013
(FOGO’S EYES)
ボクはどれぐらい眠っていたのかわからないが、眠りが浅くなり目が覚めた。
爆睡をしていたはずなのだけど、体を揺すられると起こされてしまう。
起きた僕は、眠そうな顔で目をこすった。
まだ寝不足で、頭がガンガンしていた。
それでも少し熟睡したので、魔力は少し回復した。
「ん、もう着いたの?」
「残念ながら、そういうわけじゃない」
すでにオジミが、立ち上がっていた。
だけど、腰にある刀の柄に手をかけていた。
周囲に気を配るオジミの眉が、吊り上がっていた。
「敵か?」
ただならぬ雰囲気に。オジミは首を縦に振った。
ボクも体を起こして、周囲を見渡す。
だけど、人の気配も何も感じない。
「オジミ?特に気配が……ないぞ」
「お前はずるいな!」
「え?」いきなり不満そうな顔で、オジミは言い返す。
拗ねているのか、目つきが悪い。
「勝手にあたしを助けて、勝手にあたしに助けられて、勝手に眠る。
お前と一緒にいると、調子が狂ってしまう」
「な、なんだよ。それ!
勝手に、そっちが思っているんじゃないのか?」
「……うん、そうなの」
やけにあっさりと認めたオジミ。
オジミは、意外と素直な性格なのかもしれない。
そんなオジミは、じっとボクを見ていた。
「ねえ、そろそろ行かない?」言いながらも、オジミが歩き出す。
「すでに歩いているけど」ボクは、勇み足で歩くオジミを追いかけていた。
「いいの、ここだって安全ではないわけだし」
無感情で歩くオジミにボクは、必死についていく。
「先を急いでいるんだっけ?
というか、ここはどこなんだ?」
ボクは、周囲を見回す。
巨大な穴蔵に、太い木の根っこが見える場所だ。
眠気のある中で、オジミに引っ張られて微かに記憶があるような場所。
「『トリアード地下樹洞』、ライタルクとバンガーゼをつなぐ地下道です」
「バンガーゼ?」初めて聞く言葉だ。
「あたしたち、バンガディの集落です」
「バンガディって?」
「あたしたちの種族の名前よ、ライラクと対になる種族」
「それがバンガディか」ボクの言葉に、頷くオジミ。
「ええ、バンガディはライラクと戦っているの」
「だから、ラクウがオジミのことを狙っているんだ」
「一番の狙いは、これ……よ」
先頭を歩くオジミが明かり代わりに使っている、ずーっと光る宿り木。
確かに、黄色い枝が明かりで周囲の闇を照らしていた。
「それが『精霊の宿り木』か。どうして盗んだ?」
「光の儀式を、ライラクに行わせたくないから」
「ライラクがトリアードの加護を得るための儀式……なのにか?」
「ええ、精霊様は平等に恵を与えたりしない」
「それって、バンガディもトリアードを?」
「そうね、トリアード様はこの大森林を見守る唯一無二の存在。
絶対的な摂理で、大森林の正義」
オジミは歩きながらも、話を続けていた。
「だから、儀式を絶対に行わせるわけにはいかないの」
「儀式を行わなければ、君たちは助かるのかい?」
そんな中、ボクは単純に沸き上がった疑問。
「ええ、そうよ」オジミは、呟きながらも前を歩いていた。




