第九話 悩みの原因
第九話です!
第九話 悩みの原因
嵩臣の暴走は一辰刻(約二時間)、続いた。
緋梅と水知がなんとか宥めて、嵩臣を落ち着かせた。一方で、白櫻は桃姫にくだらない嘘はつくなと、釘を刺されていた。
「・・・やっと解放された。」
「貴方の自業自得よ。」
「助けてくれたってよかったじゃないか。」
白櫻は疲れ切っていた。一辰刻も愚痴と説教を聞かされれば当然であろうが、桃姫の言う通り白櫻の自業自得である。
だが、疲れ切っていたのは白櫻だけではない。
「嵩臣殿、大丈夫ですか。」
緋梅の心配そうな声を聞いた白櫻と桃姫は、屋敷の縁側を見た。そこには、縁側にぐったりと倒れている嵩臣の姿と心配そうに見つめる緋梅と水知の姿があった。
「・・・大丈夫だよ。少し休めば治るから。」
心内に溜め込んでいたものを、一気に言葉として表に出した為、嵩臣は酸欠を起していた。
少しでも、楽になるように二人は嵩臣を介抱した。
「ところで嵩臣殿、こんな状態で聞くのは酷であることは承知ですが、何かあったのですか。」
「そういえば、花嫁がどうとか言ってましたね。」
嵩臣の普段の愚痴は、瘴気が減らない、天候の予測が外れて怒られたなど、仕事の事ばかりであった為、普段言わない言葉に緋梅や水知は疑問に思った。
嵩臣はゆっくりと体を起こし、事の経緯を話し始めた。
「水知の事で帝に許しをもらいに参内した時に言われたんだよ。もう二十三なのだから、早く嫁を見つけて、母親を安心させろってさ。」
「それは、また・・・。」
「そしたら、陰陽寮に帰る際に左大臣と出くわしてね。遠回しに妹を嫁にどうかって言われて。そしたら、どこで聞きつけたのか、右大臣までもが娘を嫁にとまで言い出してきて・・・。」
嵩臣の頭を抱える悩みに、緋梅と水知は唖然とした。離れて聞いていた白櫻と桃姫も驚き、固まっている。
今上帝の朝廷において、左大臣と右大臣は、常に火花を散らしている。左大臣は齢二十八と若く、帝から将来が楽しな男であると言われている。右大臣は先の帝の代からの古参の臣下であり、帝からの信頼も厚い。
この二人の争いには帝も頭を抱えているが、この二人なくして今の朝廷はないと言っても過言でない為、どうすることもできないのが現実である。
「けど、どうして嵩臣殿に妹や娘との結婚話を持ってくるんだよ。嵩臣殿は陰陽師だから、結婚しても、後ろ盾を得られるわけじゃないだろうに。」
「それは僕が帝だけじゃなくて東宮―次の帝となる方とも関わりがあるからだよ。―僕は幼い頃から東宮の相談役として一緒に育ってきたからね。」
第九話は、嵩臣の暴走の原因がメインとなりました。案の定、嵩臣はぐったりとなりました。
嵩臣の嫁探しは、今度も出てまいります。(どんな人を嫁にしようかは現段階では悩み中です。)
それでは、花の章ちょっこと説明書
今回は桃姫が身に着けている領巾と緋梅が身に着けている髪飾りについてです。
第一話で少し書きましたが、これはお互いに贈りあったものです。なぜ、領巾と髪飾りを選んだのかと言うと、桃姫は舞の名手と呼ばれています。桃姫の舞が映えるように薄紅梅色の領巾を緋梅は贈りました。実際にその領巾の効果は絶大でした。そのお礼として贈られた髪飾りですが、実はこれはお守りでもあるのです。というのも緋梅は瘴気に弱い妖。だから、少しでも緋梅のことを守れるようにと桃姫の祈りが込められてあるのです。桃の花言葉に「天下無敵」があります。それにあやかりました。
花の章第九話、読んでくださりありがとうございます。
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