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大森林で出会う  作者: 葉月 優奈
一話:魔法使いが美少女と出会う
12/54

012

深夜になった、ボクは闇の中を歩く。

そこは、少しひんやりとした地下だった。

足元は土と木の根っこが入り混じっていて、歩きにくい。

先頭を歩くのはオジミ、彼女の持っている光る宿り木を明かりとして進んでいく。


「この辺りは、足元悪いです」

「だな、コケそうになる」

暗いので、明かりを持ったオジミと手をつないだままだ。

女の子と、暗闇で手をつないで歩くとかなんかデートっぽい。


「なんか、デートみたいだな」

「馬鹿なことを、言わないで!」

冷静に、オジミに返されてしまう。

前を向いて、オジミは先を急いでいるようだ。

手を引っ張られるボクは、体がさらに重い。


「てか、眠い……」

「眠いって、あなたねぇ……」

眠そうなボクに、呆れたオジミ。

それでも、ボクは足元が止まった。

魔力がもう限界で、精神エネルギーがほぼゼロだ。

思考能力も完全に麻痺していて、瞼を開けているのがやっとだ。何より眠気が強い。


「あなた……そうね」

足が止まって、オジミはボクの方を振り返った。

ボクは立ったまま、眠ろうとしている。

オジミは、両手でしっかりとボクの肩をつかんで揺さぶった。


「立ったまま、寝ない」

「……うーん」

すでにボクは、半分寝ぼけていた。

目をつぶって、寝息のようなものが聞こえた。


「ほら、ここなら横になれるから」

地下通路の木の根っこを、ボクの頭にのせて横にさせるオジミ。


「うーん、ありがと」

彼女の行動に、ボクは感謝の言葉を伝えた。

記憶が虚ろだけど、木の根っこの枕は心地よかった。


「ねえ、まだ起きている?」

オジミがボクの隣で、腰を掛けていく。

「……うん」空返事を、しているようだ。だけど返事になっていない。


「あなたは、どうしてあたしを助けたの?

あなたはバンガディでも、ないでしょう」

「……教え」

「教え?」ボクは話したつもりだけど、頭と口がシンクロしない。

眠気と疲労が、すでにピークだ。


「まあ、いいわ。あたしは知っての通りバンガディで」

「その話は……いいから……て」

最後は完全に意識を失って、ボクは眠ってしまった。

ラクウや、光の魔獣に追われていることを忘れてしまって。

健やかな眠りのボクを見ながら、オジミは穏やかな顔を見せていた。


(OJIMI‘S EYES)

オジミは、フォーゴの顔を見ながら一つのことを考える。

(どうして、彼も助けたのだろう)

オジミの隣には、眠っているフォーゴ。


冷静な顔を装いつつも、彼のペースに乗せられた。

外も見えない地下のトンネル、見えるのはどこまでも広がる闇と地面にせり出す木の根っこ。

オジミは、一人取り残されてしまう。


(彼と会った時、あたしは死を予感した)

倉庫で、あたしは人に初めて会った。

元々、盗みに入ったライタルク。

見つかれば、あたしの命はない。その覚悟はできていた。

任務は成功し、逃げ帰る途中に見つかった光の魔獣。

倉庫に逃げ、やり過ごそうとした中で彼……フォーゴと出会った。


(彼をここで殺してしまえば)

オジミの腰には、切れ味鋭い刀があった。

今は無防備に眠るフォーゴ、彼はあたしに危害を加える様子はない。


それと、彼の不思議な力と違和感だ。

ライラクでもないし、あたしたちバンガディでもない。

それでも彼の不思議な力で、光の魔獣の動きを封じ込めた。


(あるいは、彼があたしたちの救世主になれるかもしれない。

とにかく、長のもとに一刻も早く帰る必要がある)

それでも、フォーゴはオジミの考えを知らずにグッスリ眠っていた。


「いい寝顔ね」

よく見るとかわいい系のフォーゴの眠りに、オジミは背を向けた。


「それと、あの不可抗力の責任は取ってもらう必要がある」

オジミは、睨むように横目でフォーゴを見ていた。

オジミの気持ちを知らないフォーゴは、まるで起きる様子もなく爆睡していた。



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