017
(FOGO’S EYES)
地下樹洞は、大きな金色の牛が僕らを見下ろしていた。
猛スピードで、突進をしてくる巨大牛。
光の魔獣は、動きがとにかく速かった。
外で戦った時よりも、さらに巨大のスピードは上がっていた。いや、狭くて迫力が二倍増しに見えた。
「うああっ!」
魔法の詠唱前に、光の魔獣がボク目がけて突進していく。
突進していく巨大な牛に対し、高くジャンプして斬りかかるオジミ。
「斬るっ!」刀を突き立てて、切りつけてきた。
しかし、巨大な牛の猛スピードから生まれる風圧に、オジミが吹き飛ばされた。
大きな砂埃をまき散らしながら、巨大な牛が突進していく。
大きな角が、やがて大きな土壁に命中。
ドシンと地震のような大きな音が聞こえて、天井がぐらぐら揺れているようにも見えた。
「後ろから……」
諦めないオジミは、角が刺さった巨大牛の背後に回った。
そのまま、刀を抜いて斬りかかっていく。
牛の尻尾から金色の毛並みのお尻に、刀が命中。
切りつけた一撃は、巨大牛が大きく叫んだ。
「よし」オジミも、手応えがあっただろう。
だけど巨大牛が角を抜いて、オジミの方にすぐに振り返った。
睨むような目つきで、オジミを睨む。
それでも、ボクには魔法の詠唱をする時間があった。
少し眠ったので、魔力も回復しているのが救いだ。
(まあ、これが一番有効だろう……けど)
ボクは左手に杖を持って、詠唱を始めた。
「土よ、かのものの足元に穴を開けよ!」
オジミを見て、突進してくる巨大な牛。
そこにボクは一つの魔法を完成させた。
同時に、左足でぐるりと円を描く。
「『アースホール』!」あの魔法だ。
突進する巨大牛の目の前の土が、再び穴が開く。
大きな穴は、牛の前足を狙って落とすはずだった。
「え?」ボクは、驚きと共に巨大牛のジャンプを見ていた。
咄嗟に魔法に反応した巨大牛が、ボクの開けた穴をそのまま飛び越えた。
ジャンプし、穴を回避。後ろ足が、ギリギリ穴の縁にかかるも、大きな牛の体は落ちずに踏みとどまった。
巨大牛に対し、オジミは再び高く飛び上がっていく。
「もう一度、動きが止まったところに……」
刀を巨大牛に向けて、走りながら斬りかかっていく。
ジャンプの着地を狙って、刀を振り下ろすオジミ。
だが、巨大牛は太く短い足を曲げた。
「曲げた?」
オジミが空中から、刀を振り下ろす。
だけど、巨大牛は前足をバネのように伸ばした。
角のある頭を、オジミに突き刺すように。
「くっ」オジミは体を反転させて、角を回避しようとした。
だけど、大きな角がオジミに左腹を突き刺した。
角は、オジミの体に命中した。
「ああっ!」
オジミはそのまま、危ない落ち方で地面に叩きつけられた。
着物の少女は、そのまま地面にうつ伏せに倒れた。
持っていた刀を手放して、刀は少し離れたところに刺さった。
「オジミっ!」ボクは叫んだ。
巨大牛は、そのまま倒れるオジミに対して体を向けていた。
倒れたオジミは、左脇腹から激しい出血が見えた。
杖を持ったボクは、険しい顔で魔法の詠唱を続けた。
巨大牛は、そのまま前足で地面を擦るような仕草を見せていた。
そして、オジミに向けて突進を開始した。
倒れるオジミは、全く動かない。
(この魔法は、使いたくなかったんだが……仕方ない)
覚悟を決めた顔でボクは、唇をかみしめた。
倒れているオジミを、このまま見殺しにすることはできない。
「岩よ、かのモノを潰せっ!」
ボクが詠唱をし、両手に持つ杖を高く掲げた。
鬼気迫る顔で、一つの魔法を完成させながら。




