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大森林で出会う  作者: 葉月 優奈
二話:敗者の里の人と出会う
18/54

018

ボクが完成させた魔法は、『フォールロックス』だ。

巨大な岩が、突進する光の魔獣(ゴールドバッファロー)を狙って落ちていく。

巨大な牛の体なので、避けることはできない。

次々と金色の毛並みに目がけて、落ちていく大きな落盤。


普段涼しいボクの顔も、額から汗が流れてきた。

この魔法の、疲れが体にはっきり出ていた。

一気に魔力を、大量に消費する魔法だから。


巨大牛に対し、いくつもの岩が落ちて崩れていく。

巨大牛の突進が、止まった。

土埃が舞う、洞窟、崩れた岩が山のように積み上げられた。


大きく積み上げられた山が、簡単に吹き飛ばされた。

落ちてきた岩を、吹き飛ばして、巨大牛が耐えていた。

金色の毛並みの巨大牛が、体をブルブル振っていてボクを見下ろす。


(さすがに、これだけじゃあ……ダメか)

それでも巨大牛の金色の毛並みが、汚れや傷がいくつも見えた。

多少のダメージは与えたが、まだ普通に動けるレベルだ。

傷ついた巨大牛は、小さなボクの方を見ていた。

ボクはオジミから離れるように反対側に立ち、光の魔獣を見ていた。


(でも、注意を引きつけられれば上出来だ)

怪我を負ったオジミよりも、ボクに向けることは大事だ。

師匠との約束のためでもあるし、ボクがそれを望んだ。


すぐさま、巨大牛がボクに向けて突進してきた。

それを見て、ボクは一目散に走り出した。


(とはいえ、魔法の詠唱は……逃げながらだときついか)

ボクは後ろに下がりながら、必死に走った。

右手に杖を持ち、巨大牛を背中に走るしかなかった。

巨大牛は、猛スピードで僕を追いかけてきた。


ボクの目の前に、『アースホール』で開けた大きな穴が開いていた。

ボクは穴を見るなり、右側に走る方向を向けていた。

大きな穴だけど、楕円形なので普通の人間でも飛び越えられる場所は存在するのだ。


ボクはそのまま、横から小さなジャンプで穴を飛び越えた。

だけど、地盤が緩やかでない上に巨大牛では抜けられない。


(落ちてくれれば……)

後ろに巨大牛を背負い走りながら、そんな淡いこと思う。

だけど穴を、巨体に似合わず飛び越えてくる巨大牛。

やはり、こういう所は学習能力があるようだ。


「くそっ、数秒間足止めできないと……」

巨大牛との距離は、確実に迫ってきていた。

ボクは人並みの運動神経はあるけど、巨大牛の追撃を振り切れる足の速さを持ち合わせていない。


「ゲゲッ!」しかも、最悪なことが目の前で起きていた。

巨大な根っこが、ボクの行く手を塞ぐように横たわっていた。

この巨大な木の根を、登らないといけない。

当然ボクが登ろうとすると、猛スピードで迫る巨大牛に追いつかれてしまう。


(これは、かなりマズイ……な?)

焦った顔のボクは、巨大牛の方に振り返った。

背後には巨大な木の根、目の前には猛スピードで迫ってくる巨大牛。


「ダメだ、魔法の詠唱が……」

悪あがきで、杖を両手で握って魔法の詠唱を行う。

使うのは、土の魔法。『アースホール』しかない。

短い詠唱でできる、ボクの悪足掻きの魔法だ。


「穴よ、開けっ!『アースホール』っ!」

だけど、その魔法も巨大牛は見切ってきた。

すぐさま巨大な体を、ジャンプで飛ばしてくる光の魔獣。

宙に体を浮かばせて、ボクは見上げるしかなかった。


(終わった……かも)

ボクは半分諦め、巨大牛が落ちてくるのを眺めていた。


ジャンプした巨大牛が、ボクの方に落ちてきた。

飛び上がる刹那、巨大な牛の体に一瞬横に電撃が流れたようにボクからは見えた。

横に流れる電撃の後まもなくして、巨大牛の体が突然赤い血が流れた。


「え?」ボクは、驚きの顔で巨大牛を見ていた。

巨大牛の右脇腹が、鋭利な刃物で斬られていた。

黄色い血が、勢いよく飛び散っていた。

右脇腹を切れた先を見ると、そこには一人の人間が立っていた。

同時にボクは、驚きの顔に変わっていた。


「オジミ?」

血で汚れた着物姿のオジミが、刀を肩に当てて仁王立ちをしていた。



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