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大森林で出会う  作者: 葉月 優奈
一話:魔法使いが美少女と出会う
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005

その男は、ハネ毛のツンツン金髪男だった。

細い目に、シャープな顎。顔はイケメンにも見える。

猫背で、肩にタトゥーが入っている。鷲の横顔のタトゥーだ。

タンクトップのような服に、革の胸当て。


腕はとても太く、筋肉質で小麦色に焼けていた。

見た目は、二十代の若者の男性と言ったところだろうか。


「誰だ?」

「俺の名前はラクウ・ハーベルデルス。シラキの兄だ」

「兄なのか」ワイルドな風貌は、とても色白美少女のシラキの兄には見えない。

「お前はどこからだ?」

「ボクは、フォーゴ・エウメデス」

「それは名前だろう。どこから来た?」

「どこからって、この森の外だ」

「森の外か……本当に?」

「本当だ」ボクは金髪ツンツン男のラクウを、ベッドの上から見上げていた。

ラクウは、興味本位でボクの体をなめ回すように見ていた。


「うーん、そんなひ弱そうなのにねぇ。

よくこの呪われた森で、生き残れたモノだ」

「ひ弱で悪かったね」

「まあ、その姿では疑われても仕方ない……森の外から人が来るのは珍しいからな。

ここは、大森林の中でもほぼ中心にあるだろう。

普通の旅人も、こんな辺鄙(へんぴ)な場所に来るハズもないからな」

「だろうね、街道もないし」

ボクは、首を横に振っていた。


「で、君はなぜここにいる?フォーゴ・エウメデス君」

「フォーゴでいい、男にフルネームを言われるのは趣味ではない」

「そうかい、じゃあフォーゴ。

君は、こんな辺鄙な場所にやってきた?

この大森林は呪われている以外に、これといって魅力は無い。むしろ魔物も多くいるだろうし。

それでも、君がここにいる理由は何だ?」

「いわゆる、迷子って言うヤツですよ」

ボクは、頭に手を当てて笑って見せた。

無論これは、ボクの本音ではない。


「迷子か、それは仕方ないな。

トリアード大森林は、とても大きな森林だからな」

「ここを『トリアード大森林』と、呼ぶのはなぜだ?」

「ああ、トリアード大森林。トリアード様がこの大森林を守っているからそう言われた。

トリアード様は、俺たちライラクを守護する精霊様だ」

胸を張って言い放つ、ラクウ。


「精霊様?ライラク?」また分からない言葉が出てきた。

「ライラクは、俺たちのことだ。

ここ『ライタルク』に住む住人……それが『ライラク』。

ライラクは、精霊様トリアードの加護で生かされている。

俺たちがここで、凶悪な魔物に殺されず生き残れているのもトリアード様のおかげだ」

ラクウの言葉に、力強さがあった。


「そのトリアード様は、生きているのか?」

「ああ、大森林と共に生きている。いつでも俺たちのそばに、生きている。

周りの木々や、お前の食べた木の実。それもトリアード様の加護だ」

「そうか」と適当に相槌を打つ。

トリアードは、どうやらこの町では神様のようなものらしい。

だからこそ、ある疑問が浮かび上がった。


「でも、シラキは呪いと言っていたが」

「ああ、シラキに会ったのか。

シラキはな、実はすごいヤツなんだ」

「ん?」鼻息荒いラクウに、ボクは話半分で聞いていた。

だけど、この話はボクの目的に関係するかもしれない。

そう感じたので、ボクは耳に神経を集中させる。


「シラキは、『精霊の巫女』に選ばれたんだ」

「へー」

「お前、知らないのか?

『精霊の巫女』はすごいんだぞ!

精霊トリアード様の奇跡の力の一部を、自在に使うことができるんだ」

「奇跡の力……ねぇ」

ボクが、少し前の事を思い出した。

シラキがさっき変なことをしていたのが、どうやらそれなのだろか。

それでも、ラクウは畳みかけるようにボクに喋り続けた。


「『奇跡』の力。傷は治せるし、邪悪な存在を打ち消すこともできる。

だけど、何よりすごいのは……精霊トリアード様と話せることだ」

「それってすごいの?」

「当たり前だ。あの精霊『トリアード』様だぞ!」

「興奮しすぎだって」興奮するラクウと、冷めたボク。

「この大森林の全てを知り、全てを見守る偉大なるトリアード様。

トリアード様と同じ力を使い、選ばれし我が妹シラキ」

「その『精霊の巫女』は、他にいるのか?」

「ライラクの中でも、選ばれた人間……しかも女だけだ。

今現在はシラキしか、いないぞ」

「選ばれる基準は?」

「さあ、血筋とかでもないし。

とにかくトリアードに選ばれた、未婚の若い女性が選ばれるんだ」

「トリアードも随分と、女好きだな。ロリコンか?」

「何を言っている、貴様」

「いや、何でも無い」どうやら、ラクウはロリコンの意味を理解していないようだ。


それにしても、『精霊トリアード』か。

魔法使いのボクの知識に、そんな精霊は聞いたことがない。

ロリコン……かどうかは置いておいても大森林の神というべき存在。

大森林の中のすべてを知る精霊、もし会えるなら会ってみたい。

とりあえず、話を聞いた感じだとボクの探しているアレとは真逆の存在だ。

これ以上、広すぎる大森林を歩き回るのは苦痛でしかないからだ。


「とにかく凄いんだぞ、シラキは。ん?」

「ら、ラクウ……助けて」

そんな中、玄関の方から声か聞こえてきた。

聞こえてくるのは、女の声。

呼吸が乱れて、弱弱しい声だ。


「どうした?」ラクウが反応する前に、ボクが反応した。

そのまま、ベッドの上から起き上がって立ち上がって玄関に走っていく。


(女が、ボクの助けを待っている……だと?)

声に反応してドアを出て、廊下を抜けるとそこには玄関だ。


玄関には声の主がいた。

そこには、一人の女剣士がボロボロの革鎧の姿で立っていた。

年齢的には二十代後半といったところか。かわいいというより、力強い女の人だ。


「どうしたんだい?ボロボロじゃないか」

「魔獣が里のほうに……現れました!」

女剣士が、ボク……ではなく後ろからやってきたラクウに報告をしていた。



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