隊員達から撃墜しようと思うんだけど、それで良いか?」


「お任せします」


「では任された」


こう言って通信を終えたジェーンはロイヤルガード隊の周囲を旋回しながら次のターゲットの選定を始めたのである。

その一方モーンライン中佐は後方の艦隊に再度通信を繋げていた。


「モーンライン中佐か。今度は何かな?」


「は、出来ますれば包囲殲滅に影響の出ない範囲でマシンアーマノイド隊の増援をお願いしたいのですが…」


「ふむ…。理由は?」


「テイル・フェリアシティの増援にジェーン・フェリアシティが現れました」


「む…」


「恐らくは他の姉妹達も現れるだろうと予想しております」


「う…むぅ…」


「出来れば他の姉妹達が現れる前にテイルかジェーンのどちらか一人だけでも殺しておきたいと考えております」


「ふむ、わかった。すぐに増援部隊を出撃させよう。指揮は中佐に任せて良いかな?」


「はい、問題ありません」


「わかった。それでは発進準備の終わった機体から順次出撃させよう。頼むぞ諸君」


「「「「「「「はっ」」」」」」」


「ありがとうございます、艦長。それでは」


「うむ。…中佐」


「なんでしょう?」


「…難しいかもしれんが早死にはせんようにな」


「…努力します」


このやりとりで包囲艦隊の艦長との通信を終わらせたモーンラインは続けて部下達に繋げて彼等に指示を出した。


「包囲艦隊からの増援を要請した!増援が来るまでなんとか耐えろ!良いな!」


「「「「「「「は、はい!」」」」」」」


「よし、増援が到着次第数の優位を武器に攻勢に出る!わかったな!?」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


ここまで言うとモーンラインは部下達には聞こえないようにボソッと、


「これでなんとか耐えられるか…。増援部隊…間に合ってくれよ…」


と、呟いたのである。

そしてモーンラインが呟き終わるとほぼ同時にワイバーンの攻撃が再開されたのである。

このためモーンラインは繋げていたままの通信で部下達に檄を飛ばすのだった。


「来たか!全員完全防御陣形に移行!援軍の到着まで守れ!耐えろ!わかったな!?」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


モーンラインの言葉でロイヤルガード隊はそれぞれが二機一組態勢で攻撃と防御を行っていたこれまでの戦闘形態からロイヤルガード隊員全てが一ヶ所に集まり各機体それぞれがそれぞれに背面をテイル達に見せないように球体の防御陣形に移行、360度全てをカバー出来る状態にもっていったのである。

この完全防御陣形を見たテイルとジェーンはそれぞれに、


「へぇ、これは厄介そうな…」


「なるほど、考えたなモーンラインは…」


と、呟くと互いに声を掛けるでもないのにほぼ同時に完全防御陣形をとるロイヤルガード隊に攻撃を始めたのである。

しかしワイバーンの攻撃は展開された魔導シールドに防がれ、ジェーン機に至っては攻撃する以前に弾幕に阻まれてしまい接近する事すら出来なかったのである。

この事態にテイルとジェーンは互いにマシンアーマノイドの動きを止めて艦砲射撃の迎撃をしながらロイヤルガード隊の完全防御陣形の突破方法の相談を始めるのだった。


「ジェーン姉様、どうですか?」


「ターゲットを絞りづらい。適当に狙っても弾幕が厄介だな。強引に突破出来なくはないが…。テイルはどうだ?」


「密集隊形で魔導シールドを展開している事もあって魔導シールドが多層式になっていてちょっとやそっとじゃ破れませんね…」


「ならどうする?」


「うーん………あ」


「何か良い考えが浮かんだか?」


「レガシア姉様達はこっちに近付いて来てるんですよね?」


「ああ、そのはずだが?」


「ジェーン姉様、ちょっと戻ってパーチェを連れてきてくれませんか?」


「……あぁ、なるほど。わかった、すぐに連れてくる。それよりこの場はどうする?」


「ここは私が抑えておきます。ですから早く」


「わかった、すぐに行ってすぐに戻る」


「お願いします」


「よし、ネオヒューマン能力発動!光速機動!!」


この一言を発した直後、ジェーン機はワイバーンの隣から姿を消して戦場に近付いてきているレガシア達の前にその姿を現したのである。


「あらぁジェーン、向こうは終わったのぉ?」


「いえ、まだです、姉様」


「ならなんで戻って来たのよ、ジェーン姉?」


「事態打開の為にパーチェの力が必要になった。だからパーチェだけ連れてすぐに戻る」


「…え?…私…ですか…?」


「パワー勝負になる。パーチェが最適任だ」


「…わかりました。お願いします、ジェーン姉様」


「…パーチェ…任せた…」


「うんうん!頑張れ、パーチェ!!」


「…クオンは良いとしてライトはやはり後でボコる。覚悟しておけ」


「なんでよ!?」


「日頃の行いだ」


「えぇ…?」


「…ジェーン、テイルが待ってるんじゃなぁい?」


「…そうですね、レガシア姉様。パーチェ行くぞ!」


「はい、お願いします、ジェーン姉様」


「ああ!ネオヒューマン能力発動!亜光速機動!!」


ジェーン機がパーチェの搭乗するマシンアーマノイドの腕部をしっかりと掴んだ後でジェーンがネオヒューマン能力を発動した直後にはジェーン機とパーチェ機の姿はレガシア達の元からテイル搭乗のワイバーンとロイヤルガードマシンアーマノイド隊との戦場に移動したのであった。

