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大森林で出会う  作者: 葉月 優奈
四話:大森林で魔王の卵と出会う
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森のほぼ中央に、トリアードの眠る大樹が生えていた。

神聖という言葉が、ぴったり当てはまる空気感だ。

グレゴリアムとの戦いの後、大樹のそばはひっそりとしていた独特の空間。

少し広場が開いていて、日が射してくる。


「やっぱりここにいたのか」

ボクは、一人の人間を見つけた。

大樹を見上げている、着物を着た黒髪の女。


「オジミ」

「フォーゴか、木は……この森は巡る」

「命の輪廻か?」

「ああ、バンガディの古い言い伝えだ」

オジミの顔は、灌漑に浸っていた。


「だが、今ならその話も理解できる」

「オジミ、これからどうするんだ?」

「バンガディか?」

彼女の一族は、多くが滅ぼされた。

グレゴリアムとの関わりもあり、ライラクとの力関係は弱まっていた。

それでも、バンガディの種族は風前の灯火だ。


「向こうの長も、しばらくはあたしたちのほうに手を出さないみたい。

最も、ライラクだって長がいなくなって大変だろうし」

「戦うのか?」

「加護を得られなければ、いずれ戦うこともあるかもしれない」

オジミは、悲しげな顔を見せた。


「そうか……」

「だが、それは遥か未来の話になるだろうな」

オジミの言葉に、ボクは驚かされた。


「どういうこと?」

「今は、戦うことよりも和平を結んでいる。

恒久的……とまではいかないが戦うことはないだろう」

「そうか……それはよかった」

「これもお前のおかげだ」その言葉は早口で、小さい。


「オジミ?」

「感謝している」背を向けたオジミは、つぶやいていた。


「ああ、ボクも助かった。シラキと仲良くな」

「無論だとも、あんなかわいい子」

「え?」

「いや、何でもない。フォーゴ、それより本当に行くのか?」

「うん」オジミは振り返り、ボクを見ていた。

冷めた目だけど、どこか悲しそうな顔をしているオジミ。


「大丈夫、ボクもいつか帰ってくる。必ず」

「フォーゴ、そうだな」彼女の顔は、何かを吹っ切った顔にも見えた。

「わかった、この森は……バンガディは任せておけ」

「ああ、それじゃあな」

ボクはこうして、大樹とオジミに背を向けた。


それは、ボクの旅の続き。

魔王の卵を撲滅するために、ボクは旅を続けていくのだった。



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