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シラキの光は、フォーゴを包み込む。
その光は、暖かく優しい光だ。
魔法を使えないあたしでも、ぬくもりの光を感じられた。
なんとも不思議な感覚で、悪くない。
(これは、愛の力)
フォーゴに対する、シラキの気持ち。
シラキが思う、フォーゴへの気持ち。
二人の気持ちが、ユニゾンしていてつながっていた。
「私の力、奇跡の力です」
「凄い、本当に」
「まだです、オジミさん」
「何?あたし?」
「あなたには、その刀があります」
シラキの言葉は、フォーゴの周囲を包む闇に向けられた。
暖かい光の中に、差し込む影。
その影こそ、魔王の卵だ。
フォーゴが倒そうとする、邪悪な存在。
「あなたのその刀で、フォーゴさんを救って」
「でも……」
フォーゴと違って、あたしは普通の人間だ。
バンガディの灘忍だけど、それでも普通の人間だ。
フォーゴと違い、選ばれた使命をあたしはもたない。
「あなたなら、できます。フォーゴも、ちゃんと見ています」
「わ、わかっているけど……あたしにあの影が切れるの?」
「これを」そう言って、シラキが投げ渡したのは小さな小瓶だ。
「精霊樹液……これって巫女が儀式で使う……」
名前は知っている、巫女が使えるトリアードの加護を受けた薬だ。
「巫女の力を強めるモノですが、ソレを刀に」
「え?」あたしは言われるままに、小瓶の蓋を開けて刀の刃に振りかけた。
すると、刀の刃が緑色に光っているのが見えた。
「その刀で、影を切って!」
「うん」あたしは迷わなかった。
目の前には、苦しむフォーゴ。背後に光を放つシラキ。
あたしの手には、緑の光を纏う刀を握っていた。
「お願いします」
「ああ、お願いされるわ」
刀を構えて、あたしは向き合った。
あまりにも大きく邪悪な影に対して。
それと同時に、あたしは斬りかかった。
フォーゴの後ろにいる影は、ユラユラと顔を見せつつ揺れていた。




