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大森林で出会う  作者: 葉月 優奈
四話:大森林で魔王の卵と出会う
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トリアードに何が起ったのか、ボクは数秒で理解した。

理解したはいいが、それはあまりにも危険な出来事だ。

クマサキのそばにいたリスが、トリアードの中に消えていた。


ボクと一緒にこの場所で見ていたシラキも、驚いていた。

だけど、ボクはこの種の魔法を知っていた。

かつて、魔王マリドも使ったことがある魔法だ。

「『洗脳(マインドコントロール)』」

険しい顔で、ボクは口に出した。

「フォーゴさん、なんですか?そのマインド……」

シラキが、不思議そうな顔で聞いてきた。


「一言で言えば、洗脳。相手を操る魔法だ。

だけどトリアードは幻影で、その魔力や精神力は極めて強い魔法だ」

ボクは、トリアードを見上げていた。

心配そうな顔で、シラキも見つめていた。


「トリアード様が洗脳されるとか、あり得るんですか?」

「ボクの見立てだと、魔王の卵……洗脳魔法を使った術者の魔力次第」

「それって?」

「ボクが追い求めていた、倒すべき敵だ。

それ相応の魔力もあるし、精霊を操れる力があっても不思議ではない」

ボクは苦々しい顔で、トリアードを見上げた。

目の前のトリアードは、不敵に笑っていた。邪悪な笑顔だ。

声も、女と男の二つの声が重なって聞こえてきた。


「いや、やはり精霊王の体はいいものだ」

「魔王の卵……グレゴリアム。お前は、リスに化けて潜んでいたのか」

「俺の名前を知っている、小僧……何者だ?」

高い位置にいるトリアードが、枝の上に仁王立ちのボクを指さす。


「ボクの名前は、フォーゴ。天才魔法使いだ」

ボクはそれでも、右目をつぶってウィンクをした。

幻影のトリアードは、見た目は変わらず女性のまま。

切れ目でボクのことを、見下ろしていた。


「何を言ったかと思えば、人間か?」

「そうだね……でも」

ボクはそういいながら、杖を握っていた。

同時に、一つの魔法の詠唱を始めていた。


「魔力の力よ、かのモノにかかる魔法を消し去れっ!」

使ったのは『キャンセルマジック』だ。

効果を一言で言えば、魔法の解除をする魔法。

ボクの左手から、虹色の光がトリアードを照らす。

照らされたトリアードは、眩しそうに光から顔を逸らす。


「貴様っ!」

トリアードが、虹色の光を避けようと体を反らす。


しかし、トリアードの体は大きい。

幻影といえども、体長は三メートルほどの巨人な存在。

光をかわすことは、困難だ。

実態は無いけど、魔法の的としてはあまりにも大きい。


ボクの虹の光を、避けることはできなかった。

端から見ると、トリアードが苦しんでいるようにも見えた。

だけど、ボクはすぐに分かった。


「やはりダメか……」

虹色の光を放つ魔法が、数秒後に消滅してしまう。

残されたのは、背中を向けたトリアードの姿だ。


「ふう、脅かしやがって……」

「それでも脅しには、なったみたいだな」

「だが、無駄のようだな」聞こえるのは男の声。

先ほどのトリアードの女の声は、いつの間にか聞こえなくなった。

聞こえるのは、男の声。これがグレゴリアムの声だろう。

それを聞いて、ボクは苦笑いするしか無かった。


「どうやら、状況はかなり厳しいようだ」

ボクはトリアードを見上げて、苦笑いをしていた。


「さて、では……早速この精霊王の力を試させてもらおう。

俺に最も似合う、最強の体の力を……な!」

すぐさま、トリアードは両手を掲げた。

同時に、ボクの足下から木々の枝が迫ってくるのが見えた。



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