そして移動した直後にパーチェがジェーンに自分が何をすれば良いのかを尋ねたのである。


「ところでジェーン姉様、パワー勝負と言われましたけど具体的にはどのような感じなのでしょうか…?」


「やる事は簡単だ。完全防御陣形になっているロイヤルガード隊をぶん殴って蹴散らしてやれ」


「…その後は?」


「私とテイルが上手くやるさ。だからパーチェは後の事は一切気にせず思いっきりぶん殴ってやれ」


「…わかりました!」


ジェーンの言葉を受けたパーチェは自分達が話している間もワイバーンの攻撃を受け止め続けているロイヤルガード隊に向けて全速力で突撃しながら自身のネオヒューマン能力を発動させたのである。


「ネオヒューマン能力発動!身体能力強化!身体硬化!」


こうしてパーチェが彼女のネオヒューマン能力を発動させたタイミングとほぼ同時にロイヤルガード隊隊員が自分達に向かって突撃してくるパーチェ機の姿を確認、テイルの攻撃に対応しているモーンラインに敵機接近の報告を行ったのである。


「隊長!テイル機とジェーン機以外の機体が我々の陣形に向けて急速接近中です!!」


「新手か…まあ良い。各機迎撃だ!絶対に陣形を崩すなよ!」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


こうしてロイヤルガード隊のパーチェ機への迎撃が始まったのだがパーチェはこの防衛射撃が直撃するのも完全に無視してロイヤルガード隊に向けて全力突撃を敢行、ロイヤルガード隊が展開している魔導シールドに取り付いたのである。

そして、


「まずは一撃!」


と、叫ぶと同時に渾身の左ストレートをロイヤルガード隊が展開している魔導シールドに打ち込んだのである。

するとテイルの攻撃ではびくともしなかった魔導シールドがたった一撃の左ストレートで跡形もなく消滅してしまったのである。


「「「「「「「………え?」」」」」」」


目の前で起こった事が理解出来ずに一言漏らしたロイヤルガード隊員を尻目にパーチェは、


「続けて…もう一撃!」


と、叫んで今度は渾身の右ストレートを完全防御陣形を組んでいるロイヤルガード隊のマシンアーマノイドの一機に打ち込んだのである。

するとパーチェ機の右ストレートの直撃を受けたロイヤルガード隊のマシンアーマノイドは一撃で木っ端微塵に爆発四散、完全防御陣形を組んでいた他のロイヤルガード隊員のマシンアーマノイドもパーチェ機の一撃の衝撃でまとめて吹き飛ばされてしまい陣形の堅持どころの話ではなくなってしまったのである。


「「「「「「「はあ!?」」」」」」」


吹き飛ばされて散り散りにされたロイヤルガード隊員が理解出来ない状況に怒声を上げる中、モーンラインは部下達に再度完全防御陣形を構築するように呼び掛けようとした。

その時だった。

モーンライン機の通信回線が強制的に開かれジェーンの声がモーンライン機のコクピット内に響いたのである。


「さっきは運良く生き延びていたけど…今度は外さない」


「…!!…ジェーン!!」


「終わりだ」


その言葉と共に繰り出されたジェーン機のレーザーショートソードはジェーンの宣言通りにモーンライン機のコクピットを貫通、この一撃でモーンラインは断末魔を上げる間も無くその命を散らしたのであった。


「「「「「「「た、隊長ぉ!!!!」」」」」」」


モーンライン機のコクピットがジェーン機の一撃で貫通した瞬間を目撃したロイヤルガード隊員達はモーンラインの最期を悟って絶叫するロイヤルガード隊員達。

そんな彼等のコクピットにワイバーンからの通信回線が開かれテイルの声が聞こえてきたのである。


「さっきも言いましたけど私の存在を忘れるとは随分余裕ですね?」


「「「「「「「テイル…!」」」」」」」


「お仕置きです。あの世で反省しなさい」


「「「「「「「ひっ…」」」」」」」


この無慈悲な通告の直後、ロイヤルガード隊のマシンアーマノイドに向けてワイバーンからレーザーライフルから放たれたレーザー光とファイアボールが雨のように降り注いでいったのである。

パーチェ機の一撃で防御陣形を粉砕されジェーン機の一撃で隊長モーンラインを失ったロイヤルガード隊員達にこの攻撃を防ぐ力はもう残されていなかった。


「「「「「「「うわぁぁぁぁぁ…!!」」」」」」」


モーンラインとは違い断末魔の叫び声を上げながら一機また一機と撃墜されていくロイヤルガード隊員達。

結局ワイバーンの一斉掃射開始からわずか三十秒ほどで残されたロイヤルガード隊員達は全滅、それは包囲艦隊からの増援が到着するまで残り四十秒というところで訪れた終幕劇であった。

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