第七話 流れ
第七話 流れ
緋梅と水知の様子を白櫻達は静かに見守っていた。
「まるで家族のようだな。」
「・・・ああ。」
二人が強い信頼関係で結ばれていると白櫻と桃姫は感じていた。気になって緋梅に聞いてみたところ、自分達は幼馴染であると教えてくれた。
だからこそなのか、緋梅が一番先に頼るのは水知であって、水知もまた緋梅の側にいることが多い。
嵩臣が家族のようだと思うのも当然である。
「緋梅にとって水知殿は大切な存在なんだろうね。」
「そうね。」
桃姫は緋梅の持ってきた花便りを愛おしく撫でた。白櫻もひっそりと咲く梅の花を見つめた。
「・・・綺麗に咲いたようだね。」
「去年よりも花弁がしっかりしているわ。この一年、緋梅がずっと大樹に寄り添って、守ってきた成果がでている。」
「そうだね。」
二年前の梅園の狂い咲きの件は、二人の元にも知らせが届いていた。
二人はすぐにでも駆け付けたかったが、緋梅がそれを良しとしなかった。瘴気がまだ梅園の周りに漂っていた為、二人に影響を与えるわけにはいかなかったからだ。園を守る花護目として、何より、二人の友として、緋梅はそうしたのである。
狂い咲きのあった霜月から三月後の如月、梅園から桃姫の元へ花便りが届いたが、枝についていた花は二輪だけであった。その花も、桃姫の元に届いて、半日も経たずに散ってしまったのである。
「それにしても、ここまで見事な白梅を見れるなんてね。」
嵩臣は食い入るように、花を見ている。
「宮中には無いのですか。」
「あるにはあるけど、宮中にある樹木は桜が多いね。梅の木は昔はあったと聞いたけど、今ではほとんど見かけないな。」
「うちのじいさんも言ってた。昔は桜や桃よりも梅が多かったって。」
だが、時が流れるにつれ、梅はその数を減らし、桜や桃が増えていった。現に今上帝が住まう宮中には、今上帝が桜を好んでいるという事で、即位の際に、宮中の庭園に桜を多く植えた程である。その為、桜が満開となる時期には、盛大な宴が催されるのである。
「白櫻のおじいさんは、もしかして先代の桜園の花護目かな?」
「嵩臣殿に話した事なかったっけ?―そうだよ。桜園の花護目だったよ。」
先代の桜園の花護目であった白櫻の祖父は、歴代の花護目の中でも長く、桜園を守ってきた。気さくで、博識としても有名であった為、桃園と梅園の花護目からも信頼されていた。
しかし、老齢を理由に孫である白櫻に花護目の役目を譲った。
「幼い俺の面倒を見てくれたのもじいさんなんだよ。いつか、じいさんと一緒に酒を飲んで、いろんな話を聞きたいって思ってたんだけどな。」
白櫻はそのまま俯き黙ってしまった。
第七話の投稿です!(亀よりもおそくなりました。すみません。)
今回は、新しいキャラクターの名前だけではありますが、登場しました。今後の物語のとある方のキーパーソンとなる方です。
それでは、花の章ちょっこと説明書
今回は、第一話から第七話まで、よく出てきた単語『花便り』についてです。
作中でも説明しましたが、それぞれの園にある大樹が花を咲かせたことを知らせるものです。流れとしては、梅の花が咲いたら桃園へ、桃の花が咲いたら桜園へという感じです。ちなみに桜園から梅園への花便りはありませんが、花が咲いたことは知らせます。花便りのようであって、花便りではありません。
実はこの『花便り』という単語も物語では大事な単語ですので、覚えておいてください。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
またTwitterもやっておりますので、よろしくお願いいたします。
そして、亀のように投稿が遅くてすみません!