002
(FOGO’S EYES)
その森は、どこまでも広がっていた。
木々が織りなす葉っぱが、森の光を遮っている。
それ故に、森の中の湿度が高い。
ジメジメする森を、僕は歩いていた。
(ハラ……減った)
声にもならない。くたびれた顔で、僕は歩く。
茶髪のボサボサの髪、白く幼い顔は所々汚れている。
白いシャツも、深緑の短パンもボロボロで、歩く足もフラフラだ。
そんな僕は、両手に杖を持って足場の悪い森を歩いていた。
だけど、むき出しの根っこに右足をかけて、倒れてしまう。
「ううっ……」
思い切りコケてしまい、体を起こそうとする。
だけど、全身がだるくて動かない。力が入らないのだ。
(お腹……すいたな)
最後に食べたのは、五日前だろうか、六日前だろうか。それすらも、定かではない。
持っていた非常食を、全部食べきった。
最後に立ち寄った村、あの後人にも出会っていない。
ずっと森をさまよっていて、小川の水を飲んで飢えを凌いできた。
この森で、かなり痩せたと思う。ううん、間違いなく痩せているな。
(ボクは、このまま……ここで死ぬのかな)
体を起こそうにも、起こすエネルギーがない。
倒れたまま、ボクは動くことができなかった。
だんだん、意識が薄れていく。
瞼も重くなり、体のだるさも抜けない。
それでも、ボクにはまだやるべきことがあった。
(そうだ、ボクはまだやるべき事が……師匠……)
意識が薄れる中、足音が聞こえた。
ザッ、ザッと聞こえる物音だ。
(獣か、それとも……どちらでもいいや
なんだか、考える気力も……もう……ない)
全ての体の機能が、空腹と飢えで完全に停止しようとしていた。
目が重く、体が動かない。
地面に倒れたままの体を、起こすこともできない。
そのまま、ボクは瞼をそっと閉じた。
閉じた瞬間、ボクのそばに何者かが近づいたそんな気配を感じながら。




